このカレイドの魔法少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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このいざこざに横やりを!

≪クリスside≫

命を落とした一撃熊の前で、泣き崩れるイリヤを見て思った。

やっぱりこの子に冒険者はまだ早い、って。

害のある生物を退治し間引く、なんていう風に割り切って考えるには、まだ幼すぎるんだ。

……そう、思ってた。だけど。

ようやく泣き止んで立ち上がり、こちらを向いたそのときにドキリとした。イリヤの瞳のその奥に、強い決意の色が浮かんでいたからだ。

 

「え、えっと、イリヤ…?」

「クリスさん、心配かけてごめんなさい」

 

イリヤはとってもしっかりした口調で謝った。

 

「覚悟はしてたけど、やっぱり命って重いなぁ」

 

困ったような笑顔を浮かべるイリヤ。

 

『イリヤさん、わかっていたなら、なんであんな戦い方を…』

「え、ルビー? それってどういうこと?」

 

ルビーの発言からすると、イリヤには他の戦い方もあったってことになるけど…。

 

『イリヤさんはわたしを使って、魔力の斬擊を飛ばすことができます。それを最大出力で放てば、一撃熊を倒すことは可能だったはずです。

もちろん、命を奪うことには変わりありませんが、それでも多少は、心へのダメージは少なかったはずですよ?』

「だからだよ」

 

イリヤは間髪を入れずに言う。

 

「わたしはこれからも、モンスターたちを倒していかなきゃならないんだよ? 何十頭、何百頭って。

前にテレビで言ってたけど、人間って馴れる生き物なんだって。だったらわたしもきっと、こういうことに馴れちゃうんだと思う。

でも、命の重さは忘れちゃいけないことだから、だから、この身体と心にしっかりと刻みつけておきたかったんだ」

『イリヤさん…』

「イリヤ…」

 

この子は、なんて優しくて強い子なんだろう。

きっと何かやるべき事があって転生を選んだのだろうってことは、あの強い意志のこもった目を見ればわかる。それでもなお、奪わなくてはならない命の重さを知り、それを背負っていこうとする優しさと強さも持っている。

でも、だからこそ。このままじゃいけないと思う。

このままじゃいずれ、心が押し潰されてしまう。そうはならなくても、正しい成長の妨げになってしまうのは目に見えてる。

だったらやっぱり、彼と引き合わせた方が良いのかもしれない。……諸刃の剣ではあるけど。

 

「……あの、クリスさん? あんまり見つめられると、恥ずかしいんだけど」

「あっ、ゴメンゴメン!

さあ、遅くなったし、急いで帰ろうか」

 

アタシは慌てて話を逸らした。今のは、イリヤ本人に言ってもしょうがない話だしね。

 

「……あ、それなら」

「……え?」

 

 

 

 

 

ま、まだ、心臓がバクバクいってるよ。

ここは、アクセルの街の外、正門の近く。壁伝いに少し行った、人目のつかないところ。

イリヤはアタシを抱えて、ここに()()()()()

 

「えーっと、女神さまって、空飛べないんですか?」

「いや、自力で飛ぶのと誰かに抱えられて飛ぶのとじゃ、勝手が違うからっ! 結構スピードも出てたしっ!!」

 

そんなアタシの意見に、変身を解いたイリヤはキョトンとして見てる。

 

「そういうもんなの?」

『まあ、こっちにはどう考えても、ジェットコースターの様なアトラクションはありませんからねー』

 

よくわかんないけど、イリヤの世界にはこんなのを楽しむ習慣があるの!? 地球ってどんなとこなの?

……今度、もう少し調べてみよう。

 

「もういいから、早く街ん中入ろう」

 

アタシはイリヤに促した。

 

 

 

 

 

≪イリヤside≫

わたしたちは門を通り抜けて、大通り…、多分だけど、そこをギルド目指して歩いて行く。

なんかさっきから、クリスさんがチロチロわたしのこと見てるんだけど。

 

「……ねえ、イリヤ」

 

ついに我慢できなくなったんだろう、クリスさんがわたしに声をかける。

 

「キミはまだ、この街に詳しくないんだよね?

アタシが先にギルドに行って、クエストの達成を伝えてくるから、キミはしばらく街の観光でもしてなよ」

「え?」

「ほら、冒険者カード渡して。それに討伐記録が残されてるから」

「あ、はい」

 

勢いに押されて、クリスさんに冒険者カードを渡してしまう。

 

「はいこれ。三千エリス入ってるから、これで適当に飲み食いでもしててよ。

じゃあギルドで待ってるから!」

 

言うだけ言うと、クリスさんは走り去ってしまった。一体何だったんだろう。

 

『……どうやら、気を遣ってくれたみたいですねー』

 

気を遣うって…。

 

「わたし、そんなに落ち込んで見える?」

『いえ、ぱっと見は普段と変わりませんよ?

ただ、見る人が見れば、落ち込んでるってわかります。私にだってわかりますから』

 

そうなんだ。

……うん、確かにわたしはまだ、さっきのことを引きずってる。大分落ち着いたとはいえ、簡単に割り切れるわけがない。

心配、かけたくなかったんだけどなぁ。

 

『まあ、せっかくの気遣いですから、しっかり楽しみましょう!』

「ルビー…、うん、そうだ、ね…?」

 

ガラガラガラガラ…

 

ざわっ…、ざわざわ…

 

遠くから、テレビとかでたまに聞く荷馬車とかが移動する音が近づいてくると共に、街の人たちがざわつき始める。そして、私は見た!

馬に曳かれた荷車の上に、綺麗な水色ロングヘアの美人なお姉さんが、大きな檻に入れられて移動しているのを!

ドナドナを口ずさんでいるのが、またなんとも…。

 

『これはまた、随分とシュールな絵面ですねー』

「そ、そだね。……うん?」

 

ふと、檻に駆け寄っていく、鎧姿のお兄さんが視界に入る。そのお兄さんは、開口一番こう言った。

 

「女神様、女神様じゃないですか!」

 

と。

そして檻の格子を掴むと、ぐにゃりと曲げてこじ開けた!?

え、ちょっと、どうなってんの!? アレ、めちゃくちゃ頑丈そうなんだけど!?

なんか、お姉さんを運んでた人たちと鎧のお兄さんとの間で、言い争いが起きてるみたいだけど…。

すると突然、檻の中のお姉さんがバッと立ちあがって。

 

「ああ、女神! そう、そうよ。女神よ私は!」

 

うあ、イタい人だ! ……っていつもなら思うとこだけど、今回はちがう。だって天使さんが、いるはずの女神がいないって言ってたし、クリスさんの発言でそれも補強されてる。

それにあのお兄さんも女神さまって言ってたし、あの人も転生者だって考えれば辻褄も合う。

つまりあの人は、実は女神のアクアさまだ!

……全然それっぽく見えないけど。

何だか気になったわたしは、あの人たちのとこまで近寄ってく。

それでわかったのは、アクアさま(仮)は茶髪で顔だちは悪くないけど冴えない感じのお兄さん、ブレストプレートを着た金髪で長身のお姉さん、黒いマントととんがり帽子を身に着けた、わたしより少し背の高いお姉さんの三人と同じパーティーらしいってこと。

一方の鎧のお兄さんは、可愛いけど今イチ印象に残らない二人のお姉さんとのパーティーみたいだ。

話を聞いてると、アクアさま(仮)はあの仕打ちに文句はないみたいだけど、鎧のお兄さんは納得いってないみたい。というか、ちゃんと話を聞かないタイプ?

挙げ句の果てには。

 

「なら、ボクと勝負しないか? アクア様を持ってこられる『者』として指定したんだろう?

僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら何でも一つ、言うことを聞こうじゃないか」

 

などと(のたま)った。何だろう。何故か、あの鎧のお兄さんは好きになれないんだけど。

どう見ても、冴えないお兄さんよりも強そうなのに、平気で勝負を持ちかけるってのが、どうもいけ好かない。

……なんて思ってたら。

 

「『スティール』!!」

 

アレってたしか、盗賊のスキル!?

いつの間にか、冴えないお兄さんの手に鎧のお兄さんの剣が握られていて。

すこーんと、反対側の手に握られていた短い剣で頭を強打されて、鎧のお兄さんは気絶してしまった。

 

『何と言いましょうか、おもいきり小物感丸出しの負けっぷりですね…』

 

さすがにルビーも呆れ気味だ。

 

「この卑怯者!」

 

鎧のお兄さんと一緒にいたお姉さんたちが、突然わめき出す。

たしかに、始めの合図も待たずに仕掛けたのは、卑怯といえば卑怯だ。でも、その後の勝利の仕方は見事だと、わたしは思う。

お兄さんは、鎧のお兄さんの剣を戦利品として持っていこうとする。でもその剣は、鎧のお兄さん専用だとか何とか。

 

『おそらく特典は、その転生者専用なんでしょうねー。他の人では使えないか、能力を引き出しきれないってトコでしょう』

 

うん、確かに転生チートって、そういう設定のがあるよね。

それでもお兄さんはその剣を持っていこうとして、あのお姉さんたちが文句を言う。たしかにちょと、やり過ぎな気がするけど、だけど…。

 

『イリヤさん!?』

 

わたしは居ても立ってもいられず、思わず飛び出した。

 

「このお兄さんは悪くないよ!」

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

鎧のお兄さんを除くみんなが驚きの声を上げて、わたしのことを見た。……うん、早まったかもしんない。

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