戦えない天翼種   作:竹闇

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原作開始6407年前

天翼種

『ノーゲーム・ノーライフ』に登場する戦神アルトシュによって作られた神殺しの尖兵。

 幾何学模様を描く光輪を掲げ、大戦ではそれぞれの種族の首にレア度を付けて競い合いをしていたデタラメ種族の一つだ。

 

 存在そのものが生物の形を持った魔法のようなものであり、根幹術式から始まり全てが「魔法」で出来ている。

 そのため基幹術式さえ無事なら、記憶や人格は残らないものの、身体が消失した状態からでも再起動できる。

 

 しかし基幹術式が破損した場合はどうなるのだろうか。

 『(基幹術式)』はアルトシュに編まれた神域の術式。そう容易く壊れはしない。

 

 だが上位種相手では分が悪く、大戦では何百もの天翼種が散っていった。壊れるということは完全ではないということ。つまりはバグる可能性があるということだ。

 

 例えば『四番個体』ラフィール。

 ただ一度の神を討ち滅ぼした戦にて、主の加護を以てしても修復不可能な傷を負った勝利の立役者。

 映画でも出てきたあの子ように、怪我をしたままの天翼種がいてもおかしくはない。

 

 そしてこの世界では、また新しい天翼種が修復不可能の傷を負った。

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

「あわわわ……ヤバいですよ。基幹術式が壊れちゃってます……」

 

 燃える大地でそう呟く天翼種が一人。

 彼女は幼い身体で頭上の欠けた光輪を見上げて絶望していた。

 

「みんな、あっ。ちょっと待って下さい! 置いて行かないで!!」

 

 天を見上げて見えたのはアヴァント・ヘイムに帰還していく仲間たち。

 龍精種との戦によって傷を負った子を無事だった天翼種が空間転移させてゆく。

 

「あれ?」

 

 『天撃』を撃った上流れ弾を喰らって死に体の身では身体を維持するのが精一杯だった彼女、イヴリールは光槍を信号弾代わりに打ち上げようとしたが、それに意識を移した瞬間、身体を構築する精霊が制御を離れ、虚空に溶け始めた。

 

「えっ。まさか今のもアウトですか。これで形状維持に支障をきたすとか正直やってられませんよ……」

 

 イヴリールはその事実に絶望しながら愚痴をこぼす。

 これでは空間転移(シフト)なんて夢のまた夢。恐らく使った瞬間、形状維持に使っている精霊が制御を離れ四散。『核』もそれで開いた穴から崩壊する。

 

「というかこの分だと自然回復できるかも分かりませんね。今のままだと獣人種にも負け……いや、空を飛べるなら大丈夫ですよね。やってみましょう」

 

 そしてイヴリールは少し身体を浮かせて理解した。

 ――あ、これダメなやつだ――と。

 

「いや、フワフワ浮くのが限界ってマジでヤバいです。アヴァント・ヘイムの高度まで一日以上ぐらいかかりますよこれ……」

 

 アヴァント・ヘイムに帰るは絶望的だ。

 一日中空を飛んで他種族に補足されないなんてほぼ有り得ない。そもそもアヴァント・ヘイムも移動している以上、ただ見つけて追いかけるだけじゃ追いつけない。

 仲間に拾って貰おうとしても、他種族にバレず拾って貰うなんて不可能だろう。

 

(思えば、生まれてこの方自分の力で上位種の討伐に貢献したこともないです。やったことと言えば雑魚の掃討と今回龍精種に『天撃』を当てただけ。効いてなかったですけど。それで撤退もできずこの様だなんて、天翼種の恥晒し以外の何者でもないですよね……)

 

 そう結論付けたイヴリールは未だ赤く染まる大地に思わず膝をつく。

 

「ぼ、僕はアルトシュ様に創られ……創られたのに何の役にも立てず惨めに生き残る僕は何なんでしょう。そもそも『核』が壊れたのに生きている時点で今の僕は天翼種と言えるんでしょうか……うぅ、これからどうしましょう……」

 

 その思考は既に天翼種のそれから外れていた。

 

 ――――――――――――――――

 

 

 これからどうするか辺りの残留精霊が薄れるまで悩んでいたイヴリールは、辺りの目隠しが消えたことでようやく我を取り戻した。

 

「よく考えたらこんな事を考える時点でアルトシュ様の不興を買いますよね。”百考は一殺に如かず”。まだ生きてる以上首を取れる可能性はあるはずです。待ち伏せして背後から首を一撃、死を覚悟して魔法を使えば【レア1】、いや【レア2】はいけます!」

 

 もう助けが期待できず、考えるのが面倒になったイヴリール。

 精霊反応が出る以上、展開されているか分からない『防護術式』に『自動修復術式』もどうにか停止させている。

 

「ちょっと服を着てないみたいで恥ずかしいですが、僕の最後の戦です。頑張りましょう」

 

 彼女は修復術式を起動できる場所、戦える相手を求めて、当てのない旅を始めるのだった。




年表
2万6千年前:アズリール誕生
 その少し後:ラフィール誕生
6407年前:ジブリール誕生、アズリールおかしくなり始める。。
約6020年前:アズリールVSアズリール、400年で当時のアズリールを知る天翼種がほぼいなくなる。
6015年前:ジブリール、龍精種を討つ
6000年前:大戦終結

ジブリールは『最終番個体(クローズナンバー)』で最後に生まれた天翼種。
ジブリールが誕生した時にアズリールがおかしくなるとしても、プラクティカルの当時を知らない天翼種が一体どこから来たか分からない。
核から身体を作るのに時間がかかるとして、長くて10年。その間の天翼種が終戦後に大多数を占めるのはおかしいため、自分は脳を損傷するなど重傷を負った場合記憶がなくなる説を提案する。
胸に風穴が開いても核を自壊させても自我を保った上で生存しているアズリールとジブリールという前例があるし、戦が日常の天翼種なら普通にそれぐらいの傷は負うと思う。

そう考えると、サイコロの「記憶を無くした自分に恐怖するジブリール」ってエモいですよね。
……ちゃんとした設定があるなら教えて欲しいです。

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