後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第10話

ダイタル平野の派遣軍基地から飛び立った海軍航空隊の電征隊、約50機はギムからの援軍要請に基づき、全速力で駆け付けてきていた。

 

 

「見えた、敵の飛竜だ!」

 

 

指揮官機に乗り込む海軍大尉は、優れた視力で遥か前方を飛んでいたロウリア軍のワイバーン隊を発見する。

 

 

「よし!戦闘機隊は戦闘態勢を取れ!戦闘爆撃隊は後方に待機しろ!頃合いを見て地上部隊の援護攻撃を開始せよ!」

 

 

先行していた電征Ⅱ型で編成された戦闘機隊が速度を上げ、爆装した電征Ⅲ型の戦闘爆撃隊は速度を落とす。

 

 

「各機、奴等とは格闘戦には持ち込むな!速度と火力を生かした一撃離脱戦を徹底せよ!」

 

 

大出力エンジンと、大火力が主流となりかけていた時代に誕生した電征は、登場した当時は格闘戦主体の戦闘機を尽く時代遅れにし、従来の戦闘機よりも先を行く戦闘機として華々しく初陣を飾っている。

電征の登場当時から乗り慣れているベテランパイロットは電征の性能を生かし、部下達に一撃離脱を徹底するように命令すると、スロットルレバ-を前に押し込み速度を上げて、向かってくるワイバーンに挑む。

 

 

 

「喰らえ!」

 

 

照準器の中心点を手前のワイバーンに合わせると、引き金を引く。

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 

 

強力な30㎜機関砲から放たれた徹甲弾と榴弾は、ワイバーンと竜騎士を引き裂き、地上へと叩き落とす。

 

 

「全機、散開!」

 

 

ロウリア軍のワイバーン隊と電征隊との間で空中戦が始まった。

 

 

「クソ!何なんだアイツらは!!」

 

「早いぜ奴等!」

 

「また味方がやられたぞ!」

 

 

ワイバーン隊は電征の速度と火力を前にただ翻弄されるしかなく、一撃離脱戦法を徹底とした電征に無惨に叩き落とされていく。

 

 

「怯むな!数はこっちが上なんだ!物量で押し込め!」

 

 

ワイバーン隊の隊長は部下に数で押すように命令し、3騎のワイバーンが1機の電征の背後に回り込む。

 

 

「後ろか……よし!」

 

 

後ろを取られた電征のパイロットは操縦桿を手前に目一杯引き、機体を上昇させる。

 

 

「昇った!追え!」

 

 

ワイバーン3騎も上昇する電征に食い付くように、追い掛ける。

だが、高出力の誉エンジンが叩き出す電征の上昇力はワイバーンを遥かに凌駕しており、追い掛けていくうちに段々と距離を離していく。

 

 

「さぁ、ついて来られるか?」

 

 

高度4000メートルを越えた辺りで、追い掛けて来ていたワイバーンは高度を下げて着いてこなくなった。

 

 

「やはり4000辺りが限界みたいだな……今度はこっちの番だ!」

 

 

その場で機体を宙返りさせ機首を下に向けて降下、高度を落としていたワイバーン3騎を捉える。

 

 

「貰った!」

 

 

放たれた機銃弾は、固まって飛んでいたワイバーン3騎を纏めて撃ち落とす。

 

 

 

 

ワイバーン隊の目が戦闘機隊にむいている頃、待機していた戦闘爆撃機隊の電征Ⅲ型は、地上部隊の後退援護のため、ロウリア軍の地上部隊に向かって急降下を仕掛けていた。

 

 

「全機、投弾用意……投下!」

 

 

電征Ⅲ型の逆ガル翼下に吊り下げられていた、滑走路破壊爆弾が一斉に投下され、内蔵されていた大量の子爆弾がギムの町に近付きつつあったロウリア地上軍前衛部隊に降り注ぎ、派手な爆発を上げる。

 

 

「うわぁぁ!!」

 

「腕がぁ…俺の腕がぁ……」

 

「目が見えねぇ!皆何処だ!何処だぁ!!」

 

 

子爆弾の爆発による爆発と大量の破片はロウリア兵を即死、または重傷を負わせ士気を下げる事に成功し、進撃の勢いが落ちた所へ、追い討ちを掛けるように別の電征から爆弾が落とされ、集団で固まっていたロウリア兵を次々と消し飛ばしていく。

 

 

 

「よし!!このまま一気に基地まで後退だ!」

 

 

航空隊の援護を受けた鍬十稲派遣軍とモイジ率いる西方騎士団、市民達を乗せたトラックは誰一人残さずギムの町から一目散に退散した。

 

 

 

「地上部隊は後退した!我々も引き揚げるぞ!」

 

 

 

航空隊もワイバーン隊を追撃せず、地上部隊と共に基地がある方向へと飛び去っていった。

 

 

 

ロウリア王国との初戦は、鍬十稲派遣軍とクワ・トイネ軍の勝利により幕を閉じた。

この戦いでギムの町民達に誰一人犠牲を出さず、両軍はダイダル基地へと帰還した。

 

 

 

 

 

続く




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