イシュタムが壊滅してから3日目の早朝
旧レイフォル首都レイフォリアにある情報局 技術部レイフォル出張所の会議室は何時にも増して、重苦しい空気に包まれていた。
会議室には、東方艦隊司令長官の任を受け持つカイザル以下の軍の上層部が出席しており、情報局局員は緊張した面持ちで参加している。
「諸君も知っての通り、今回のバルチスタ沖とイシュタムによるムー大陸への限定攻撃作戦に於いて、我が軍は転移後初の甚大な被害を出した。世界連合艦隊やミリシアルの軍事力は我が国と比較した場合、前時代的である事は、情報局の諜報活動や適切な戦力分析で大体は合っていたが………しかしっ! ミリシアルは空中戦艦、ムー大陸侵攻計画は日本軍の参戦と言うイレギュラーで全て瓦解した。」
カイザルはバルチスタ沖海戦やムー大陸侵攻計画とイシュタムの作戦による結果を説明した。
当初はその内容に幹部達は半信半疑だったが、情報局局員が入手した情報を交えた事により、その内容は現実である事を皆が理解した。
「まず最初に議題に上げたいのは、バルチスタで敵が使用していた空中戦艦だ。今回は敵が油断していたお陰で空中戦艦1隻は撃破できたが、生還したカオニア提督と第1航空機動艦隊の将兵達の証言から、あの空中戦艦は、ラヴァーナル帝国……この世界の人間達が言う古の魔法帝国が建造し、我々の常識では考えられない超技術が使われている事が判明している。しかもその空中戦艦は1万年近くの前に作られた遺跡らしい……」
「「「「「「1万年前っ!!?」」」」」」
カイザルが警戒しているのはバルチスタでミリシアルが使用した空中戦艦であり、日本は帝国と同じ技術大国であり技術分析はある程度可能だが、魔法という未知の概念で発展しているミリシアルは帝国の技術力では解析が難しく、ミリシアルがパルキマイラの解析にどれ程成功しているのか、またその技術を自国の技術に活かして空中戦艦を建造する能力があるのかと言う情報をどうしても欲していたのである。
「情報局はこの空中戦艦についての情報は何か掴んでいるか?」
カイザルは、出張所の幹部であるバミダルに問う。
「現在、全力を挙げて調査をしておりますが、いかせんミリシアルの空中戦艦やそれに関する遺跡への情報統制が非常に厳しく、関連施設場所への立ち入りが制限され近付けません。あらゆる方面から情報を集めていますので、後日報告したいと思います。」
「頼んだ。それと、ムー大陸への限定攻撃作戦に出撃したイシュタムの消息が分からなくなっている事についてだが……」
次の議題として挙げられたイシュタム艦隊消息不明について、バミダルが再び発言する。
「それに関しては先刻、情報が入りましたのでこの場で報告させて頂きます。…………先ずはオタハイトに向かったイシュタム分艦隊の方は、先のバルチスタ沖海戦で鹵獲された我が軍のヘラクレス級戦艦コルネフォロスを、ムー海軍が日本と共同で修復して戦力化していた物を投入してきたとの事です。」
「何っ!……それは本当か?」
「はい。彼等はコルネフォロスをラ・ナガトと呼んでいるそうですが、イシュタム分艦隊からの最後の報告によれば、ラ・ナガトは砲撃戦でメイサを行動不能にした後、魚雷による一斉雷撃で撃沈したとの事です。」
「雷撃っ!? 戦艦に魚雷を搭載しているのか?」
東方艦隊の幹部が驚く。
グラ・バルカス帝国海軍では魚雷は駆逐艦と軽・重巡洋艦、水雷艇などの小型高速艦か、潜水艦などの海中攻撃で使用するというのが常識であり、過去には戦艦に魚雷を搭載しても対して効果は無いと判断され、戦艦には魚雷は装備されていないのである。
「間違いありません。」
「そうか………」
カイザルらは、只でさえ日本による技術と軍事支援で国力を増強しつつあるムー国に海からも陸からも攻めて敗北しているため、頭を痛める。
「で、マイカルに向かった本艦隊の方は?」
「こちらに関してはまだ詳細な情報が掴めていないのですが、どうやら彼等は潜水艦による攻撃を受けたとの事なのですが…………」
歯切れの悪いバミダルにカイザルが再び問う。
「どうしたんだ?」
「それが最後の報告では魚雷攻撃ではなく……ロケットによる攻撃によって全滅した可能性が高いとの事です。」
ロケットと言う単語にカイザルの表情が強張る。
「………もしかしてカルトアルパス戦で日本の旭日艦隊が使用してきたというあの兵器の事か!?」
「はい。事前に潜水艦を発見したとの無線交信は記録されていませんので、最後の報告の内容から想像しますと、恐らく複数隻の潜水艦が海中で本艦隊を待ち受けてから、対艦攻撃用ロケットを発射した可能性が…」
「海中からロケット攻撃だとっ!? 」
「馬鹿な!いったいどうやって…………」
会議室はざわめく幹部達の声に包まれた。カイザルもその報告を聞いて、一言呟いた。
「魚雷に加えて、そんな事ができる兵器を保有している可能性がある日本の潜水艦の前では……………我々は手も足も出ずに負けるだろうな」
カイザルらは頭の中で、自国の艦隊や航空機が日本のロケット弾攻撃で、成す術もなく沈められていく未来が思い浮かべる。
幹部達も、カイザルの口から出たその言葉に戦慄した。
「兎に角、それについても調査と情報収集に全力を注ぎたいと思います。」
その後の会議では、当面の間は戦力補充と拡充に全力を注ぎ、通商破壊による局地戦に徹することが決定され、会議は終了した。
会議後、バミダルはオフィスに戻ってくると、一人だけ残っていたナグアノが出迎える。
「お疲れ様です。」
「あぁ………ナグアノ、ちょっと……」
「はい?」
駆け寄ってきたナグアノにバミダルは小声で話す。
「すまないが、君の技術調査担当を日本国の物に限定させてもらう。日本国の技術力について、もう少し調べてくれないか?」
「はい、私は別に構いませんが……」
「日本国についての情報だったら何でも構わない。情報部の友人…ハントだったか?ヤツと協力して情報を集めてほしい。」
「分かりました。………でもどうして?」
「いや、念のためにな……」
日本担当を任されたナグアノは、日本国についての情報収集のために奔走する事になった。
第1部 完
誠に勝手ですが、後世日本国召喚 新世界大戦録は一旦ここで、完結させて頂きます。
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