敵爆撃編隊へ向けて飛行するラ・カオスの飛行編隊。全機には機体の上面と下面に大口径砲が1門ずつの合計2門が装備されており、それは明らかに異質だった。
このラ・カオスについて解説していきたいと思う。
この大砲を備えたラ・カオスは、ムー空軍が日本陸軍が保有する重爆迎撃用掃射機『嵐龍』をヒントに、空軍が保有する輸送機の中で最大のペイロードを誇るラ・カオスをベースに改造を施した対大型爆撃機迎撃用機である。
武装は、機首に対爆撃用として海軍艦艇に使用されている75ミリ砲を改造した高射砲を1門備えており、長砲身を誇るそれは威力や射程距離とも爆撃機を粉砕するには充分な威力を誇り、砲弾は徹甲榴弾を搭載している。
更には、発射速度の低い高射砲の火力を補うため、30ミリ斜銃をコックピット後方と機体下面に装備し、斜銃の名の通り、コックピット後方の斜銃は斜め上に、機体下面の斜銃は斜め下に向けられており、敵爆撃機編隊を後方から攻撃できるように配置されている。
また機体のエンジンもデン・セイのターボプロップエンジンを装備しており、機体そのものもエンジンの高出力化と高速化に合わせて強化されている。
そのラ・カオスことラ・カオス(対爆掃射機型)の飛行編隊の指揮官をつとめる、陸軍航空隊の『フィルモア・ハルデン』中佐は護衛に就いている海軍航空隊のデン・セイの編隊を見ながら、彼らの意図を察していた。
「高見の見物を決め込むか。護衛が居てくれるだけありがたいと思うべきか」
フィルモアは双眼鏡を懐に仕舞って、操縦桿を握る。
「中佐、間も無く敵爆撃機を目視で視認できます」
「各機、フォーメーションを組め!」
編隊は敵爆撃機編隊の後ろに回り込むため進路を変え、一度低空に降りてやり過ごし、後ろに回り込む。
「何だ?輸送機じゃないかアレは」
帝国軍特殊殲滅作戦部の爆撃連隊指揮官『アーリ・トリガー』中佐はラ・カオスの編隊の動きを見て疑問を感じていた。
「どうしましょうか?」
「放っておけ、どうせ輸送機じゃ何もできんだろう。我々はこのまま目標に向かうが、攻撃の準備だけはしておけ」
「了解」
グラ・バルカス帝国の最新鋭超大型重爆撃機『グティ・マウン』15機の爆撃編隊は回り込もうとしているラ・カオスを不審に思いつつも、目標へ向かう事を優先して迎撃準備はしつつも特に回避行動をとるような事はしなかった。
「攻撃用意!指揮官機から5号機までは砲撃、6号機から10号機は機関砲攻撃!」
ラ・カオス各機の乗員は高射砲の砲撃準備に入った。貨物室内にある長い砲身の後ろにある薬室に乗員が徹甲榴弾を装填し尾栓を閉じる。
砲撃担当の5機は敵編隊の後方に位置し、機関砲攻撃担当の5機は上方に位置する。
『装填急げ!』
照準を担当する照準手はスコープを覗きながら風向きと風圧の数値を元に計算をしながら照準を合わせる。
「照準、右へチョイ」
照準手の指示でパイロットは機体をコントロールし、確実な照準を行う。
「照準固定!隊長、何時でもどうぞ!」
各攻撃担当の射撃手が高射砲と機関砲のトリガーと接続されたリモコンのスイッチに指を掛ける。
「6号機から10号機はミシン縫い!始め!」
リモコンのスイッチが押されると同時に、30ミリ機関砲が射撃を始めた。ベルトに繋がれた30ミリ徹甲弾が毎分1350発の発射速度で放たれ、5機合わせて毎分6700発がグティ・マウンの編隊に襲い掛かる。
後方に居た3機のグティ・マウンが真上から機関砲の雨を浴びて機体中を穴だらけにされ、外板などの細かい残骸を撒き散らしながら落とされていく。
「命中精度は抜群だな」
訓練通り機関砲は高い命中精度を誇り、グティ・マウンを次々と穴だらけにしていく。
『クソ!全機、回避!回避!』
アーリ・トリガーは編隊に回避行動を指示するが、それを予め読んでいたフィルモアの乗り込む指揮官機以下5機が行動に入った。
「予測通りだ。射撃手!」
「何時でもどうぞ!」
「撃て!」
グティ・マウンが取った回避位置に予め高射砲の照準が合わせられており、3機が照準に入った。
「撃てぇ!」
トリガーのスイッチが押されると、轟音と共に高射砲が75ミリ徹甲榴弾を放った。
砲弾はグティ・マウンの左主翼付け根に直撃と同時に爆発を起こし、左主翼を根元から引き裂いた。
「やった!!」
5機から同時に放たれた砲弾は3機のグティ・マウンを破壊し、続けて4機に照準が合わせられる。
「撃て!」
ドンッと放たれる砲弾は確実にグティ・マウンに直撃し破壊していく。流石に装甲が施されているグティ・マウンとはいえ戦車砲と同じ威力を持つ砲の直撃を受ければひとたまりもなかった。
『クソォ!只の輸送機じゃなかったのかよ!』
アーリ・トリガーは作戦の遂行は不可能と判断、撤退を決意した。一方的にやられていく側のアーリ・トリガーの表情はあまり落ち込んでいるような、怒りに震えているような感じはなかった。
『まぁいい。"本命"さえ上手くいけば、此処でグティ・マウンを失おうと作戦は成功だ!』
編隊は進路を変えて空域から去っていく。
「全機、攻撃終了!追尾する必要はない」
西へ向けて去っていくグティ・マウンを見送るフィルモア。
しかし、去り際にアーリ・トリガーの言った"本命"とはいったい何なのか?
続く
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