ムー本土に侵入したグラ・バルカス帝国の最新鋭超大型重爆撃機グティ・マウンを何とか退けたムー。
しかし、グラ・バルカス帝国の意図は別にあり、本命は中央世界とフィルアルデス大陸の中間に位置する近海にあった。
「司令、間も無く会合地点です」
海中深くを航行する紺碧艦隊。
旗艦である伊601の発令所に艦長である入江の報告が、艦隊司令の前原に告げられる。
「了解。艦隊各艦は浮上」
前原の号令で紺碧艦隊全艦が海上に浮上する。
「各艦は対空、対潜、対水上警戒!」
艦隊は浮上の後、付近一帯の警戒を開始する。
伊601のセイル上で入江と前原はフィルアルデス大陸がある方向に双眼鏡を向けている。
「予定ではそろそろだな」
腕時計が午後6時を指した。
その直後、艦隊右方向の海面に大量の気泡が湧き始める。それは1つや2つではなく、合わせて12個の気泡が立ち、ものの数分で12隻の潜水艦が浮上してきた。
浮上した潜水艦12隻は全艦が三角型の形状をしており、浮上から間も無く全艦が合体し、巨大な円盤を形成した。
「いつ見ても壮観ですな」
「あぁ。まさに海中要塞と言ったところだ」
巨大な円盤こそ後世日本の技術の結晶である、海中要塞『鳴門』。
12隻の潜水艦が合体結合する事により巨大な海中要塞となる鳴門は、広い海域で活動する無艦橋特呂型潜水艦向けの移動補給基地であり、12隻全艦には呂型潜水艦の修理と整備が可能なウェルドックを備えており、それは戦国時代の出城をヒントに後世日本の技術者が実用化したまさに技術の叡知である。
そんな鳴門が大東洋から此処まで足を運び、紺碧艦隊と合流したのには理由があった。
それはイシュタムによるムーへの襲撃が起きた6月にまで遡る。
イシュタムの空母部隊撃滅に成功した紺碧艦隊は、作戦後に、グラ・バルカス帝国本土近海に於ける諜報任務と通商破壊のため複数の特呂型潜を引き連れてムー本土と帝国本土近海で活動中、帝国に潜入中の東機関からもたらされた、とある情報に端を発していた。
帝国に潜入している東機関の本郷少佐が、帝国がかつてフィルアルデス大陸の盟主であったパーパルディアと日本との戦争後に、独立を果たした国の一つであるマール王国を帝国の飛び地とし、日本本土と周辺国家を射程圏に収める計画があるとの情報と資料の入手に成功したのである。
それを裏付ける様に、マール王国の商船が立て続けに消息不明となり、マールの外務関係者が帝国からの接触を受けているとの情報も上がってきていた。
それらの情報を受け取った大高と高野らの日本政府首脳、東方エルサレム共和国、そして第3文明圏の国家はその計画に対して、帝国が掲げる世界制覇の野望を打ち砕く後世日本とエルサレム共和国を含めた第3文明圏の共通認識の元、フィルアルデス大陸と大東洋国家の平和と安全を守るべく極秘裏で帝国の計画を阻止するため動き出していた。
紺碧艦隊と特呂型潜で編成された潜水艦隊は、マール王国の商船の消息不明に関する調査のため中央世界とフィルアルデス大陸の中間に位置する海域に展開していたのである。
鳴門がやって来たのも紺碧艦隊と特呂型潜の潜水艦隊支援のためであった。
「司令、特呂型潜12隻も合流。各艦は補給と補修作業に入りました」
「うむ。せっかく鳴門まで呼び寄せたんだ。何も成果を得ない訳にはいかんな」
紺碧艦隊がこの海域に展開してから間も無く1ヶ月が経つが、帝国は余程慎重なのか中々尻尾を出さないが、一つだけ分かっている事は、この海域には国籍不明の潜水艦が1隻居て、その潜水艦が商船の消息に何か関係しているという事だ。
「何にせよ、今は国籍不明の潜水艦を探し当てる事だな」
艦隊は補給と補修作業を終えた後、再び海中に潜り、その謎の潜水艦を捕捉する事に全力を注ぐ。
補給作業から更に3日が経過した日の深夜、伊601の聴音手がヘッドセットの向こうに聞こえてくる異様な音を捉えた。
「こちら聴音、艦長、前方より妙な音を捉えました」
「報告はハッキリせんか!」
「はい。音は爆音に似ている様で連続して聞こえてきます」
「爆音?距離は?」
「音が遠すぎて距離は不明、方位前方30°」
聴音手からの報告に前原と入江はその正体について、もしやと思う。
「司令、もしや例の」
「確かめる必要があるな。その音源に向けて針路をとれ」
「はっ!操舵手、舵そのまま、両舷前進原速!」
「両舷前進原速!」
続く
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