後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第105話

紺碧艦隊の作戦により鹵獲されたカファルジャドマは、鳴門に載せられた状態で、伊502、潜補伊701、特呂型潜2隻の護衛を受けながら、深夜に日本本土へと回航された。

 

 

「降りろ!!」

 

 

捕虜となったカファルジャドマの乗員は潜補伊701に載せられ、深夜の横須賀港へと降り立った。

 

 

「此処が日本国の空気か」

 

 

目隠しをされた状態のカファルジャドマの艦長と乗員達は、鼻から通る空気が祖国であるグラ・バルカスの首都であるラグナに隣接するラグナ軍港周辺のものと殆ど同じで、唯一違うのは空気がラグナ軍港よりも多少綺麗である事以外は全く同じである事に気付く。

捕虜の移送を行う海軍陸戦隊に指示されるがまま、捕虜達はトラックへと乗り込み、捕虜収容所へと向かう。

 

 

トラック搭乗中の目隠しを外す許可が与えられた、目隠しが外された乗員達は、エンジン音が響き、揺れる荷台で小さな声で話を始める。

 

 

「艦長、自分達どうなるんでしょうか……」

 

「まぁ、想像はつくだろう………俺達がやってるのと同じ様な事になるのは覚悟しておいた方がいいな」

 

「はぁ…………俺、生きて帰れるかな?」

 

「諦める事はない。こうなったのは俺の判断ミスだ。いざとなったら俺が皆を守ってやるさ」

 

「艦長………」

 

 

 

 

 

 

 

一方、鳴門に載せられていたカファルジャドマは、横須賀港の潜水艦建造に割り当てられているドックへと移動される。

カファルジャドマは鹵獲当時のまま船体が横倒しの状態のため、鳴門は半潜状態でカファルジャドマを海面で浮かせ、数隻の曳航船により無事にドックへと入る事が出来た。

 

 

「またとんでもないお客様だ」

 

「えぇ。ウチの幽霊達とは似ても似つかないですな」

 

 

報告を受けて、急遽駆けつけた高野五十六と副官の日向中佐はカファルジャドマを見上げていた。

 

 

 

「予想はしていましたが、実際に目にしてみると、敵さんも我々と同じ発想にたどり着く訳ですか」

 

「グラ・バルカス帝国は今や前世日本と同じ道を辿りつつある。我々と同じように潜水艦決戦思考に舵を切ったとなれば、この艦の技術力の調査は今後の戦略に大きく影響する。前原もそれを危惧して、敵潜の撃沈ではなく拿捕を選択したのだろう」

 

「紺碧艦隊様々です。これで敵に対する新たな戦略が立てられそうですな」

 

「あぁ。暫くは忙しくなるぞ」

 

 

ドックへ入ったカファルジャドマは海軍工廠による調査が開始される。

無論、調査を行う技術者の大半は前世からの記憶を持つ者で結成された紺碧会の息が掛かった者達で、これまでに紺碧艦隊に配備されている潜水艦の設計段階式から携わった者達で、その実力と技術力は折り紙つきである。

 

 

 

技術者達と艦内の調査を行なっていた日向が高野の元へ慌ててやって来た。

 

 

「総長!凄い物を見つけました!」

 

「凄い物だと?」

 

「はい。これです」

 

 

日向が高野に手渡したのは一冊のノートだった。高野は中を確認する。

 

 

「これは……!敵の暗号乱数表ではないか」

 

「はい。敵さん余程慌ててたと見えます。これほど綺麗な状態で暗号乱数表を発見できたのは幸いです」

 

「これは確かに凄い物だ…………」

 

 

だが高野の胸中に引っ掛かる物があった。

 

 

「これまでに我が軍が大東洋で撃沈した敵潜水艦から回収された暗号乱数表の数式がどうにもアレに似ているのが気になるな」

 

「アレと言いますと、前世で我が軍が使用していたD暗号の事ですな?」

 

 

D暗号とは、前世帝国海軍が使用していた暗号で、この暗号が解読された事により前世ミッドウェー海戦で帝国海軍大敗の要因ともなった暗号である。

 

 

 

「あぁ。暗号に詳しい者がつい最近、その事に気付いたんだ」

 

「これも偶然でしょうか?」

 

「偶然か…………兎に角、これで暗号解読がやり易くなった訳だ。中佐、敵艦鹵獲に関する情報の秘匿は徹底的にな。特にこの暗号乱数表に関しては」

 

「了解。この件には箝口令を敷きます」

 

 

 

翌日、新聞やラジオ放送にカファルジャドマの件は一切掲載も放送もされず、今回の件は大高や高野等の一部の者のみに知れ渡る事になった。

 

 

「ふむ、これは確かに収穫ですな」

 

 

高野から直々に報告を受けた大高。

 

 

「前々から報告は受けておりましたが、まさか暗号まで前世日本と同じとは」

 

「敵国が使用する艦艇、航空機、潜水艦、ならびに今回の暗号乱数表、偶然にしては出来すぎています」

 

「高野さんは偶然ではないと?」

 

「はい。こうまで前世日本との共通点が同じとなれば、偶然と言う言葉ではどうにも」

 

「その点に関してはどうお考えになっていますか?」

 

「これは飽くまで憶測の域を出ない、浅い考えですが、向こうにも我々と同じような者が居るのではないかと考えます」

 

「前世からの転生者ですか?」

 

「はい。ですが前世の記憶を持ったまま後世世界の自分と同一の肉体へ転生した者が居るのか、あるいは前世の記憶持っていなくとも、その能力と発想を持ったまま転生した者が帝国には居るのではないかと考えます」

 

「成る程。大戦前に蒼莱を開発した鶴野兄弟や一部の転生者の例もありますから、否定は出来ませんな」

 

「しかしこれは飽くまでも私の憶測なので、もしかしたら本当に偶然なのかもしれませんが」

 

「敵国の転生者………調べてみる価値はありますな」

 

 

 

高野は直ぐに東機関を通じて本郷少佐に指示を送り、グラ・バルカス帝国の転生者に関する調査が開始された。

 

 

 

 

続く

 




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