中央歴1641年12月
夏が過ぎ、秋も過ぎ、本格的な冬に突入したムー国の首都オタハイトにある統括軍本部内の会議室では、日本とムーによる合同の会議が開かれていた。
会議は、ムー大陸の北半分を手中に置くグラ・バルカス帝国への一大反抗作戦への最終調整が行なわれている。
「以上が我が軍と日本国軍との共同で行なわれる反抗作戦の概要となります。反抗作戦の第1段階となる、バルクルス基地占領作戦が要となります」
バルクルス基地とは、ムー国の隣にあり現在は事実上グラ・バルカス帝国の傀儡となっているヒノマワリ王国に建設されている陸軍第4師団の本拠地であり、ムー国への先鋒を担う大規模な軍事拠点である。
そこはアルーから西に30キロの地点にあり、帝国にとってはムーを攻め、更にムー大陸に於いて帝国の一大拠点とも言えるレイフォルからも近いため戦術・戦略上非常に重要な場所であり、此処を抑える事が出来れば帝国にとってはムー国への侵攻が不可能に近いダメージを受ける事になる。
「つきましては我が軍はバルクルス基地侵攻に対する先鋒を勤めさせて頂くが、何か意見があれば」
ムー軍の高官からの言葉に大石が挙手をする。
「大石提督、どうぞ」
「今一度確認しておきたいのだが、反抗作戦の布石となる『天の川作戦』に於いて我が艦隊の任務は帝国本土からムー大陸の輸送ルートを封鎖する作戦は我々に完全に一任してもよろしいのか?」
「はい。天の川作戦に関しては我が国の総意として受け取って戴いても構いません。そちらちお任せします」
「了解しました」
会議は滞りなく終了し、その日より反抗作戦に向けた準備が進められる事となった。
そして、反抗作戦の一翼を担う事になった高杉艦隊はマイカル港沖にてムー海軍との共同演習を開始、そして日本陸軍夜豹師団も同じくムー陸軍との演習を開始した。
この大規模な軍事演習は、グラ・バルカス帝国へこれ見よがしに見せつけるように大々的に行われ、案の定、グラ・バルカス帝国の関心はそちらへ完全に向けられる事になった。
軍事演習が太陽となり多くの国の人間の注目を浴びる中、影の中を紺碧艦隊と旭日艦隊は蠢いていた
「司令、間も無く敵国の領海に入ります」
紺碧艦隊は帝国の領土内に潜んでいた。
「時間だな。これより我が艦隊は敵国の海上交通の要処ミルキ運河を叩く『天の川作戦』を決行する。艦隊浮上!」
前原の号令で紺碧艦隊は一斉に浮上を開始した。
しかし、海上に上がったのは伊601、伊501、伊701の3艦のみであった。3艦とも浮上と同時に航空機の発艦準備を開始した。
前世界にて幾度もの実戦を経験している紺碧艦隊は瞬く間に春嵐と雷洋、星電改を発艦させ、その後直ぐに潜航する。
「司令、そろそろ陽動役の旭日艦隊が動き出す頃です」
「上手くいけば良いが」
『天の川作戦』
これは、グラ・バルカス帝国に対する一大反抗作戦の布石となる作戦であり、紺碧艦隊と旭日艦隊の合同作戦である。
その主目的はグラ・バルカス帝国本土の北部にある鉱山や石油プラントからラグナの工業地帯に鉄鉱石や石炭、石油等の資源の移送ルートとして利用されている帝国最大の河川『ミルキ運河』に設けられたミルキ運河の閘門を破壊する作戦である。
この運河はアメリカのパナマ運河と同様に北部から直接ラグナへ続いている運河で、川幅も広く底も深い。そのため大型の貨物船も通行可能なように整備されている事もあり、一度に輸送できる量も多い。
無論、北部からラグナの港への海上輸送ルートもあるが遠回りとなる上に時間も掛かるため、効率的に資源を輸送するとなればこの運河を利用する他ない。
この運河の破壊に成功すれば、帝国は少なくとも向こう半年の工業力の大半が失われる事になる上に、資源を特に浪費する海軍並びにレイフォルに駐留する帝国軍への物資の供給量も制限され一時的にではあるが、軍事行動を抑える事ができる。
無論それだけでは不十分なため、天の川作戦終了後は紺碧艦隊はムー大陸と帝国本土との間の通商破壊と同時に別の作戦を実行する事となっているがそれは後に明らかになるため、此処では触れない。
紺碧艦隊の攻撃隊発艦と同時に、北回りのルートから帝国領海のギリギリ外側で待機していた旭日艦隊も動き出す。
「司令、間も無く時間かと」
「よし。天の川作戦第1段階を発動する!」
大石の号令で、旭日艦隊所属の各空母から攻撃隊が発艦していく。
装甲空母信長を旗艦とする第1航空遊撃艦隊からは、光武、海神、閃燕の攻撃隊が作戦の第1段階作戦である陽動のため北部の資源採掘場にある石油プラントへの攻撃に向かう。
「司令、潜水遊撃戦隊と第1遊撃艦隊が敵潜と接触した模様です」
「早いな。流石は敵国領海なだけはある」
この時点でア号潜で編成された潜水遊撃艦隊、第1遊撃艦隊は旭日艦隊の先鋒として敵潜水艦掃討を行なっている。
「原君、電波妨害の方は上手くいってるか?」
「はい。星鵬が逐一周波数を変えながら効果的に電波妨害を実施しています」
「だが電波妨害もやがては勘付かれる。良いところ3時間といった処だな」
天の川作戦は敵にギリギリまで察知されないようにする速度が命であり長期的な戦闘は考慮されておらず、特に旭日艦隊は紺碧艦隊とは違って海上に姿を晒している事から発見されるリスクは非常に大きい。星鵬が実行している広範囲の電波妨害が感付かれる数時間が旭日艦隊にとっての限界線であった。
「作戦に懸念や疑念は残すべきではない。此処は心を鬼にしてでも成し遂げなければ」
続く
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