後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第11話

中央歴1639年4月12日

 

 

クワ・トイネとの国境にあるギムに侵攻したロウリア軍は、前衛部隊とワイバーン隊に決して小さくない損害を出しながらも誰もいなくなったギムの町を占領し、前線基地をおいた。

 

 

「ワイバーン隊は60騎近くが落とされ、ギム侵攻部隊は壊滅的な被害を受けてしまった。」

 

 

ロウリア王国、クワ・トイネ侵攻軍のトップである『パンドール』将軍ら、侵攻軍幹部達が居るテント内は重い空気で満たされていた。

 

 

「クワ・トイネがまさかあのような兵器やワイバーンを持っているとは想定外でした。まさか彼らがあれ程の力を付けていたとは……」

 

「地上部隊はまだ1割から2割程度しか失っていないから、地上軍としてまだ余力を残してはいるが、ワイバーンが60騎も落とされたのは痛いな……もし奴等と本格的にぶつかるとなれば、この侵攻作戦は思うようには行かんかもしれん。」

 

 

皆、昨日の鍬十稲派遣軍の5式改や電征の姿を思い浮かべため息を吐く。幸いな事に今回の損害は彼らにとっては作戦侵攻に直ぐ様影響が出てしまう程では無いが、未知の兵器の登場に幹部や兵を含めて動揺が広がっている。

パンドール達は昨日の相手の正体には気がついていないが、ただ一人だけその正体に気がつきつつある人物が居た。

 

 

 

「もしかしたら例の日本国が関わってるかもしれませんよ。」

 

 

 

そう言う彼の名は『アデム』

 

 

今回のクワ・トイネ侵攻軍の副将であり、魔獣使いでもある彼は冷酷でサディストな面があり、人間性としては著しく不出来だ、と友軍内では言われている。

今回の作戦では自分が使役する魔獣を使ってギムの町民達を魔獣の餌にして、僅かな数の人間を逃がして、これらの事を噂として流し、クワ・トイネ軍の士気を下げるという作戦を計画していたのである。

 

 

「アデム君、それはどう言う事かね?」

 

「実は昨日の空中戦で生き残った竜騎士からの報告では、その謎の竜の翼と胴体には赤い丸が描かれていたとの事でして。クワ・トイネの国旗の印とは全く違うので暫く考えていたら、先月に接触を計ってきた日本国と言う国の国旗と酷似していた事を思い出しまして。」

 

「日本国……あぁ、あの大きい船に乗ってやってきた謎の国家の事か?」

 

「はい。」

 

「未開の国の蛮族があのような物を作れるのか?竜騎士は何かを見間違えたのではないのか?」

 

「しかし同じような報告が複数上がってきていますし、この事からもあの謎の竜と謎の地竜の正体は日本軍である可能性が高いかと……」

 

 

アデムの言葉に皆がざわつく。

 

 

 

「そんな馬鹿な……あの国とこのロデニウス大陸は1000㎞以上は離れてるんだぞ。もし奴等の正体が日本国であったとしても、敵は船を使って軍を派遣してきたと考える。だとしたらそれ程数は多くないのでは?」

 

「だが昨日の地竜には火炎弾攻撃は効かなかったし、竜騎士隊は奴らのあの竜には手も足も出なかった。いくら我々が数で勝っているとしても、奴等があんな物を更に多い数で投入してきたら……………」

 

 

パンドールの考えに皆黙り混む中、アデムは心中は別の事を考えていた。

 

 

(もし奴等がクワ・トイネと手を組んでいたとしたら、今回の侵攻作戦は失敗する可能性が高い。これは予定より早くロウリアには見切りをつけなければならんかもしれんか………)

 

 

皆にバレないよう不敵な笑みを浮かべながら、アデムはパンドール達とは別の考えに浸る。

 

 

 

 

 

 

 

この侵攻から2日後の4月14日、ロウリア地上軍に呼応するように、ロウリア王国の港からは4400隻の大艦隊が出撃用意を整えつつあった。

停泊している全隻とも、ロウリア王国にとっては最新鋭の艦が多数揃えられており、数に於いてもクワ・トイネ海軍を圧倒していた。

 

 

「これ程の大艦隊なら、クワ・トイネに負ける事は無いだろう。見ておれよ亜人共よ…」

 

 

艦隊司令の『シャークン』は艦隊旗艦の甲板上で自らが率いる艦隊の威容に、かなりの自信をつけて意気揚々としていた。

 

 

 

 

 

だが、それを監視していた者が居る事など知る由も無かった。

 

 

 

 

ロウリア艦隊の動きを少し離れた場所の海面に一本の細長い筒が浮いている。その筒の後ろには一本のワイヤーがあり、海中のある所へと繋がっており、そして数分後には筒ごと海中に引き込まれて沈んでいく。

 

 

 

「司令、『海遊』を回収しました。」

 

「うむ。直ちに現像と解析を急いでくれ。」

 

 

海中に潜む、紺碧艦隊旗艦の伊601の発令所で前原は入江の報告に頷く。

 

 

「司令、やはり敵は動きますか?」

 

「あぁ、必ず動く。2日前にロウリア地上軍が国境に侵攻した時と同じタイミングで、港に停泊していたロウリア艦隊の動きが活発になってきた。恐らく明日には動き出すだろう。」

 

「では彼等の狙いはやはり……」

 

「クワ・トイネ北方の経済都市の破壊と、上陸だろう。敵はいよいよ本格的にクワ・トイネ侵攻を始めてきた訳だ…………艦長、海遊が持ち帰った各情報を精査した後に、連絡気球を使い暗号で高杉艦隊に打電せよ。」

 

「はっ!」

 

 

その後、紺碧艦隊は海遊の情報を基に『ロウリア艦隊に動きあり』との情報を暗号に変換し、連絡気球を使い、マイ・ハーク港に待機していた高杉艦隊を通じて、海軍軍令部に報告する。

 

 

 

 

 

 

続く




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