後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第107話

天の川作戦に於いて陽動を勤める第1航空遊撃艦隊の攻撃隊は帝国北部にある資源採掘地帯へ向けて、海上を超低空飛行で向かっていた。

 

 

『各機、無線封鎖並びに翼端灯消灯!上昇!』

 

 

稼働中と思われる北部資源採掘地帯の光を確認した攻撃隊の閃燕3機が上昇を仕掛ける。閃燕の編隊は上空で電子作戦中の星鵬の妨害電波により敵側のレーダーでは捕捉されておらず、閃燕は敵のレーダーサイトに向けて突撃攻撃を実行する。

 

 

『投弾用意……投下!』

 

 

3機の光武から投下された爆弾はまっすぐレーダーサイトに向けて落下していき、数秒で破壊し尽くした。

レーダーサイトを無力化したと同時に残りの閃燕22機と光武が破壊されたレーダーサイトが置かれた山を飛び越えて採掘場へと侵入し、閃電は上空直掩に就く。

 

 

『降下!』

 

 

光武が採掘場に設けられていた防空用滑走路に向けてクラスター爆弾を投下して、滑走路と待機していたアンタレスを次々に破壊していく。

 

閃燕22機は石油が詰まったタンクに向けてロ号弾による爆撃を敢行、通常の爆弾とは比べ物にならない程の威力を誇る気化爆弾であるロ号爆弾の破壊力は凄まじく、衝撃波が一瞬のうちにタンクの薄い外板を破壊、続けて熱波が破壊された外板から漏れ出した航空機用の高オクタン価ガソリンや車両用軽油、ガスに引火し大爆発を起こした。爆発で起きた高温の炎はタンクと繋がっていたパイプラインを通じて石油精製施設や更に奥の油田にも伝わり、辺り一帯は短時間で炎に包まれる。

 

更に不運な事に、隣の天然ガス採掘場にも炎が伝わり、可燃性ガスに引火して爆発し、ガス漏れによる有毒性のガスも辺りに広がって波及的に被害が拡大していく。

 

 

『恐ろしい光景だな』

 

 

炎と煙に包まれた資源採掘場を見届けた攻撃隊は任務を終えて逃げるように、現場から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、作戦の本命である紺碧艦隊の攻撃隊は……

 

 

「電熱服と空調があるとはいえ、やはりこの寒さは堪えるな」

 

 

大竹大尉率いる攻撃隊は高高度を飛行しており、旭日艦隊の星鵬による変則的な電子妨害によりグラ・バルカス帝国の警戒網に引っ掛かる事なく、目的地を目指していた。

 

 

「飛行長、間も無く目的地上空です」

 

「よし!宮城兵曹、発光信号で全機に伝え!」

 

「了解!」

 

 

大竹が乗り込む雷洋改からの発光信号を受け取った攻撃隊は高度を下げる。新月を狙ったこの作戦では紺碧艦隊の航空隊にとっては数少ない夜間爆撃任務のため、普段の作戦よりも緊張が走っている。

 

 

「宮城兵曹、パナマ運河の時見たいに絶対に当てろよ!」

 

「勿論、当てて見せます!飛行長も運河の門に機体をぶつけないようにしてくださいよ!」

 

「任せとけ!」

 

 

高度を下げて、雲を抜けた攻撃隊の直下には目標であるミルキ運河が見えた。そこには巨大な閘門がある。北部からラグナに流れるミルキ運河の汽水域に建設された閘門は水の注排水を行い水位の変化を起こして船を通過させる、それはグラ・バルカス帝国の技術力の象徴の様なものである。

閘門の先にはラグナ湾があり、多数の軍艦や貨物船が停泊している。それと同時に当初の予想通り、辺りには海軍基地はあるが、攻撃に際しての一番の懸念である一般人が住んでいる民間地区への被害に関しては、東機関からの情報通り軍施設を一般人から引き離すのと軍事機密を守るためかかなり遠く離れている地点にあるため、作戦前の予想被害でも民間地区への被害は非常に少ないと見積もられている。

 

 

 

 

「パナマ運河よりデカイですなぁ飛行長」

 

「あぁ。獲物はデカイ方が仕留がいがある!獲物が逃げないうちに仕留めるぞ!富嶽1番より春嵐隊は上空直掩、富嶽2番は上流を叩け!俺は下流側を叩く!」

 

 

憤式春嵐は上空直掩、大竹の雷洋改1番機は下流、2番機は上流側の閘門に向かう。

 

 

「宮城兵曹、準備は?」

 

「何時でもどうぞ!」

 

「よし!」

 

 

大竹の雷洋改のターボプロップエンジンが唸りをあげて、下流側の閘門の状態の確認のため上空を一度通過する。

 

 

「門は閉まってるな。なら湖側からやるか!」

 

 

大竹は雷洋改を旋回させ門の裏側にあたる湖側から魚雷攻撃による破壊を試みる。

湖の水位は下流側の閘門の一番上にまで上がっており、魚雷攻撃による最大限の効果を上げる事が出来る。雷洋改は湖の水面ギリギリを這いながら、閘門へ接近する。

 

 

「爆弾倉扉、開けます!」

 

 

爆弾倉扉が開かれると、巨大な魚雷が姿を表す。

この魚雷は今回の作戦用に紺碧艦隊の主力として使用されている62式酸素魚雷を改造した物で、推進機を小型化して航続距離を短くした代わりに炸薬量を大幅に増やし、弾頭を徹甲弾頭、信管は遅延式にした『仮称閘門破壊魚雷』と呼称されている急造兵器である。

 

 

 

「飛行長、速度と針路をこのまましっかり維持してください!閘門の一番脆い中央部分に当てます」

 

「任せたぞ!」

 

 

宮城兵曹は機体の速度と目標との相対距離を計算しながら投下のタイミングを図る。

 

 

「投下ぁ!!」

 

 

レバーを引くと爆撃倉から仮称閘門破壊魚雷が投下され、着水と同時に推進機が始動、閘門に向けて真っ直ぐ突進していく。

 

 

「ふんっ!!」

 

 

投下と同時に大竹は操縦桿を思い切り手前に引いて機体を上昇させ閘門に接触ギリギリで通過する。

 

 

「宮城兵曹!」

 

「はい!」

 

 

宮城はベルトを伸ばして上半身ごと首を後ろに向けて戦果確認を行う。

 

 

「見えた!間もなく命中します!」

 

 

航跡確認のため大量の二酸化炭素を排出する仮称閘門破壊魚雷は真っ直ぐ閘門へ向かっていき、宮城兵曹の読み通りに門の中央部分に直撃する。

構造的に脆くなっている部分に直撃した仮称閘門破壊魚雷は鋼鉄製の合板を突き破り裏側に弾頭部が貫通した。

タイマーが作動して数秒後、魚雷の炸薬に点火され大爆発が起きた。

 

 

「魚雷爆発!」

 

 

その報告の直後、爆発によって脆くなった閘門が湖側からの強力な水圧に押されるように破壊され、大量の水が下流に流され、水は河口から海上へと流れていく。

そして懸念されていた民間人居住区へは、やはり当初の予想通り閘門から遠くに離れていたためか水は全く行っておらず、被害は無い模様であった。

 

 

 

「よし!作戦は成功だ!引き上げるぞ!」

 

 

 

攻撃隊は迎撃が来る前に全速力で現場からの離脱を図る。

 

 

 

「飛行長、電探に感あり!敵機です!」

 

「富嶽1番より全機へ!全速力で離脱せよ!!」

 

 

 

此処まで重い魚雷を運び、燃料に余裕の無い攻撃隊は迎撃にやってきたアンタレスに構う事なく出せる速度一杯で一気に高度を上げて離脱する。

憤式春嵐は雷洋の後方と前方を守るように展開し、ターボプロップ機の雷洋改が出せる最大速度に合わせる。

 

 

「どうだ!?」

 

 

流石にグラ・バルカス帝国の誇るアンタレスと言えど、ジェットエンジンを備える憤式春嵐とターボプロップエンジンエンジンの雷洋改の速度に対して出力不足が祟って、一気に離されていった。

 

 

『なんて速度だ!?』

 

 

振りきられてしまったアンタレス隊のパイロットは去っていく攻撃隊を只、見つめるしかなかった。

 

 

 

 

続く




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