後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第108話

紺碧艦隊と旭日艦隊による北部資源地帯とミルキ運河の閘門破壊は帝国を激震させた。

攻撃が終わり、夜が明けるとミルキ運河の閘門からラグナ湾に掛けての工業地帯は地獄に近い様相を呈していた。

 

運河からの濁流により工業地帯の半数が浸水し、鉄工所や砲兵工廠、石油貯蔵施設はほぼ壊滅状態に陥っている。

特にダメージが大きかったのは艦船を建造していたカルス・ライン社所有の造船所だった。

 

 

濁流が造船所の施設やバリケードを押し退けてドックにまで流れ込み、作業員用の足場が組まれ空母へ改装中だったグレード・アトラスター級戦艦3番艦の船体をドックからラグナ湾へと押し出し、甲板まで出来上がっていた船体は漁船や作業船や曳航船、更には停泊中だった別の艦艇と激しく衝突し、船体に大小の穴が開く大損害を受けてしまった。

現在は穴から船体内への浸水により左に20度数傾いた状態で浅瀬に大破着底して、回収が非常に困難な状態である。

 

その他にも、別のドックで建造中だったグレード・アトラスター級4番艦がまだ竜骨や二重底が組み上げられた状態で濁流により崩壊、メンテナンス中だったペガスス級空母2隻がドック内に入った水により浮かび上がり船体がドックの壁に激突し損傷するという決して小さくない被害を受けていた。

 

 

 

 

そしてラグナ以上に被害の大きい北部資源地帯は、採掘場がロ号爆弾の爆撃により、石油と天然ガスへの引火による大爆発が発生し、地元の消防署と軍による懸命な消火作業が続いているが、今も鎮火の目処は立っていなかった。

 

 

 

 

報告を受けた帝王グラ・ルークスは早朝にも関わらず、各省庁と軍のトップを召喚し、緊急の御前会議を開く。

 

 

 

「以上が、今回の被害になります」

 

 

司会役の帝王府長官カーツはグラ・ルークスへ各部署からの集めた情報を元に急遽作成した報告書を読み上げた。

 

 

「……………………」

 

 

 

カーツからの報告にグラ・ルークスは何も言わず、ただ全員を見回すと目を閉じる。

仕事柄、彼と関わりが深いカーツとグラ・ルークスの事を昔から知っている議員や軍の関係者は全員揃って同じ意見を脳裏に抱く。

 

 

 

『帝王は今、怒りに満ちていると』

 

 

 

此処で下手に対応を誤れば、自分のキャリアどころか命すらも危うい状態の彼らは何とかしようと思考を巡らせる。

そんな彼らを心情を知ってか知らずか、グラ・ルークスは口を開けて皆に問いかけた。

 

 

「此度の件の原因は何か?」

 

 

その問いに、職務に復帰したばかりのカイザルは立ち上がり、問いに答える。

 

 

「はい。何れも日本国が関連しています」

 

「日本国だと………それは誠か?」

 

「はい。幸いに、我がラグナのミルキ運河爆撃を敢行した日本軍の航空機の写真がございます」

 

 

カイザルは鞄から2枚の写真を取り出し、その場に居た人間の手から手へと渡り、カーツがグラ・ルークスに手渡した。

 

 

「ほぅ……これは爆撃機の様だな」

 

 

1枚目の写真には迎撃に出たアンタレスのパイロットが撮影した雷洋改が写っている。

 

 

 

「これはプロペラが無いと見える」

 

 

 

2枚目にはアンタレスを全力で振り切る憤式春嵐が写っていた。元軍人のグラ・ルークスには雷洋改は何処と無く自国の航空機と同じ匂いを感じ、憤式春嵐は自身の常識には無い異物に見えた。幸いにもその軍人気質が怒りに満ちていた彼の心情を僅かながら鎮め、日本に対する興味と関心を沸かせる。

 

 

「して、この航空機は何処に?」

 

「迎撃のアンタレスが追撃しましたが、写真の機体はどれもアンタレスを上回る速度により振りきられてしまいました」

 

「なんと…………カイザルよ、この写真から敵機は何処から飛来し何処へ降りたと思う?」

 

「この双発爆撃機はおおよそ検討はつきますが、プロペラの無い戦闘機とおぼしき機体は我々の常識では検討のしようがありません。しかし飛び去った方向から南から飛来した可能性があります」

 

「ふむ。南の方向に航空機が降りれる島や国はあるか?」

 

「御座いません。少なくともムー大陸から飛来した可能性は低いでしょう」

 

「では貴君は何処から来たと予想する?」

 

 

 

 

その問いにカイザルは迷う素振りすら見せず、あっさりと答える。

 

 

「海の中………潜水艦から飛び立ったと私は推測します」

 

 

その言葉に議場がざわめいた。

「そんな馬鹿な……」「ありえん!」「まさか!」と言う言葉が飛び交う中、カーツが声を張り上げる。

 

 

「静まれ!!皇帝陛下の御前であらせられるぞ!!」

 

 

その声に皆は一斉に口を閉じた。

 

 

「カイザル閣下、続けてください」

 

「はい。恐らく日本国は我々と同じような航空機搭載型潜水艦を実戦配備し、その能力は敵国内部を直接攻撃できるだけの能力を有していると断言できます」

 

「成る程。確か貴君の発案で我が軍も同じような物を持っていたと記憶しているが?」

 

「はい。我々にはシータス級潜水艦があります。その運用思想は陛下も御存知の通り、敵国の沿岸地域を直接叩くための物です。しかし敵方の物は我々のそれを遥かに上回る能力を有しています」

 

「同じ発想で何故我々はそれ程の力を発揮できん?」

 

「言い訳をするつもりは毛頭ございませんが、我々のモノはまだ実用化できて日が浅く練度も技術も低いもので、しかも転移による訓練不足と戦略・戦術の変更もあり、まだそれ程の力を持っていないのが現状です」

 

 

 

ハッキリと言うカイザルの言葉にグラ・ルークスは現実を突きつけられるが、それだけで怒りや癇癪を起こす程、彼は心慮の浅い人間ではない。むしろハッキリと物を言える人間を彼は好いており、カイザルはその最たる例でもある。

 

 

「致命的な現状は理解した。して、その日本の潜水艦については何か情報を掴んでおるのか?」

 

「それについては情報部から」

 

 

カイザルは隣に座っていた情報局局長にバトンタッチし、局長は報告する。

 

 

「我が情報部でも日本の潜水艦について調査を進めていますが、彼の国は潜水艦に関する情報を秘匿しており、調査は困難を極めております。しかし判明している事が1つ」

 

 

局長は一呼吸置いて話を続けた。

 

 

「数ヶ月前にムー本土へ直接攻撃に向かったイシュタムが送ってきた最後の情報と生存者の証言から、此度のミルキ運河爆撃を敢行し、イシュタムを殲滅した日本の潜水艦隊は同一のものと思われます。しかも、その潜水艦隊はイシュタムの対潜警戒網を易々と潜り抜け背後の海中から噴進弾を打ち上げたとの事です」

 

 

局長の言葉はその場を混乱させた。

噴進弾は帝国では理論でしか提唱されていない物で、実用化に向けての研究も開発も行なわれていない、殆どお伽噺のような兵器であるからだ。にも関わらず帝国は以前からそんな物を日本が実用化して航空機に搭載して運用している事を突き止めていたが、潜水艦に搭載して水中から水上にいる艦船に向けて打ち上げるなど、寝耳に水だった。

 

 

 

「潜水艦から噴進弾か…………益々面白い」

 

「陛下……」

 

「情報部はその日本の潜水艦隊に関する情報を逐一、余の元へ報告せよ!そのためなら手段は問わん!」

 

「はっ!!」

 

「それと、余の計画を悉く邪魔してくる小賢しい日本とムーに改めて我々の力を見せつけてやるのだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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