夜豹師団砲兵隊から放たれた噴進補助推進弾は、発射直後にロケットを作動させ一気に加速していく。弧を描く弾道で飛翔しながら、目標へ向けて接近していく。
標的となっている、帝国陸軍第8軍団第5師団は第6師団の前衛としてバルクルス基地から出撃していた。
機械化歩兵を中心とした編成の第5師団は戦車隊が前衛を勤め、歩兵の盾として前進していた。
「クソ!奴らめ俺の休暇を台無しにしやがって!」
戦車隊の戦車兵がキューポラから顔を出しながら毒つく。突然の召集命令で敵を迎撃せよとの命令を受けてから彼の機嫌は悪かった。
「さっさと追い返して休暇の取り直しだな」
彼は何時も通り、レジスタンスや反体制派によるゲリラ攻撃だと思っていたが、ゲリラ相手に戦車が必要なのかとも思っていたが、命令された以上はそれに従う他なかった。
「ん?」
その時、何かが落下してくる音が聞こえてきた。
「え?」
その直後、目と鼻の先で多数の爆煙が上がった。
「敵襲!!」
第5師団は直ちに戦闘態勢に入った。
「砲撃!?奴ら、ゲリラじゃないのか?」
戦車隊と歩兵部隊が周囲を警戒しながら敵からの再攻撃に備え部隊を1ヵ所に固まらず分散させるように展開する。
『弾着………今!』
しかしその前に2度目の砲撃が見舞われ、今度は第5師団の前衛に砲弾が降り注ぐ。
砲弾の爆発は戦車や装甲車を吹き飛ばし、歩兵も一度に何十人という数が宙を舞う。
『目標に直撃。同一諸元にて効力射』
夜豹師団砲兵隊は効力射を開始し、第5師団に砲撃を見舞う。
砲兵隊の最新鋭155ミリと203ミリ榴弾砲は威力と射程距離ともに期待通り敵を効果的に破壊し、その性能を遺憾なく発揮する。
『こちら観測。敵前衛の被害甚大』
「了解。次の手だ」
砲撃の後、左と右の攻撃軸の部隊が動き出した。
「前進!」
右の攻撃軸の中核である夜豹師団第71戦車連隊の5式改が敵第5師団の背後から姿を表した。
「連隊突撃!」
第71戦車連隊の5式改が敵部隊の背後に向けて突撃を開始する。
「撃て!」
5式改の75ミリ戦車砲が火を吹くと、敵の主力戦車ハウンドとハウンドⅡ、軽戦車シェイファーに次々と直撃、撃破していく。
『後方敵戦車!』
『いつの間に!応戦!』
敵戦車隊は直ちに反撃に移り、5式改と97式中戦車の部隊の迎撃に入る。
しかし、5式改はハウンドとシェイファーの有効射程距より外より攻撃してくるため、ハウンドⅡの47ミリ砲では5式改に命中しても装甲の表面に多少の傷をつける程度に留まる。
『クソ!敵の戦車はシェイファー以上だ!全車、距離を詰めろ!』
敵戦車隊は距離を詰めれば砲撃にも効果があると判断して、距離を詰めるため突撃を開始する。
しかし、対独戦向けに編成された夜豹師団戦車部隊の練度は生半可なものではなく、敵が突撃を開始しても間合いを取るよう後退しながら攻撃を続け、しかも5式改の3速のバックギアによる後退速度も早いため、中々距離を詰められない。
「頃合いだな。戦車隊、突撃!」
今度は、左の攻撃軸を担うムー陸軍の第1戦車連隊が敵の左右側面から姿を表した。日本から提供された97式中戦車で編成されたムーの戦車隊は第71戦車連隊を追っている敵部隊の側面を突く形となり、有利な位置から攻撃を開始した。
「撃て!」
47ミリ砲と57ミリ砲が火を吹き、敵戦車と輸送トラック、装甲車に命中していく。
『側面に敵戦車!』
『クソ!待ち伏せか!』
『あぁ!隣の車両がやられた!』
敵に包囲された形となった第5師団戦車隊と装甲車は砲撃に晒され、次々と戦力を失っていく。
元から歩兵支援が中心の帝国陸軍は敵戦車との対戦車戦闘の経験が少なく、特に転移してきてからは戦車を持つ国が存在せず、従来の戦法でも圧倒できた事から対戦車戦闘訓練もろくに行われず、対戦車戦闘で言えば練度は低かった。
「此処で決める!」
浮き足立って足を止めてしまった敵戦車部隊に対して第71戦車連隊は後退を止めて、再び突撃を開始、ムー陸軍の戦車隊も一斉に突撃を開始し敵戦車部隊は最早袋の鼠に過ぎなかった。
「敵戦車後退!」
「このまま押し込む!」
第71戦車連隊は砲撃しながら突撃し敵戦車部隊を追い回し、最後は敵戦車部隊全滅にまで追い込んだ。
障害を排除すると同時に左右の攻撃軸部隊から本命の歩兵部隊が展開を開始する。
「降車!」
夜豹師団の機動歩兵連隊の6輪装輪装甲車が姿を表し、戦車に守られながら、機動歩兵連隊の兵士が車両から降り立つ。
「撃て!」
最新の9式小銃を手にした兵士達が車両の左右に展開、その場で伏せると2脚を立てて伏せ撃ちの姿勢で敵に向かって射撃を開始する。
装甲車からも機関銃による射撃が始まり、弾幕を張りながらゆっくりと前進していく。
「クソ!なんて火力だ!」
「怯むな!敵の数は少ない‼️落ち着いて狙え!」
帝国兵も応戦するが、火力や攻撃力に勝る夜豹師団の攻撃に圧倒され効果的な反撃が出来ずにいた。
「よし!行くぞ!」
ムー陸軍歩兵も97式中戦車を盾にしながら前進し、徐々に敵を追い込んでいく。
帝国軍は徐々に戦力を消耗し、やがて頼みの綱の戦車やトラックの殆どを失った事により徐々に戦意を失っていく。
「お館様!そろそろ頃合いかと」
「うむ。日本国とムーに知らせぇい!」
「はっ!」
待機していたフェン王国軍が突撃準備を整え、伝令が無線機を使って突撃の可否を問う。
「お館様!突撃は可との事です!」
「よし!敵は目の前にあり!我に続けぇぇぇ!!」
フェン王国軍のシダケ軍団長の合図で王国軍が突撃を開始する。猛将としられるシダケ軍団の騎馬隊は馬の蹄の音を轟かせながら敵に向かって突撃を開始する。
「馬は駆けよ!人は走れ!手柄を取りたくば歩みを止めるな!恐れるな!その武功を敵に見せよ!!」
「前時代の田舎者共め!機関銃で蹴散らせ!」
突撃してくるシダケ軍に機関銃が向けられるが、3段撃ちの構えで待機していた魔道銃隊による援護射撃が始まる。
「放てぇぇ!」
煙を充満させながら放たれる魔道銃の弾丸は帝国兵を怯ませていく。
「続けて放てぇぇぇ!」
魔道銃隊の前衛に居た弓兵部隊が斜め上に向けて矢を放ち、頭上から大量の矢が降り注ぎ帝国兵は矢を受けて次々と倒れていく。
「敵は怯んだ!掛かれぇぇ!!」
シダケ軍団は銃撃に晒されながらも騎馬隊の勢いは止まらず、敵の懐に見事飛び込んだ。
「うぉぉぉ!!」
槍兵は歩兵銃よりも遥かに長い槍で帝国兵士を突き、雑兵は刀で敵兵を一人ずつ切り伏せていく。
「我こそはと思う者は掛かってこい!」
特にシダケは突撃してから馬を降りると自身の刀で向かってくる帝国兵を次々と切り伏せ、銃撃されようとも持ち前の勘と動体視力で弾丸を避けながら歩みを進めていく。
「貴様が敵の指揮官らしいな!」
コソコソと逃げようとしていた将校を発見し刀を首筋に突きつける。
「まて!話せば分かる!話せば!降伏する!」
「なら武器を捨てよ!全て捨てよ!」
「分かった!分かった!」
将校は身に付けていた帽子や拳銃、サーベル、ライフル、ベルトを全て脱ぎ捨て、完全に丸腰の状態となった。
「懸命だな」
「お館様!」
「おぅ、此奴は敵の親玉じゃ。者共引っ立てぃ!」
「はっ!」
第5師団の師団長はシダケの部下に引っ立てられるように連れていかれた。
「今じゃ!勝鬨をあげぇい!」
シダケは近くにあった動かなくなっていたハウンド中戦車に登り、砲塔の上に立つと自国の国旗と自軍の旗を掲げて周りに見えるように大きく派手に左右へ向けて振り上げる。
続く
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