後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第114話

第5師団が壊滅した頃、後方に居た第6師団にも状況は伝わっていた。

 

 

「なんて事だ……第5師団が壊滅するとは」

 

 

第6師団の幹部達は指揮車両の中で、命からがらやって来た第5師団の伝令兵からの報告と第5師団からの通信途絶から、第5師団は壊滅したと判断した。

まさかの事態に第6師団の面々はどうするべきかを考える。

 

 

「師団長、一刻の猶予はありません!直ちに我々も打って出ましょう」

 

「だが敵は第5師団を壊滅させる程の実力を持っている。下手に動けば敵の思う壺だ」

 

「しかし、軍団長の命令が」

 

「敵の狙いはバルクルス基地の戦力を引き離す事だ。もし我々まで壊滅すればバルクルス基地は誰が守る?」

 

「バルクルス基地には警備隊と予備の1個旅団が居ます。万が一我々が壊滅しても、敵は相当の戦力を失う筈です。そんな状態でバルクルス基地を攻略するなど不可能です」

 

「うぅむ………そう考えればやはり打って出るしか無いか」

 

 

第6師団の師団長にはまだ迷いはある。此処で師団が壊滅すればバルクルス基地の守りが弱くなるのは火を見るよりも明らかだからだ。

参謀の言う通り、敵に出血を強いる戦い方を選択すれば師団が壊滅したとしても敵は戦力を失いバルクルス基地攻略を諦めるか、足止めは出来る。時間が稼げればレイフォルからの援軍が望める。

 

 

「よし!此処は打って出よう!全部隊に戦闘命令だ!敵を迎撃する!」

 

 

第6師団は動き出した。航空戦力の期待が出来ない以上は地上戦力のみで迎撃に出るしかない。

 

 

 

 

しかし、そんな動きも多国籍軍にとっては想定の範囲内だった。

 

 

 

「司令、間もなく海軍の通信妨害が始まります」

 

「よし。全部隊は予定通り、無線周波数を変更」

 

 

多国籍軍の強みの1つに、グラ・バルカス帝国よりも先に行く電子技術を使っているという事だ。

今回の反抗作戦に参加している高杉艦隊と旭日艦隊に配備されている早期警戒機星鵬による電波妨害が実施される事になっている。

 

 

「閣下、各部隊は無線機通信用周波数の変更完了しました」

 

「秒読み始め」

 

 

電波妨害開始の秒読みが始まる。

 

 

「5、4、3、2、1、0、今っ!」

 

 

星鵬による電波妨害が開始され、辺り一帯の通信システムが異常をきたす。

 

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「師団長!無線が繋がりません!」

 

「何だと!」

 

 

妨害電波は敵第6師団の通信網にも大きな影響を及ぼし、バルクルス基地やレイフォルの友軍本隊との無線通信も遮断されてしまった。

 

 

「周波数を変えてみろ」

 

「駄目です。どの周波数帯も雑音だらけでまるで役に立ちません」

 

「クソ!こんな時に自然現象に見舞われるとは…」

 

 

 

グラ・バルカスには電波妨害の概念は殆ど知られていない。現にグラ・バルカス帝国軍は電波妨害を自然現象によるものだと錯覚しており、電波妨害に対する対策など存在しなかった。

それ故に、帝国軍は目と耳を塞がれた状態となり状況確認と部隊間での意志疎通が困難になっている。

 

 

「兎に角、通信の復旧に勤めよ」

 

「了解」

 

 

第6師団は敵の迎撃のため展開中に電波妨害に見舞われたため、身動きが制限され、有線電話と伝令兵による命令伝達が実施されるが、無線通信に比べれば効率は悪く、部隊間の意志疎通にもかなりのタイムラグが見られる。

 

 

 

そんな第6師団に向けて、刺客が迫っていた。

 

 

 

『敵地上部隊を発見!全機、降下開始!』

 

 

高杉艦隊所属の艦上重攻撃機『吼星』の飛行編隊が第6師団に向けて急降下を開始した。

 

 

『用意……投下!』

 

 

吼星から次々とクラスター爆弾が投下され、大量の子爆弾が降り注ぎ、第6師団地上部隊は爆撃に晒された。

 

 

『突入!』

 

 

吼星に続き、爆弾とロケット弾、誘導弾で武装した光武も突入し、敵の車両を破壊していく。

 

 

『よぉし!今度は我々の出番だ!』

 

 

吼星と光武が攻撃を終えると、辺りにバタバタと何かが羽ばたく音が響く。

 

 

「なんだ?」

 

 

第6師団の眼前に現れたのは、回転翼機、所謂ヘリコプターだった。

前方から見れば1メートルも無い程に細い幅の胴体幅の機体にはタンデム式のコックピットがあり、機首には3連装20ミリ機関砲、胴体左右から伸びる小さな翼にはロケット弾ポットが提げられている。

見る者が見れば『AH-1コブラ 対戦車ヘリコプター』と見間違えるソレは日本陸軍の新鋭装備の1つでリーン・ノウの森の遺物から産み出された新鋭機『8式対戦車回転翼機 タカ号』である。

 

リーン・ノウの森で発見されたAH-1SコブラやAH-1Zヴァイパー、AH-64Dアパッチのデーターと技術を紺碧会の厳田信吾が目を付け、大高を初めとした青風会による研究の末に陸軍の新戦術に組み入れられ、大高の承認により泰山航空工業の東野社長を初めとした技術者と東方エルサレム共和国の技術者らのチームによる共同開発が行われ、一番構造が簡単なAH-1Sコブラを元に開発されている。

 

 

 

『各機、攻撃用意!』

 

 

ムーに派遣されている日本陸軍の新鋭航空隊『独立回転翼機隊』に所属するタカ号のパイロットは機体名である対戦車回転翼機の頭文字をとって付けられた『タカ』と猛禽類の『鷹』に因み、鷹が戦車を嘴で咥えている絵が書かれたワッペンを飛行服の上腕部に縫い付けており、鷹の名に恥じぬ様に敵第6師団への攻撃準備を整える。

 

 

『タ式、撃て!』

 

 

タカ号の左右の翼から提げられている『タ式対戦車誘導弾』が発射され、敵戦車を狙い撃ちにしていく。

ワ式噴進弾を対戦車用に転用・改良したタ式対戦車誘導弾はワルターロケット推進による高速飛行と射撃手による有線誘導により敵戦車に確実に命中し、弾頭部のプローブがハウンドの薄い装甲を突き破り内部から破壊していく。

 

 

 

『続けて撃て!』

 

 

 

19連装ロケット弾ポットから無誘導ロケット弾による一斉攻撃が始まり、歩兵とトラック等の軽車両が吹き飛ばされ、あちこちで爆発が起きる。

 

 

「応戦!」

 

 

第6師団も黙っている事はせず、対空攻撃を実行する。

 

 

『回避!』

 

 

タカ号は一斉に回避する。投影面責を極限にまで減らしたコブラの設計はタカ号に於いても健在で、機銃による攻撃がし辛く、また命中してもコックピットは防弾ガラスのキャノピーとセラミック製の合板に覆われているため、虚しく弾かれてしまい有効打とはならない。

 

 

『お返しだ!』

 

 

今度は機首に備えられた20ミリ機関砲による反撃が始まった。

重爆迎撃用掃射機『嵐龍』に装備されているガ式20ミリ機関砲を小型軽量化し発射速度を抑えた3連装20ミリ機関砲は歩兵を薙ぎ倒していく。

 

 

 

『頃合いだな。後は夜豹師団に任せるぞ』

 

 

 

攻撃を終えた独立回転翼機隊は地上部隊にバトンタッチし後退する。

既に夜豹師団の主力が到着し、瀬戸少将率いる戦車部隊が第6師団へ向けて突撃を開始した。

 

 

 

『前進!』

 

 

 

 

続く




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