ヒノマワリ王国首都ハルナガ京の統治機構庁舎の瓦礫に建てられたポールに掲げられた多国籍軍の旗は風により大きく靡いていた。
その旗を安堵と不安が入り交じった表情で見つめるハルナガ京の住人達は戦闘の後片付けを行っていた。しかし、霞部隊と新兵器のヘリコプターの活躍により大規模な戦闘が行われなかったため、後片付けの手間は殆どなく、ハルナガ京解放から僅か3日で後片付けは完了した。
そして、ハルナガ京解放から5日が経過したこの日、王城前の広場ではある式典が行われていた。
「ヒノマワリ王国、新国王陛下に敬礼!」
ハルナガ京の住民、王族、多国籍軍幹部交えて、事前の取り決め通り現国王の退位式と、新国王のフレイアへの戴冠式が執り行われていた。
だが、戴冠式と言ってもイギリスのような大規模なものではなく、戦闘後と言う事もあり規模は小さかったが、前国王自らの手により王冠を被ったフレイアの表情は荘厳に満ちている。
「王国臣民並びに多国籍軍の皆様方、本日は戦闘後の喧騒の中、前国王陛下の退位と新たな国王誕生を祝う戴冠式にお集まりいただき、感謝の念が絶えません」
フレイアは用意されたマイクを使い演説を開始する。
「我が国がグラ・バルカス帝国の脅威に屈してから早一年、我が国の王族ならびに臣民の悲願であった再独立を果たす事が叶いました。悲願を支持して下さいました多国籍軍に参加されています多方面の国々の皆様には、我が臣民を代表致しましてお礼を申し上げます」
彼女の演説に民衆は改めて祖国が解放された実感を得た。
「しかし未だグラ・バルカス帝国の力は強大で、戦闘が終結した現在でも我が領土内には帝国軍残党による破壊活動が行われており安定しているとは言えないと言わざるを得ません。しかしながら、我が国はかつての平和を謳歌する事が出来るまでにそう長い時間は掛からないでしょう。そこで私は此処で宣言したい事があります」
一呼吸置いて、フレイアは口を開く。
「我が国は本日より日本国を盟主とする大東洋諸国連合、GOCAへの加盟申請を行う事を此処に宣言致します!そして同時に微力ではありますが、多国籍軍へは国を挙げて支援致します!」
フレイアの宣言はムーのオタハイトからハルナガ京へと集まっていたムーや日本、ミリシアルのラジオやTV等のメディアにより大々的に中継されており、その電波はレイフォリアの電波塔が受信してレイフォリアにある帝国軍や関連施設、更にはグラ・バルカス帝国本土にも届いている。
それを目にした帝国の人間達の反応は様々で、徹底抗戦やヒノマワリ王国の再奪還と騒ぐ者も居れば、自国内の主要工業が打撃を受けたのに何を言ってるのかと批判する者、今はレイフォルの防衛をどうするかと冷静な反応を示す者も居る。
「ヒノマワリが墜ちたか………」
レイフォルの首都レイフォリアに設けられたグラ・バルカス帝国軍総合要塞ラルス・フィルマイナの地下に設置されている帝国軍ムー大陸方面軍司令部では、ヒノマワリ王国失陥の報に暗い空気が漂っていた。
「まさか異世界の軍勢がこんなに早く進撃してくるとは」
基地司令兼レイフォル方面軍司令官の『ファンターレ』陸軍大将は腕を組み、報告から既にレイフォルはムー大陸で孤立してしまった事を悟る。
グラ・バルカス帝国はムー侵攻に備えて、にヒノマワリ王国を中心にソナル王国、ニグラート連合、マギカライヒ共同体を傘下に加えてムーを孤立させた上で包囲する『ムー包囲網』計画を立て、ヒノマワリ王国を早い段階から傘下に入れていたがバルチスタ沖海戦以降、何故かニグラートとマギカライヒの態度が硬化、最終的には帝国の傘下には下らず、2国ともムーと日本を中心としたGOCAへ加盟、多国籍軍に参加する事になってしまっていた。
先の2国が帝国に対して態度を硬化させたのも実は日本が大きく関わっていた。
武力を散らつかせる恫喝に近い外交に舵を切って無理やりにでもムー包囲網を完成させようと強硬策を取る事を予め読んでいた大高は、帝国が2国に接触してくるより前から根回しをしており、ムー包囲網を作らせないようにしていた。
「閣下、最早ムー大陸方面軍は我々のみです。如何なさいますか?」
「徹底抗戦だ。此処が陥落すれば我が国に未来はない」
「では、大陸に展開している全軍に多国籍軍の奇襲に備えて24時間の臨戦態勢を整える様に伝えます」
「そうしてくれ。それと、この前の敵超戦艦による攻撃の被害はどうなってる?」
ファンターレは旭日艦隊による艦砲射撃の被害集計を纏めさせる。
「はい。レイフォル港の港湾施設は7割が使用不能となっています。飛行場も敵航空機の爆撃を受け滑走路に重大な被害を受けています」
「此方の航空機の被害は?」
「地下格納庫の各種航空機に関しては被害はありません。しかし地上とレイフォル上空で哨戒中だった物に関してはほぼ全滅です」
「燃料と弾薬の備蓄は?」
「地上の燃料タンクは全滅、弾薬庫も同様ですが地下に保管していた物に関しては無事です」
「了解した。今は兎に角、滑走路の復旧が急務だ。作業を急がせろ」
「了解」
ファンターレは次の話題に切り替える。
「ダイジェネラ要塞の現状は?」
「はい。要塞は既に稼働を始めており、敵の侵攻に備えています。火砲ならびに機関銃、歩兵陣地も24時間の臨戦態勢を整える様に指示しています」
『ダイジェネラ要塞』とは、レイフォルの南部にあるヒノマワリ王国とソナル王国との国境地帯にある標高400メートル級のダイジェネラ山を中心とした山脈を丸々要塞とした物で、その規模はムー大陸に存在する全ての要塞を凌駕する物で、此処を陥落させない限りレイフォルに大規模な地上部隊は突入は出来ない。
多国籍軍は南部と北部の2方向からレイフォルを目指しているが、北部は重車両の通行を阻む渓谷があり大規模な交通網が整備されていない事と、そこからレイフォルに進撃するには遠すぎる。そのため多国籍軍としては、レイフォルに一番近いこのダイジェネラ要塞を攻略する必要がある。
ダイジェネラ要塞は今や、ムー大陸のグラ・バルカス帝国軍にとっての大きな命綱と言っても過言ではない。だから帝国軍はダイジェネラ要塞が多国籍軍を食い止めている間に態勢を整えようと考えていた。
「兎に角、レイフォルは何としても死守する!」
「「「「「はっ!」」」」」
続く
皆様からのご感想お待ちしております。