後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第15話

紺碧艦隊の火遁作戦により、甚大な被害を受けたロウリア艦隊の残存艦艇2500隻は、まだ夜明け前のハーク港へと帰還していた。

 

 

「何だったんだあれは………燃える海に突然爆発する船…………」

 

 

憔悴しきっていたシャークンは自ら乗り込む船の船室で、今までの不可解な出来事と上への報告を考えていた。

 

 

(上にどう報告すれば良いんだ?突然海が燃えて味方船が火に焼かれる、船が突然爆発する…………こんなの信じてくれる奴なんて居ない…………)

 

 

常識的に考えて海が燃えて、船が突然爆発する等と言う荒唐無稽な報告は誰も信じはしない。報告したとしても頭が可笑しくなった等と言われ、閑職に回されるのがオチである。

 

 

「どうしたものか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ハーク港沖には既にロウリア海軍力の息の根を止めんとするため、紺碧艦隊が待ち受けていた。

 

 

「敵艦隊は港に全て入りました。」

 

「敵さんは我々の予定通りの行動を取ったな……火遁作戦第二段階発動用意っ!油槽魚雷発射!」

 

 

 

既に予定通りの陣形をとっていた紺碧艦隊は、再び油槽魚雷を発射する。

紺碧艦隊全艦から放たれた油槽魚雷数は32本で、そこに3斉射分プラスすると合計96本。

そんな数の油槽魚雷は僅か10分程でハーク港とハ-ク湾内を油で充満させ、火遁作戦における鼠の巣に蓋をする準備が完了する。

 

 

「巣穴に蓋をする準備は出来たか………予定ではそろそろ味方の水雷戦隊が来る頃だな。」

 

 

前原は内線電話の受話器を取り、聴音室へと繋ぐ。

 

 

 

「聴音手、スクリュー音は聞こえるか?」

 

『少々お待ちください…………………………僅かですが、本艦6時方向より複数のスクリュー音が聞こえます……恐らく味方の水雷戦隊の物と思われます。』

 

「分かった。………水雷長、点火魚雷の準備は良いか?」

 

『いつでもどうぞ!』

 

 

準備が整い、後は命令を下すだけである。前原は帽子を被り直し、声を出す。

 

 

「巣穴に蓋をするぞ…………点火魚雷、撃てぇ!」

 

 

伊601から残りの点火魚雷が放たれ、発射から数十秒後、ハーク湾に再び火が上がった。

 

 

「司令、油槽魚雷の点火を確認しました!」

 

「急速潜航っ!ダウントリム10°、深度120!機関停止っ!」

 

 

魚雷を撃ち終えた紺碧艦隊は後方からやって来る、味方の水雷戦隊に自身の存在を察知されぬよう、その場で一気に潜航し、海底に身を潜める。

 

 

 

 

 

ハーク湾に火の手が上がった頃、紺碧艦隊の後方の海域にはハーク港に夜襲攻撃を実行するため、高杉艦隊より先行した第23水雷戦隊と第24水雷戦隊の雪嵐級駆逐艦12隻が、最大戦速でハーク湾沖へと迫っていた。

 

 

「司令、目標のハーク湾より、多数の火の手が上がっているとの報告あり!」

 

「敵艦の数は?」

 

「約2500。」

 

「よし!敵は動けなくなっている。総員夜戦用意!全艦最大戦速を維持しつつ、目標へ突入!」

 

 

 

第23水雷戦隊は油槽魚雷の炎に覆われているハーク湾へ向けて炎を掻き分けて突入し、魚雷戦と砲撃戦の準備に入った。

 

 

 

「艦長、取り舵45°!魚雷戦用意っ!」

 

「取り舵45°!魚雷戦用意!」

 

 

 

両戦隊は、日頃鍛えた訓練通りに互いに息を合わせ、全艦がほぼ同時に艦の側面をハーク港に向け、魚雷が装填された魚雷発射管を向けた。

 

 

「距離6000!発射用意よし!」

 

「撃て!」

 

 

号令と同時に発射管から魚雷が放たれ、着水した魚雷は航跡を引かず、真っ直ぐにロウリア艦隊へと殺到、1分後には港のあちこちから多数の水柱が上がった。

 

 

 

「よし!第2射用意っ!撃てぇ!」

 

 

 

再び魚雷が放たれ、全弾命中する。

 

 

 

「右舷砲撃戦用意っ!」

 

 

 

魚雷を撃ち終えた艦は、主砲による砲撃戦へと移る。

 

 

 

「撃ち方はじめ!」

 

 

 

砲撃が開始され、艦隊とハーク港に砲弾の雨が降り注ぐ。電探と連動した正確な砲撃により、ロウリア艦は次々と沈められていき、港湾施設も次々と破壊されていく。

 

 

「撃ち方やめ!我々の夜襲戦はここまでだ!戦域より離脱する!」

 

「全速離脱っ!」

 

 

 

 

戦闘開始から30分程で、ハーク港とロウリア艦隊に甚大な被害を負わせた第23、24水雷戦隊はハーク湾からの脱出を図る。

 

 

 

「司令!後方より艦影あり!」

 

「数は?」

 

「大型10、中型30が追尾してきます!」

 

「応戦しますか?」

 

「いや。あそこの火がまだ残っている箇所へ誘い出せ。我々は炎の中を突っ切る!」

 

 

 

戦域を離脱しようとする水雷戦隊を、偶々無事だったロウリア艦が追尾に入るが、最大速力37ノットを誇る雪嵐級の速度には追い付けず振り切られ、挙句の果てには、油槽魚雷による火が残っていた場所へと誘い出されたロウリア艦隊は炎の中を潜り抜ける水雷戦隊を追い掛けて自らも炎の中に飛びこみ、自滅した。

 

 

 

 

「何とか振り切れたようだな。後は高杉艦隊に任せよう。」

 

「はい。」

 

 

任務を終えた水雷戦隊は、元来た方向へ向けて水平線の彼方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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