後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第17話

混乱するハーク港上空を通過した光武隊は、ハーク港の南にあるワイバーン基地近くへと近づいていた。

 

 

『見えたぞ!あれだ!』

 

 

光武隊の目の前に、高い木柵に覆われ牧場程の広い土地に設けられたワイバーン基地が見える。

光武隊は攻撃態勢に入る。

 

 

『第1小隊、対地攻撃噴進弾発射用意……撃てぇ!』

 

 

光武10機から対地攻撃噴進弾が発射され、基地の見張り所と司令塔を破壊した。

 

 

 

『続いて第2小隊上昇っ!突入っ!』

 

 

後ろに控えていた第2小隊の光武20機は、高度を上げて基地上空から爆弾の投下態勢に入る。

 

 

『投弾用意……投下っ!』

 

 

光武の主翼下とパイロンから、滑走路破壊爆弾と通常爆弾が一斉に投下され、兵舎、竜舎、滑走路、武器庫を次々と破壊し、基地機能を奪った。

 

 

 

「敵襲っ!直ちに竜を上げろ!」

 

 

偶々、爆撃から難を逃れた竜騎士達が無事だったワイバーンに乗り込み飛び立とうとする。

 

 

『やらせるかっ!』

 

 

数機の光武が降下し、飛び立とうとしていたワイバーンに向けて機銃掃射を加える。

 

 

 

「うわぁっ!!」

 

「ギャッッッ!!」

 

 

機銃掃射を受けたワイバーンは身体中を穴だらけにされ、飛び立とうとした瞬間にバランスを崩し乗っていた竜騎士ごと押し潰すように墜落する。

光武による奇襲攻撃でワイバーン基地は機能を完全に奪われ、基地にいたワイバーン述べ百十数匹、竜騎士約200名が死傷、滑走路は使用不能となり、ハーク港一帯の航空戦力は無力化された。

 

 

 

 

その頃、ハーク港では湾内に侵入を図ろうとしていた高杉艦隊とそれを迎え撃つロウリア艦隊の残存艦との艦隊戦が行われようとしていた。

 

 

「全艦砲撃戦用意よし!」

 

「全艦撃ち方始めっ!」

 

 

比叡の砲撃開始と同時に、高杉艦隊とロウリア艦隊の戦闘が開始された。

だが、この時点でロウリア艦隊は高杉に対して圧倒的に不利な状況にあり、大砲の類いを装備していないロウリア艦隊はアウトレンジからの砲撃に晒され、その数を一気に減らしていく。

 

 

(何なんだこの攻撃はっ!?奴等が使っている大砲は、あの距離から撃って届くのかっ!?これでは勝ち目など無いではないかっ!!)

 

 

シャークンは次々とやられていく味方船の惨状を見て、もはや勝つどころか、戦う事すら不可能となっている事を悟る。

 

 

(最早これは戦などではない…………これまでか……)

 

 

意を決したシャークンは降伏を考えた。

 

 

 

その瞬間………

 

 

比叡から放たれた砲弾が直撃し、シャークンは爆風で船から放り出され海へと落ちた。

 

 

 

「ブハァッッ…………………」

 

 

何とか漂流物に捕まったシャークンは、砲撃で燃え上がる艦隊を目にする。

 

 

 

(終わったな………これで俺は敗将か…………)

 

 

 

全てのロウリア艦が湾の藻屑と消え、戦闘を終えた高杉艦隊からの砲撃は止み、高杉艦隊が入ってくる。

 

 

「何て大きさだ…………あのパーパルディアでもこんな軍船は持っておらんぞ…………」

 

 

近寄ってくる比叡や他の艦船の偉容にシャークンは戦慄した。

高杉艦隊の艦船は湾内に入ると速度を落とし、漂流していたロウリア水兵の救助を開始する。

 

 

「おいっ!大丈夫かぁ!?」

 

「あ……あぁ……」

 

 

無論シャークンも救助に参加する駆逐艦の乗員に救助され、内火艇に乗せられる。

 

 

「貴君達は……クワ・トイネ軍なのか?」

 

 

シャークンは側に居た駆逐艦の乗員に問い掛ける。

 

 

「いや、俺達は日本海軍だ。」

 

「ニホン…………そうか………そう言う事だったのか………」

 

 

彼はそこで始めて、相手の正体を知る。

 

 

(数か月前に、巨大な船で我が国にやって来たニホンと言う新興国家の特使がやって来たとは聞いていたが……まさかクワ・トイネはこの者達を味方に付けていた訳だな。海戦は始めから勝ち目など無かったと言う事か……)

 

 

そう思ったシャークンは、極度の疲労から意識を失い、医務室へと収容された。

 

 

 

「司令、間も無く有効射程距離に入ります」

 

「それでは、作戦の仕上げと行こうか。砲撃用意!」

 

 

比叡以下の戦艦、巡洋艦は作戦の仕上げとなるハーク港と港湾設備の無力化のため艦砲射撃の態勢に入った。

 

 

「撃ち方始め!」

 

 

轟音と共に大小様々な砲弾が撃ち出され、港湾設備や陸上の海軍本部の建物に砲弾が雨あられのように降り注ぐ。

 

 

「敵港、炎上中!被害は甚大の模様!」

 

「司令、この辺でよろしいかと」

 

「うむ。此処からは彼らの出番だな」

 

 

 

砲撃が終了すると同時に艦隊の後方に待機していた輸送船から上陸挺が次々と降ろされ、完全武装の兵員が乗り込み、次々とハーク港へ向けて進撃する。

 

 

「別世界に来て早々に任務とはな」

 

 

輸送船から上陸挺の発進を見守っていたのは日本海軍水陸両用部隊を率いる『九鬼鷹常』中将だ。

アメリカ海兵隊をお手本に創設されたこの旅団は彼の名前を取り『九鬼旅団』と呼ばれており、今回の作戦ではハーク港とワイバーン基地の制圧を担当し、敵地上戦力分散と同時に敵首都への圧力を掛ける今作戦の中核を担っている。

 

 

「旅団長、間も無く上陸第1陣が敵地へと上陸します!」

 

「航空部隊との連絡は密にしておけ。この戦は空からの支援が重要だからな」

 

「はっ!」

 

 

九鬼旅団の上陸第1陣を勤める先遣隊を乗せた上陸挺は上陸地点に設定された船舶用埠頭へと押し寄せる。

 

 

「接岸用意!」

 

 

上陸挺に乗っていた兵員は整備された埠頭へ接岸すると用意していた梯子を橋代わりに掛け、破壊を免れていた桟橋や石階段を確保すると上陸態勢に入った。

 

 

「突撃ぃ!」

 

「「「「「ヤァァァァァァァァァァァァ!!!」」」」」

 

 

 

指揮官の合図で兵員は銃を構えながら一気に駆け出し、上陸していく。

艦砲射撃により甚大な被害を受けていたハーク港の防衛戦力は壊滅状態ではあったものの、上陸してくる九鬼旅団を迎え撃つため最後の抵抗を試みる。

 

 

「敵襲だ!敵が乗り込んできたぞ!」

 

「石でも棒でも何でもいい!兎に角武器を持て!」

 

 

ロウリア兵は各々で武器を手に持ち、向かってくる九鬼旅団の部隊に挑んだ。

 

 

「敵が来た!撃て!」

 

 

九鬼旅団の兵員達は手にしていた小銃を使用し応戦する。軽機関銃と重機関銃による援護射撃を受けながら九鬼旅団は前進速度を緩める事なく、車両も上陸した事により、旅団は僅か1日足らずでハーク港とワイバーン基地を制圧した。

 

 

 

 

 

 

数時間後、ハーク港は高杉艦隊の艦砲射撃によって完全に港としての機能を失い、事実上ロウリア海軍は壊滅した。

この出来事は直ちにハーク・ロウリアの耳にもたらされ、ロウリアの首脳達は直ちに緊急会議を開いた。

 

 

 

「海軍は壊滅し、ハーク港すらも壊滅してしまい敵の手中に落ちてしまった…………」

 

「陛下、直ちにハーク港奪還のために軍を編成致します。どうかご許可をお願い致しま……」

 

「失礼します!」

 

 

パタジンの言葉を遮るように、伝令役の軍人が会議場へと入ってくる。

 

 

「東方征伐軍が、クワ・トイネ侵攻の準備を完了したとの報告あり!」

 

 

この報告にロウリアはハーク港奪還か、クワ・トイネ侵攻のどちらを優先すべきか迷う。

 

 

(どうする?ハーク港奪還よりマイ・ハークへの侵攻を優先するべきか………………)

 

 

暫く考えた後にハーク・ロウリアは立ちあがり裁量を下す。

 

 

「諸君!今はクワ・トイネ侵攻を優先する!東方征伐軍以外の戦力は王都防衛に回し港方向からの敵侵攻に備えよ!この戦、何としても勝利せよ!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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