後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第21話

中央歴1639年4月30日 ギムの町

 

 

ギムを起点に公国内に居たロウリア軍の排除に成功した鍬十稲派遣軍とクワ・トイネ軍の連合軍は、本部をダイタル平野からギムへと移し、次の作戦に向けての準備と、戦闘で破壊された町の建物と石畳の修復に追われていた。

 

 

町の各所では派遣軍の重機や工兵、公国兵達が共同で建物の修復に合わせて、連合軍本部となる商店を改造した建物の整備と通信アンテナ、無線機、発電機の設置を行っていき、町を守るための防護壁と対歩兵壕を構築していき、ちょっとした城塞都市と化していた。

 

 

 

「僅か数日でギムを様変わりさせるとは……まさに日本軍様様だな。」

 

 

モイジ団長は、つい先週のギムと今のギムを見比べて言う。

 

 

「モイジ団長!熊谷将軍とノウ将軍がお呼びです!」

 

「分かった。」

 

 

モイジは本部が置かれた建物へと足を運ぶ。

 

 

「失礼します。」

 

 

建物の奥にある司令官室へと入ると、熊谷とノウの二人が互い合わせに座っていた。

 

 

「来たか。まぁ座ってくれ。」

 

 

ノウに促され、適当に空いている椅子に座る。

 

 

「では、今後の事についてお話しします。先ずは確認のために、我が国は此度のロウリア軍による貴国への侵攻を指示した首謀者の逮捕と拘束を第一目的としています。」

 

「心得ている。」

 

「我が軍としては成るべく敵との戦闘を避けて、少ない犠牲で首謀者を拘束したいと考えています。」

 

 

 

熊谷の言葉にノウが息を吐く。

 

 

「しかし熊谷将軍、件の首謀者は間違いなく国王のハーク・ロウリアだ。首都のジン・ハークはロウリア軍の王都防衛軍約10万が控えている上に、王都への道程には城塞都市や多数の兵も待ち構えている筈だ。やるとしたらワイバーンが到達できない超高高度から王都へ直接突入するしか方法が……正直、我々のワイバーンでは…」

 

「ワイバーンには不可能かもしれませんが、我々の航空機でなら可能です。」

 

「なんと!?それは本当なのか?」

 

「はい。詳細は極秘につき詳しくはお答え出来ませんが、我が国の"特務部隊"が首謀者の確保を行います。」

 

「では我々はどうするので?」

 

「我々の戦力で攻めるなら、王都東側の工業都市ビールズが妥当だと考えるが………」

 

 

ノウの意見に熊谷は首を横に振る。

 

 

「いえ。我々は特務部隊の突入の際に、敵の注意を引き付けるために敵首都の北より接近し敵軍と正面から交戦します。作戦としては我々はビールズに対して海軍航空隊による爆撃と砲兵1個連隊による攻撃を仕掛けます。そうすると敵はビールズへと兵力を集中させ、首都やその近辺の敵の注意はそちらに向くと思われます。その隙を突いて我々本隊は首都の北より攻撃を仕掛けます。」

 

「成る程……敵の兵力と注意をビールズの一ヶ所に集めさせて、実は首都に攻撃を仕掛ける………これは実に凄い作戦だな。なら作戦名をつける必要があるな。」

 

「我々はこの作戦を『背後霊作戦』と命名しています。相手の目が自分達に向いている隙に背後から霊が取り繕く………」

 

「まさに背後霊そのものだな。よし!では我々は準備に取り掛かりましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の深夜

 

 

場所は変わって日本国茨城県の土浦飛行場では、ロウリア王国の国王ハーク・ロウリア拘束のため、秘策が用意されていた。

 

 

「各員、搭乗始めっ!」

 

 

飛行場の水上機発着場の海上に鎮座する大型の航空機に、短機関銃と空挺用パラシュートを装備した一団が乗り込んでいく。

 

 

 

「総員搭乗確認っ!」

 

 

 

搭乗口が厳重に閉められ、搭乗員が各所の点検を行う。

 

 

 

「1番から6番までの全エンジン点検終了。異常なし。」

 

「機体底部、滑走板異常なし!」

 

「了解。全エンジン、発動機回せ!」

 

 

長い主翼上に装備されている強力なジェットエンジンが唸りを上げて、回転数が上昇し、エンジンノズルから熱が排気され陽炎が上がる。

 

 

「エンジン油温正常。3500回転でタービン安定。」

 

 

海面に浮いていた機体がゆっくりと進み始め、エンジンの出力が上昇していくと同時に機体の速度が上がり徐々に加速していく。

 

 

「滑水開始!」

 

「エンジン出力上げます!」

 

 

海面を滑っていた機体は水上滑走を始め、機首が上を向く。

 

 

「フラップ下げ。滑走板固定っ!」

 

「補助揚力装置起動!リヒート点火!離水っ!」

 

 

エンジン出力が最高に達し操縦桿が引かれると、機体は海面を一気に飛び上がる。

 

 

 

「速度200ノット。」

 

「高度3000まで上昇。」

 

 

 

土浦飛行場を飛び上がった超大型輸送飛行艇『白鳳』は、陸軍特殊遊撃師団『霞部隊』を乗せて、ハーク・ロウリア拘束のため、ロウリア本国へ向けて飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

続く




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