後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

22 / 130
第22話

中央歴1639年4月27日 深夜

 

 

背後霊作戦発動に備えて、ギムで待機していた夜豹師団とクワ・トイネ連合軍は2手に別れて、それぞれの場所へと向かう。

工業都市ビールズ攻撃には海軍の4個航空隊のうち2個飛行隊約20機と第31砲兵連隊と歩兵1個連隊、公国軍歩兵5個連隊の約15000人が向かい、王都には連合軍本隊が向かう。

 

ビールズと王都方面へ向かう連合軍の頭上には海軍航空隊所属の電子作戦機『星鵬』4機が高度5000より、逐一偵察を行っており、作戦の要の一翼を担っている。

 

 

『エノケンよりバンツマへ、舞台前座用意完了。』

 

「こちらバンツマ了解。前座を始めてくれ。」

 

『了解。前座始めます。』

 

 

攻撃開始の合図と共に、ビールズ近郊に待機していた砲兵連隊の榴弾砲から榴弾による一斉砲撃が開始される。

 

 

 

『弾着……今っ!』

 

 

 

同時に100発近くの榴弾がビールズを囲む城壁に着弾し、粉々に吹き飛ばす。

 

 

『こちら前進観測班、客席にお客様が入場しつつある。追加の演劇を用意してくれ。』

 

『了解。』

 

 

再び砲撃が開始され、今度は城壁を飛び越えてビールズの工業地帯付近に着弾する。

 

 

『更なる演劇は大盛況。』

 

『こちらバンツマ、予定通り演劇を続けてくれ。』

 

『了解。』

 

 

移動指揮所となっている6式指揮装輪装甲車の車内で熊谷は別働隊との無線を切る。

この移動指揮所と言える車両には、各部隊との連絡をとるための高性能無線機が揃えられており、星鵬からの偵察情報と照らし合わせて作戦進行のための判断が行われる。

 

 

「熊谷将軍、我々はまだ動かないのか?」

 

「まだです。敵の注意が完全にビールズに向くまでは。」

 

 

既に闇夜に紛れて王都より北の50㎞の国境地点にまで近づいてきていた連合軍本隊は、その身を隠すように森の中に息を潜めていた。

 

 

 

 

 

別働隊の攻撃開始から2時間近くが経過した頃、熊谷の予想は図に当たった。

 

 

 

『こちら宙乗り、お客様は舞台に入場終了。客席は満員なり。』

 

『こちらエノケン。お客様との握手会を始める。』

 

 

ビールズ方面の上空に居た海軍航空隊所属の電子作戦機星鵬と別働隊からの報告が入ると熊谷は直ぐに判断を下す。

 

 

「よし!我々本隊も動く!各隊に前進と攻撃用意を伝達っ!」

 

 

 

作戦通り、本隊に所属する部隊は一斉に動き出す。

 

 

 

 

 

その頃、ジン・ハークのハーク城内の会議室では、王国首脳部達が紛糾していた。

 

 

「敵軍の"主力"はビールズに対して攻勢を掛けてきました!」

 

「やはり敵の狙いはビールズに間違いなかった!直ぐに兵力をビールズに向けさせよ!王都防衛軍と竜騎士隊も向かわせろ!」

 

「しかしパタジン将軍、それでは王都の防衛と防空が手薄になってしまいますが………」

 

「構わん!何としても敵を殲滅するんだ!」

 

 

連合軍別働隊によるビールズ攻撃を敵の本隊による攻撃と勘違いしたパタジンは兵力の半数近くをビールズへと送り込むように指示し、命令を受けた部隊は次々とビールズへと向かう。

 

 

「よし、後は数で押せば必ず勝てる。」

 

 

パタジンはこの時、心中には余裕があった。

たとえ敵が報告通りの強さを持っていたとしても数では此方が勝っているため、消耗戦になったとしても物量ではロウリアが勝っているため物量戦に持ち込めば勝てると信じていたからである。

 

 

しかしこの判断が後に彼の足元を大いに掬う事になる………

 

 

 

「将軍!大変です!」

 

「どうしたんだ?」

 

「たった今、王都より北方から敵軍が迫ってきているのを確認しました!」

 

「何だとっっっ!!!!」

 

 

 

その報告にパタジン以下の幹部らの表情が硬直する。

 

 

 

「それは本当なのかっ!?」

 

「間違いありません!既に敵は王都に迫る勢いで向かってきています!」

 

「奴等の狙いはビールズでは無かったのか!?クソっ!謀られた!」

 

「如何いたしますか?」

 

「直ちに竜騎士団と王都防衛軍主力に戦闘態勢を取らせろ!」

 

「しかし将軍、王都にいた防衛軍の大半はビールズに向かっており、既にビールズに到着しつつあります。今残っているのは最低限の兵力しかありません。」

 

「増援に向かった部隊を呼び戻せ!残りの戦力の準備はどうなってる?」

 

「全力で出撃準備を行っていますが間に合いますかどうか……………」

 

 

 

王都に残っていた防衛軍1200と竜騎士団の15騎は全力で出撃準備を整え、北方の城壁へと向かう。

 

 

 

「急げ!何としても敵を食い止めるんだ!」

 

 

地上を移動する防衛軍に先行して竜騎士団15騎全てが、敵の偵察と攻撃のために飛んでいくが、城壁を越えて連合軍本隊の上空に差し掛かった直後に、竜騎士団は本隊の自走高射機関砲による機銃掃射を受けた。

 

 

「ウワァ!やられた!落ちる!落ちる!」

 

「何なんだこの攻撃はっ!?」

 

 

曳光弾が放つ光の火線は竜騎士団のワイバーンを絡め取っていき、残りのワイバーンも激しい機銃掃射により全く近づけなかった。

 

 

 

「制空隊、突入っ!」

 

 

自走高射機関砲の攻撃開始に合わせて、上空援護の電征が竜騎士団の真上からダイブするように現れ攻撃を仕掛け、竜騎士団は全滅し、本隊は制空権を確保した。

 

 

 

「砲兵隊と戦車隊には前方に見える城壁を破壊するように伝えろ。」

 

「既に準備は出来ています。いつでも攻撃可能です。」

 

「よし、攻撃を開始せよ。」

 

「了解。」

 

 

 

数分後、本隊から城壁に向かって高射砲と戦車による砲撃が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロウリア軍の注意と目が連合軍に向いている頃、王都より西の上空3000メートル上空へ、白鳳が迫ってきていた。

 

 

「よし!そろそろ降下地点だ。各員は装具点検の後に降下用意!」

 

 

機内の霞部隊は座席から立ち上がりパラシュートや各々の武器の点検を済ませて、酸素マスクを着用し、乗員によって開かれたドアへと近付きパラシュートから伸びるワイヤーにフックを繋ぐ。

 

 

「降下用意……………降下っ!!」

 

 

 

 

合図と共に霞部隊の隊員達は一斉に降下を開始し、次々と暗闇の空にパラシュートが開いていき、真下の王都に向かって降りていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




皆様からのご意見とご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。