白鳳から降下した霞部隊は高高度からパラシュートにより、ジン・ハークに聳え立つハーク城へ向かって降下していく。
「見えた……あれがハーク城か。」
霞部隊を指揮する『千葉州作』少将は、眼下に見えるハーク城を見て呟く。
高度500メートルを切った辺りから月夜により、ハーク城の詳細が見えてくる。
「あれじゃ灯台と一緒だな。」
普段なら厳重に警備されているハーク城であるが、パタジンの命令で警備隊の一部が王都防衛軍の戦力として引き抜かれているため警備の数は最低限しか残されていなかった。
霞部隊は風向きを読んでパラシュートの向きを調整し、ハーク城の南にある裏庭へと向かう。
「敵兵か?」
裏庭には偶々警備の兵士が数名が居た。
千葉は腰のホルスターからサイレンサー付きの拳銃を取り出し、下の兵士に向けて構える。
「許せよ。」
呟きと同時に空気が破裂したような音と共に、狙われた警備兵が糸が切れた人形のように倒れる。
警備兵を始末した霞部隊は無事に裏庭に着地し声を出さずハンドサインのみでの命令伝達を行い、二手に分かれて城内へと浸入する。
「蝋燭の光だけが頼りか………」
城内は天井や柱の受け皿に設けられた蝋燭の火がボンヤリと廊下を照らす。
「確かクワ・トイネの諜報員が持ち帰った城内の見取り図だと………………目標が居るのはこの先の突き当たりか………」
千葉達、第1小隊は見取り図に従って廊下を足音立てずに進む。
「見えた……あのドアだ。」
やがてハーク・ロウリア34世の居室前近くへとたどり着くが、ドアの両脇には衛兵が立っている。小隊は光が当たっていない壁際へと身を隠す。
「二人か……始末するぞ。」
千葉ともう一人の隊員がクロスボウを構え、千葉が右、もう一人が左の衛兵を狙う。
「グァッ!」
「ガハッ!」
放たれたクロスボウの矢は同時に衛兵の首に突き刺さり、一瞬で絶命させる。
「行くぞ。」
衛兵を始末し、辺りに人が居ない事を確認しドアに近付き、ドアの鍵に針金を挿し込み解除を試みる。
「もう少しだ……………よし開いた。」
鍵を解除しゆっくりとドアを少しだけ開けて中を覗き込む。
「居たぞ……目標は寝ている。」
中にハークが居るのを確認し、腕時計を確認する。
「もうそろそろだ、第2小隊の連中が陽動を始める頃だな。」
その直後、何処からが派手な爆音が響き、廊下の窓が衝撃波で割れ、置かれていたアンティーク調の丁度品が倒れる。
「アイツら、また派手にやったな。じゃあこちらも行くぞ!」
千葉はその場で立上がり、扉を蹴破ると中に突入する。
既に爆音で目が覚めて体を起こしていたハーク・ロウリアは、突入してきた霞部隊の姿を見て唖然となる。
「貴方がロウリア王国国王のハーク・ロウリア34世だな?」
「あ、あぁ………」
「我々は日本国の者だ、貴様を公国への侵攻を指示した首謀者として拘束する………が、その前に全軍へ向けて停戦命令と降伏勧告を出してもらおう。」
そう言うとハークは何ら抵抗する素振りも見せず、大人しく千葉の言う事に従う。
それから一時間後、広域通信用の魔信によってハーク自らロウリア全軍に戦闘停止命令と、降伏命令が王命として流され、連合軍と戦闘を行っていたロウリア軍は全て降伏し戦闘は終結した。
続く
次話は、"ある国"の諜報員視点のお話です。
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