後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

26 / 130
第26話

フェン王国 首都アマノキの上空

 

フェン王国の同盟国『ガハラ神王国』の風竜騎士団長スサノウは、フェンより軍祭に招かれて首都上空を飛行していた。

 

 

「見ろよあれ。最近なにかと噂の日本の軍船だぜ……なんて大きさだ。」

 

 

アマノキ湾の沖に集まっていた文明圏外各国より招かれた水軍や海軍の船が停泊していたが、その中でも一際目立つ船がある。

日本より派遣されてきた坂元艦隊旗艦『長門』以下の坂元艦隊に所属する艦艇は、回りに居る船の中でも大きさと規模が桁違いである。

 

 

『まぶしいな。』

 

 

ふとスサノウが乗り込む、人間並み知能が非常に高い風竜が話し掛ける。

 

 

「そういえば今日は良い天気だな。」

 

『いや、そういう意味で言った訳ではない。あの鉄船から線状の光が辺りを照らしている。』

 

「光?俺には見えないぞ…」

 

『人間には見えない不可視の光だ。あれは我が同胞と会話をする際に使う光と特性が似ているんだ。あれは恐らく回りに何があるのかを確認するための物だろう。』

 

「どれくらいまで見えるんだ?」

 

『個体差もあるが、ワシのは100㎞程先までは届く。だがあの船一つ一つが発してる光はワシの物より遥かに強く、遠くまで届いているようだ。』

 

 

スサノウは相棒の言葉により驚きの表情を浮かべる。

 

 

「とんでもない国のようだな………日本国ってのは……」

 

 

 

上空ではそんな会話がされている事など知る由もない戦艦長門の艦橋で、坂元は通信室からの報告を受ける。

 

 

「信じられんな……本当なのか?」

 

「はい。電測室からの報告では本艦の上空を飛んでいる竜からレーダー波と似たような電波が照射されています。計測結果からも、かなりの出力と思われます。」

 

「うむ………やはりこの世界は我々の常識を遥かに上回る物で満ちているのだな。」

 

 

 

坂元は空を飛んでいる風竜を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、港ではシハン以下の首脳達が単眼鏡で坂元艦隊を観察していた。

 

 

「あれが日本の軍船か………まるで城をそのまま海に浮かべたかのようだ。」

 

「ガハラからの事前情報で理解していたつもりでしたが、木を使わずにあれ程の巨大船を何十隻も保有している日本には驚かされます。」

 

 

フェン王国騎士団長のマグレブも同意を示す。

 

 

「私も一度パーパルディア皇国に行って、彼らの船を見た事はありますが、日本の船はどれを取っても皇国の物より巨大です。」

 

 

彼等の視線の先に居る長門と秋月型対空駆逐艦数隻は、フェンが用意した廃船10隻に向けて砲撃の準備を行う。

 

 

「おぉ……始まるぞ。」

 

 

各艦は割り当てられた目標へ向けて砲を旋回させ、射撃準備に入る。

 

 

「剣王様、間もなく日本海軍の軍船による攻撃が開始されます。」

 

 

 

先ず最初の砲撃は長門が行う。

長門に装備されている4基の41㎝連装主砲が旋回し、砲身を廃船に向け凄まじい轟音と衝撃波と共に長門から8門の41㎝砲による斉射が行われた。

 

 

「グウッ!」

 

 

主砲発射で発生する衝撃波は遠く離れた場所に居たシハンの部下や家臣達に尻もちをつかせ、シハン自身も衝撃波に耐えるため足に力を入れて踏ん張る。

 

 

「おぉ…」

 

 

目の前には巨大な水柱が8本上がり、水柱が収まると吹き飛ばされた5隻の廃船の残骸が海面を漂流している。

それに合わせて、秋月型からも対空砲による一斉連続砲撃が始まり、残りの廃船は船体の至る所を穴だらけにされて粉砕される。

 

 

 

「声も出ないな……なんとも凄まじい。」

 

「剣王様、これならあのパーパルディアにも対抗できるのでは?」

 

「間違いない。よし!直ぐにでも日本との不可侵条約と安全保障条約を結ぶんだ!それも早急にな!」

 

「はっ!」

 

「日本には我が国安泰のために、人柱になってもらおう………」

 

 

剣王はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間が経過した正午頃……

 

 

「ん?」

 

 

長門のレーダー室で対空レーダーディスプレイを見ていた電測員が何かに気がつく。

 

 

「西からか?」

 

 

長門に装備されている対空レーダーが西の方角から飛んで来る飛行物体を捉え直ぐに報告を入れた。

 

 

「飛行物体は速度188ノットで当艦隊に接近。距離5000、数20。」

 

「うむ……参謀長、確か西の方角と言えばパーパルディア皇国と言う国があったな?」

 

「はい。」

 

「この祭に招かれているか確認を取ってくれ。どうにも嫌な予感がする。」

 

 

 

坂本の勘は当たっていた。

 

 

 

アマノキへ接近して来ていたのは、パーパルディア皇国の監察軍東洋艦隊所属の竜騎士団所属のワイバーンロード20騎の編隊だった。

彼等は皇国上層部より、フェン王国と軍祭に招かれていた文明圏外国に対する懲罰攻撃と見せしめのため、フェン王国の西からアマノキ湾へと迫っていた。

 

 

 

 

「全騎に告ぐ!ガハラの民には絶対関わるな!フェン王国と軍祭に来ている蛮族の国と…………あそこに居る巨大船を狙え!」

 

 

ワイバーンロード隊は上空で2手に分かれて散開し、フェンの王城と長門に向かって突っ込む。

 

 

「上空の竜、本艦に向けて降下してきます!」

 

「まさか………対空戦闘用意っ!」

 

「長官っ!?」

 

「これは演習ではない!甲板の乗員を待避させよ!」

 

「了解っ!」

 

「艦長!回避だ!」

 

「了解っ!」

 

 

坂元の指示で甲板に居た乗員は慌てて艦内に逃げ込み、間に合わない者は遮蔽物へと退避し、回避のためガスタービンエンジンを始動させて回避に移る。

 

 

「敵対空目標、攻撃の兆候あり!」

 

 

この報告の直後、長門に向かってきたワイバーンロード10騎から一斉に火球が放たれ、長門に降り掛かる。

 

 

「敵弾、艦首甲板に直撃っ!火災発生っ!」

 

「消火急げっ!」

 

 

火球は長門の艦首に直撃し、木製の甲板に炎があがり黒煙が沸く。

 

 

「長官っ!」

 

「正当防衛だ!対空戦闘、撃ち方始めっ!」

 

「撃ち方始めっ!」

 

 

直ぐ様、長門と秋月型から対空砲による攻撃が始まり、レーダー連動と近接信管による飽和攻撃で、ワイバーンロード10騎は瞬く間に撃墜される。

 

 

「敵対空目標10騎、撃墜確認!残りの10騎はフェンの王城へと攻撃を行い、城は炎上しています!」

 

「護衛の駆逐艦に残りの対空目標の迎撃を下命っ!次は港に居る人が狙われるぞ!」

 

「はっ!」

 

 

坂元は港に居る外交官と民間人の安全を優先し残りのワイバーンロードの迎撃を指示した。

命令を受けた秋月型駆逐艦は全力砲撃を行い、僅か1分程で全て撃墜した。

 

 

「敵対空目標全て撃墜っ!」

 

「外交官殿の安否を確認!各空母に上空直掩機と偵察機の発艦を下命っ!」

 

 

直ちに、待機していた空母から嶺花と電子偵察機『飛鴎』が飛び立ち、周囲の警戒行動に移る。

 

 

 

 

 

 

 

続く




皆様からの、ご意見とご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。