後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第27話

「なんと言う事だ…………」

 

 

港から一連の戦闘の様子を見ていた島田は呆然となる。

軍祭にいきなり現れた正体不明の竜騎士編隊の襲撃で、王城と長門に被害を受けたが、坂元の冷静な判断で何とか事なきを得たものの、他国の争いに巻き込まれてしまった。

本来なら国交を結ぶ前で、互いにピリピリした状況下でのこの結果は重大な外交問題であるが、もし坂元艦隊が反撃してなければ艦隊どころか、港に居た島田自身の命も危なかったかもしれない。

 

この状態では坂元長官や艦隊将兵を責める訳にはいかないし、幸いにも剣王や家臣、港に居た民間人達は諸手を挙げて喜んでいる。

 

 

 

(もしかしたら剣王はわざと我々を戦争に引き込むつもりか?)

 

 

島田は剣王達の態度を見て、直感的にそう感じる。

坂元艦隊のフェン王国の軍祭への誘い、しきりに安全保障に関する条約締結を優先………どう考えてもその結論にたどり着く。

 

 

(やられた!剣王が安全保障に関する条約と坂元艦隊をここに呼び寄せた理由がこれだったと言う事か!)

 

 

 

無論証拠は無いが、島田は真実を確かめるべく、再びフェン側との会談の場を設ける。

 

 

 

「日本の皆様、今回は我が国を不意打ちせんとした不届き者を、その見事なまでの力で成敗して頂き感謝を申し上げます。」

 

 

まずはマグレブが島田に礼を一言を述べて頭を下げる。

 

 

「いえ。我々は飽くまで自身の防衛に勤めただけであり、貴国への攻撃を追い払った訳ではありません。」

 

 

取り合えず牽制の言葉を述べる。

だが、是が非でも日本を味方に引き入れたかったフェン側はその言葉に意に介さず話を進める。

 

 

「では早速、我が国と貴国との間で国交開設のための事前協議を進めていきたいと思うのですが……」

 

「その前に、貴国は既に戦争状態にあるのではないですか?状況が変わりましたし、私の権限だけでは戦争状態にある貴国との国交開設準備ができません。この件に関しましては一度本国へと帰還し、内容を詰めてから再度ご連絡いたします。」

 

 

 

島田はフェン側から何か反論があるかと思ったが、返ってきたのは以外な言葉だった。

 

 

「解りました。良いお返事を期待しております。ただこれだけは言っておきたい事があるのです。」

 

「?」

 

「貴国も薄々感付いているとは思うのですが、襲撃してきた不届き者は第3文明圏最強のパーパルディア皇国です。今回の襲撃についての理由の検討はついています。」

 

「それは如何なものでしょうか?」

 

「我が国はつい先日、パーパルディアより領土の献上という一方的な要求を突きつけられ、それを拒否しました。恐らく襲撃してきたのは、自国の言い分を聞かない国家に対する懲罰攻撃による見せしめと考えられます。」

 

 

その言葉を聞いて島田はパーパルディアがどのような国家であるかの想像がついた。

 

 

(第3帝国みたいだな)

 

 

その後、フェン側から語られたパーパルディア皇国の実態について聞かされた島田は背筋の凍る思いが込み上げてくる。

 

 

(パーパルディア皇国に攻め滅ぼされた国は数知れず……それどころか滅ぼした国の国民は軒並み奴隷となり、王族やその関係者も皆殺し……… やってる事が益々ナチスじゃないか!)

 

 

「以上が皇国についての説明です。あの国は列強と言う名声を傘に強いプライドを持った国だと言う事をお忘れなきよう……」

 

 

あまり気持ちのいい話ではない事を聞かされた島田達は、今後の事について少し話した後、本国へと帰還するため会議場を後にした。

 

 

 

 

 

 

残された剣王はマグレブに耳打ちする。

 

 

「マグレブよ…彼等を決して帰してはならん。足止めの準備は出来ているか?」

 

「はい。既に日本の軍船の1隻に我が国の影達を仕向けました。」

 

「よし……それでいい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アマノキの港の浅瀬近くで停泊していた坂元艦隊所属の秋月型駆逐艦『清月』では、島田の迎えのため出港準備が行われていた。

 

 

「ん?」

 

 

ふと甲板で作業をしていた乗員の一人が、海面を何かが跳ねたような水音と波紋を見つける。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「いや……今そこの水面に何かが居たような……」

 

「魚でも跳ねたんだろ?気にするな。それよりも、辺りに浮かんでる残骸とか漁網とかさっさと退かせよろ。万が1スクリューに網が絡まったら大変だからな。」

 

「了解。」

 

 

気にせず作業に戻る乗員達。

だが、彼等の目の前の海面から1メ-トル下には、複数の影が潜んでいた。

 

 

(………)スッ

 

(………)スッ

 

 

彼等は下着一枚で見通しの悪い水中をハンドサインのみで華麗に移動し、残骸に紛れて海中に浮かんでいた古い漁網を清月のスクリュープロペラとシャフトの間の溝に絡ませる。

単純な作業を終えた影達は素早く清月から離れていく。

 

 

 

そんな事を露知らず、城から戻ってきた島田達は清月に乗り込む。

 

 

「機関長、機関始動。」

 

「了解。機関始動っ!」

 

 

機関長の合図でスターターが掛けられるが、エンジンが掛かり、スクリューシャフトへとギアを繋ぐ。

 

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「艦長、変です。スクリューが回りません!」

 

「何?もう一度ギアを入れ直してみろ!」

 

「はい。」

 

 

もう一度ギアを入れ直すが、スクリューシャフトは一向に回らなかった。

 

 

「艦長、大変です!スクリューに漁網が絡まっています!」

 

「何だと!直ぐに取り除け!」

 

「ですが、今から作業をしても取り除けるのに数時間は掛かります。」

 

「数時間………不味いな、接近中の不明艦隊から待避するは間に合わんかもしれん。」

 

 

さっさとここから待避したいと焦っていた外交官と乗員達は少し議論し、結局は坂元長官の提案で島田達は日本政府に事の次第を連絡、高野は大高に指示を仰ぐ。

 

結論は直ぐに出され、航行不能となった清月を曳航するにしても1時間後には敵艦隊が到達すると予想されたため、坂元艦隊には清月曳航の時間稼ぎのため極力戦闘を回避するように勤め、それが不可能なら自衛のみでの武力行使を行うよう指示が出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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