後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

29 / 130
第29話

坂元艦隊の空母から飛び立った攻撃隊は、海面スレスレの低空飛行で敵艦隊へと迫っていた。

 

 

「索敵電探探知。全機、対艦噴進弾発射用意!」

 

 

光武隊は翼下の対艦噴進弾の発射態勢を整える。

 

 

「発射っ!」

 

 

攻撃隊全機から放たれた噴進弾は、真っ直ぐ西の方角へ向けて飛び去っていくのを確認した攻撃隊は任務を完了し引き返す。

 

 

 

 

 

 

フェン王国アマノキ沖150㎞地点にまで接近してきていた東洋艦隊司令のポクトアールは、東の方角を睨んでいた。

 

 

「ん?」

 

 

水平線の向こう側から何かが見えた。

最初は大量の黒点が見えたかと思ったら、その黒点は徐々に大きくなっていき、やがてそれは煙を吐きながら信じられない速度で近づいてきている飛行物体である事が分かった。

 

 

 

「提督!前方から何かが接近中っ!信じられない速度です!」

 

「全艦、回避航行っ!急げ!」

 

 

ポクトアールは直ぐ様指示を下すが、命令が各艦に伝達する直前に飛行物体が到達し、各戦列艦に命中し派手な爆発が上がった。

 

 

 

「パオス、ガリアス、マミズ、クマシロ轟沈っ!」

 

 

飛行物体が命中した戦列艦は次々と転覆するか、備蓄していた火薬が爆発し沈んでいく。

 

 

「何なんだ……この攻撃は…」

 

 

飛行物体は自ら意思を持つように次々と友軍艦を葬っていき、僅か10分もしないうちに、艦隊は壊滅状態となった。

 

 

(あの飛行物体は………伝説の古の魔法帝国の"誘導魔光弾"のようではないかっ!)

 

 

 

ポクトアールの脳内にある知識が、警鐘を鳴らし、これ以上戦ってはいけないと警告する。

 

 

「反転180度!全速離……」

 

 

彼が命令を言い切る前に、乗っていた艦に飛行物体が命中し、ほんの一瞬で艦は中央から二つに折れてポクトアールを始めとして多くの乗員と共に、その巨体を海中に没した。

東洋艦隊はこの一方的とも言える戦闘で、アマノキの沖100㎞の地点で人工の漁礁と化し、誰一人として生きて本国に帰る事はなかった。

 

 

 

 

 

海戦直後、出撃した坂元艦隊がアマノキへ無事に帰還したのを見ていた各国の観戦武官達は、沸き立つ。

 

 

「凄いぞ!あのパーパルディア皇国艦隊相手に1隻とも傷がついていない!」

 

「なんと言う事だ………確か何と言う国だったか?」

 

「日本と言う新興国家らしいぞ!」

 

 

 

皆、最初はパーパルディアのワイバーンロード隊がやって来た時は一巻の終わりかと思ったが、坂元艦隊の各艦が猛烈な対空砲を打ち上げて20騎ものワイバーンロードを撃墜したのを見て、日本を我々の味方に引き入れる事が出来ないかと考え始める。

一方でフェン側も、最初は自国の水軍が敵わなかったパーパルディア艦隊を坂元艦隊があっさりと全滅させるとは考えておらず、再び戻ってきた島田達に対して、シハン達首脳部は日本に対して行った足止め行為を口実に、何かを迫られるのではないかと内心怯えた。

 

だが海戦直後より日本との国交を結びたいと軍祭に招かれていた友好国の観戦武官や外交官達が一斉に島田達の元に押し寄せ、その対応に追われる事となったため、一連の事については不問となった。

 

 

その後、フェンの一連の行為については、日本政府はこの海戦を切っ掛けに多くの国と国交を開設する事となった事と、フェン側からの申し出で罪滅しと言う意味も込めて他の友好国との仲介役を引き受ける事で帳消しとなり、フェンとも正式に国交が結ばれる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、パーパルディア皇国の首都エストシラントにある外交部庁舎内では…

 

 

「どういう事なんだ!?もう一度言ってみろ!」

 

 

3つある外交担当部署の内、文明圏外国との外交を担当する『第3外務局』の責任者『カイオス』は、フェンへ差し向けた東洋艦隊が未だに帰還してこない事に苛立っって、部下に怒鳴る。

 

 

「は、はい。つい先日より何度も魔信で東洋艦隊に呼び掛けていますが、未だに応答がなく……恐らくは……」

 

 

部下はカイオスの表情を見てそれ以上は何も言えなかった。

 

 

「全滅したと言うのか?」

 

「い、いえ!行方不明につき、現在調査中でありまして……」

 

「はぁ………もういい。引き続き東洋艦隊の消息を調べ続けろ。」

 

「はい!失礼します!」

 

 

部下は足早に部屋を出ていき、残されたカイオスは腕を組んで思考を巡らせる。

 

 

(東洋艦隊の身に何が起きたんだ?ポクトアール提督は実戦経験豊富な指揮官だ。彼の指揮する艦隊は装備は旧式だが、フェン如き殲滅する事は容易な筈だ。それなのに提督を含めて艦隊そのものが消息不明……普通に考えたなら艦隊は全滅に近い被害を受けたと考えるのが妥当だが、文明圏外の国が束になろうと東洋艦隊が1隻残らず消息不明になるのは有り得ない…………もしかしたら何処かの列強が関わってるのか?だとしたらこれは大変だぞ。)

 

 

この世界にはパーパルディアを含めていくつかの列強国がある。

代表的なのは中央世界の『神聖ミリシアル帝国』に『エモール王国』、第2文明圏の『ムー』か『レイフォル』、後はパーパルディアを含めて5つある。

 

だがムーとミリシアルとは友好的では無いが敵対はしていない、エモールは内陸国であり海軍力は保有していないため関係は無いと考える。

残るレイフォルは現在『グラ・バルカス帝国』と名乗る新興国との戦争中で、こちらに兵力や人員を割く余裕は無いに等しい。

 

 

従って列強が関わっている可能性は低いと考える。

 

 

(列強が関わっていとなれば、いったい何処の国が?)

 

 

カイオスは頭を抱え考える。

 

 

 

(まさかあの国が…………いや、まさかな………)

 

 

 

ふと脳内に、つい最近接触してきた日本国と名乗る新興国家の事が浮かぶ。

 

 

(可能性はあるが………兎に角、調べてみる必要があるな。)

 

 

カイオスは直ちに様々な可能性を鑑みて、第3外務局の調査部に周辺国の調査を命じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。