アルタラス王国方面軍艦隊と上陸軍が壊滅した頃、フェン王国へ向かっていたフェン王国方面軍は意気揚々と進んでいた。
ドカァァァァァァァン!
ドカァァァァァァァン!
ドカァァァァァァァン!
闇夜の海上を艦隊に機雷の爆発が襲い掛かる。
「敵の攻撃だっ!全艦、回避航行っ!」
ふくよかな体形のフェン王国方面軍司令官『モルガン』提督の命令で艦隊は回避運動を行う。
「全く、蛮族め!卑怯な手を使ってきおる……損害報告急げ!」
「はっ!本艦を含めた50門級と100門級10隻とも被害はありませんが、竜母5隻と揚陸艦20から30が轟沈との事です。」
「クソ!」
モルガンは悔しさから、咥えていた葉巻を甲板に叩き付ける。
「提督、我が艦隊の損害は小さくありません。我々はこのまま進撃を続けますか?」
「無論だ!この損害はフェン王国を制圧する事で埋め合わせは出来る!ようは勝てば良いのだ!」
モルガンはシウスと同期であるが、シウスの方が成績と戦績でモルガンを上回り、彼は常日頃から焦りを感じていた。彼は今回の作戦で殊勲を挙げるため是が非でも成功させようと、ある程度の犠牲も辞さない考えだった
「参謀長、本艦隊の位置は?」
「現在我々はフェン王国本土より北東100㎞の海域を進んでおります。あともう少しでフェンの領海に入ります。」
「さっきの謎の爆発の事もある。対空、対水上警戒を厳重にしろ!対空魔振探知機からも目を離すな!」
「はっ!」
艦隊将兵達は夜間に慣れた目を使い、周囲を血眼のようにして見張りを続ける。
この艦隊には『魔振探知機』と呼ばれるパッシブ式レーダーも備えられているため、モルガンはワイバーンによる対空警戒も怠らない。
「提督!対空魔振探知機に反応っ!」
「何っ!?何処からだ?」
警戒開始から僅か数分で、魔振探知機は艦隊に接近する機影を捉えた。
「0時方向、距離500、速度……………何と500㎞を優に越えています!」
「500㎞越えだと!?馬鹿なっ!よく確かめろ!」
「間違いありません!高速で本艦隊前方より接近っ!」
ふと前方を見ると、幾つもの小さな光の点が真っ直ぐ直進してくる。
「回避だ!全艦回避航行っ!」
モルガンは直ちに艦隊回避運動を指示するが、迫ってきた光点は彼の予想を遥かに上回る速度で艦隊に到達し、戦列艦や揚陸艦に次々と命中する。
「何なんだ!?どう言う事なんだこれは!」
狼狽となりつつあるモルガンの脳裏に、先程自艦隊を攻撃してきた光の点について心当たりがあった。
(あの光の点………神話にあるラヴァーナル帝国の誘導魔光弾に似ている………としたら、奴等は遺跡の解析に成功したと言うのかっ!?)
『ラヴァーナル帝国』 (通称:古の魔法帝国)
それはかつて、神話の時代とされていた遥か昔に存在していた有翼人と呼ばれる、人類の最高人種によって構成された国家であり、その持てる技術力と魔力によって世界を征服せんと世界中と戦争を繰り広げていたが、ある時に神々の怒りを買ってしまい、隕石による天罰を受けた。
だがラヴァーナルは、転移魔法と呼ばれる強大な魔法を使って国土ごと、この世から消え去り『何れまた復活するであろう』と書かれた石板だけを残して歴史上から姿を消してしまった。
この歴史は、世界の誰でも知っている事であり、それはモルガンとて例外では無かった。
「脱出だ!一刻も早くこの海域から脱出だ!」
ラヴァーナル帝国に恐れを抱く彼は、直ぐ様反転を命じて、この海域を直ぐに離れようとする。
だがそんな彼らに追い打ちを掛けるように、次なる脅威が迫っていた。
『全機、翼端灯消灯っ!』
艦隊前方より坂元艦隊の空母から発進した嶺花に護衛された光武で編成された攻撃隊がダメ押しの2次攻撃を開始する。
『用意、撃てっ!』
光武より放たれた大量の対艦噴進弾が放たれ、モルガン艦隊の全ての艦に命中し次々と爆発を起こし、沈んでいく。
「そんな…………そんな………うわぁぁぁ!」
モルガンも乗っていた艦に噴進弾が命中し、乗組員が脱出する間もなく一瞬で転覆し、艦と共に沈んでいった。
攻撃成功とモルガン艦隊殲滅の報は直ぐに攻撃隊から坂元艦隊に暗号で伝えられ、そこから旭日艦隊に伝えられた。
「これで4つのうち2つは潰した。後はロデニウス大陸と本土に向かった2つの艦隊だけか…………」
次の舞台は精鋭の高杉艦隊が守る、ロデニウス大陸と日本国方面に移る。
続く
モルガンのモデルは、艦隊シリーズの米第7艦隊司令官のウィリアムモルガンがモデルです。
皆様からのご意見とご感想お待ちしております。