後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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今回はオリキャラとオリジナル兵器が登場します。


第37話

皇国から差し向けられた4つのうち2つを潰され、残り2つとなった皇国侵攻軍はロデニウス大陸と日本本土にそれぞれ分かれた。

 

 

「ロデニウスの亜人共と日本国め………今度こそは……」

 

 

ロデニウス大陸・日本国侵攻軍司令官を努める『ヴァルハル』は、以前のロデニウス大陸戦争の時にロウリア側に観戦武官として派遣されていた。

彼はその時、ロウリア艦隊と同伴していたが、ロウリア艦隊を迎撃した高杉艦隊の攻撃から何とか逃れて本国に帰還していた。

だが彼が書いた報告書はカイオスに荒唐無稽とされ、皇帝の耳に入る事はなく、それどころか精神疾患を理由に無理矢理休暇を取らされていたが、パーパルディアが日本を含めたGOCAと戦争をする事となり日本軍を間近で見た彼はカイオスの推薦もあり、特例でロデニウス大陸・日本国侵攻軍の司令官に就任していたのであった。

 

 

 

「司令官、我々は日本国とロデニウス大陸どちらを先に叩きますか?」

 

「無論ロデニウス大陸からだ……………と言いたい所だが、日本国には積もる恨みがある。先ずは日本国を落としてからロデニウスを落としても遅くはない。」

 

「ですが司令官、先程から謎の爆発で艦隊に少なくない損害が出ております。本来の作戦はロデニウス大陸と日本国へ向けて軍を2分する筈では……」

 

 

 

既に艦隊は日本軍が仕掛けた機雷原に嵌まり、多数の戦列艦と竜母を失っていたが、日本に対する復讐に燃えるヴァルハルには副官の言葉は通じなかった。

 

 

「君、この艦隊の司令官は誰だったかな?」

 

「それは……勿論、ヴァルハル閣下で……」

 

「ならば命ずる!ロデニウス侵攻軍は私が率いる日本侵攻軍と共に日本へ向かう!!」

 

「了解っ!」

 

 

ロデニウス大陸の一件以降、彼は日本国に対して只ならぬ恨みを抱いており、ここまで日本に対する復讐心が心を満たしていたのである。

ともあれ2つの艦隊は従来の作戦には無い、艦隊と陸戦部隊による日本国への侵攻のため、進路をロデニウス大陸から日本国に変更し、機雷により損害を受けつつも、何とか機雷原の突破に成功し進み続ける。

 

 

 

 

 

だがその艦隊の行動を偶然にも付近を警戒飛行中だった、佐世保にある大村海軍航空隊所属の星鳳が発見し、直ちにマイ・ハーク沖に待機していた高杉艦隊に連絡が入った。

 

 

報告を受けた高杉は敵の予想外の動きに少し困惑していた。

 

 

 

「敵艦隊は全て本土に向かったんだな?」

 

「はい。現在敵艦隊は速力12ノットで北東に向かっているとの事です。」

 

「うむ……これは想定外だな。旭日と坂元艦隊が殲滅した敵艦隊の行動からロデニウス大陸と本土に向けて2分すると思っていたが、まさか本土に向けて全艦を差し向けるとは………」

 

「如何いたしますか?今我々がいる地点から全速力で向かったとしても、我々が到達する頃には敵艦隊は沖縄本島に到達する計算になります。」

 

「うむ………参謀長、緊急暗号通信で軍令部へ連絡。」

 

「了解っ!」

 

 

高杉艦隊から発せられた緊急暗号通信は直ちに軍令部に届けられ、高野と大高の耳に入る事になった。

 

 

『総理、敵の動きから推察すると、あと数時間で沖縄本島に敵艦隊が到達する見込みです。』

 

「とすると敵艦隊による沖縄攻撃は…」

 

『はい。十分に有り得ます。』

 

「高野さん、何としてもそれは阻止されたい。もし敵艦隊が沖縄本島に上陸した場合、まともに戦力がない沖縄本島はたちまち占領され多数の犠牲者が出てしまう事になります!」

 

『分かりました。総理、例の鹵獲改造機を使ってみては如何でしょうか?』

 

「"銀竜"ですな?分かりました。沖縄の飛行67戦隊には私から出動要請を行います。」

 

 

大高は電話を一度切ると、沖縄にある陸軍航空隊直通の電話回線を開いた。

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、沖縄にある陸軍飛行67戦隊基地では、大高からの出動要請を受け、パイロットや整備員達が忙しく走り回っていた。

 

 

「よし!1番格納庫、銀竜1番機出せっ!」

 

 

基地にある巨大な格納庫から、銀色に鈍く輝く想像を絶する超巨大機が姿を表す。

ジェラルミンで出来た細長い胴体左右から伸びる長さ70メートルの主翼、主翼の後ろ側に設置された合計9機のエンジン、左右と真上を窓ガラスで覆われた操縦席。

 

 

この巨大機の名前は『特殊多目的掃射機 銀竜』

 

 

これはかつて、前世界におけるクリスマス島攻略で鹵獲された米軍のB32フライングデビルを調査した後に飛行可能までに復元した1機を、航空機の多目的運用と、独軍超重爆ヨルムンガンド迎撃に活躍した嵐龍のコンセプトを組み合わせた対地・対艦掃射機である。

 

武装は、胴体下に加えて胴体上に斜め上に向けて搭載された対艦・対地攻撃用小型ロケット噴進弾発射装置であり、爆弾倉を改造して取り付けられた発射装置には上と下の発射機に合計1000発の小型ロケット弾が装填されており、発射から僅か30秒で撃ち尽くすと言う脅威的な性能を持っている。

 

 

 

「よし、ワルター発動機回せっ!」

 

 

銀竜の元になったB32に搭載されていたアメリカ製エンジンに変わり搭載されているワ式発動機が唸りを上げて、プロペラが回り始める。

 

 

「弾薬搭載完了っ!各部異常なしっ!」

 

「スロットル上げ。各部動力接続。」

 

 

操縦席では機長の『木村光定』大尉と副機長の『樫出伊佐見』中尉が発進準備を整えていく。

そうしていると、別の格納庫から銀竜の後詰を担う嵐龍隊と護衛を担う海軍の嶺花が飛び立っていく。

 

 

「大尉、管制塔より連絡。後詰めの嵐龍隊と護衛の嶺花隊が先行して離陸するようです。」

 

「うむ。」

 

 

機長を努める木村大尉は機体の各動力部の動作チェックを行う。

 

 

「エンジン温度正常、フラップ、ラダー、昇降舵異常なし。」

 

「電探、火器管制装置異常なし。離陸用意完了。」

 

 

機体の異常なしと確認した後に銀竜はゆっくりと動き出し、指定された滑走路へと移動する。

 

 

「離陸位置に着きました。」

 

「よし。ロケットモーター点火用意。」

 

「了解、点火用意。」

 

 

銀竜には、短い滑走距離で離陸できるよう、左右の主翼下と後部胴体両側面に加速用ロケットモーターが設置され、滑走開始と同時に作動させ、離陸して飛び上がったと同時に切り離される。

 

 

「ブレーキ解除。滑走開始。」

 

「全ロケットモーター点火っ!」

 

 

滑走開始と同時にロケットモーターに火が入り、銀竜の巨大な機体を前に押し出し、機体が一気に加速する。

 

 

「うっ!」

 

「ぐぅ!………離陸するぞ!」

 

 

加速によるGに耐えながら、木村は操縦桿を手前に向かって一気に引き、機体を離陸させ上昇を始める。ある程度上昇した後に機体を水平に戻し、先に離陸していた嵐龍と嶺花と合流した。

 

 

『こちらオオワシ1、貴隊の所属を述べられよ。』

 

 

高度10000に達すると無線機より、隊の誘導役を担当する星鳳からの連絡が入った。

 

 

「こちら沖縄基地飛行67戦隊所属、銀竜1。」

 

『確認した。接近中の敵艦隊の位置、貴隊より北西100㎞の地点。』

 

「了解、誘導感謝する。」

 

 

星鳳からの指示を受けた銀竜以下の飛行67戦隊は一路、北東に向かって針路を取った。

 

 

『こちらオオワシ1、間も無く敵艦隊の補足圏内に入る。』

 

「了解、これより高度を下げる。」

 

 

67戦隊は高度を5000まで下げて、自機のレーダーによる敵の捜索に入る。

 

 

「機長、電探補足!」

 

「位置と速度は?」

 

「本機12時方向、距離20、速度12ノット。水上を移動する多数の目標を確認。」

 

「よし。嶺花隊は先行し敵艦隊の確認と陽動開始っ!」

 

 

 

木村の指示通り、護衛の嶺花隊は速度を上げて先行する。

 

 

 

 

 

その頃、侵攻軍艦隊でも67戦隊の接近を確認していた。

 

 

「本艦隊前方の方角より高速で接近する飛行体接近っ!」

 

「速度は?」

 

「信じられません……飛行物体は速度600を越えています!」

 

「間違いない、日本軍の飛行機械だ。よし!例の新兵器を用意せよ!」

 

 

ヴァルハルが接近してくる嶺花隊の攻撃に動じず余裕を持った態度で居られたのは、ある"新兵器"があったからである。

 

 

「対空魔光砲用意っ!」

 

 

ヴァルハルが乗り込む150門級戦列艦『エスト』には、日本軍が飛行機械を使ってくるという情報を基に、本来ならデュロに配備される予定だった対空魔光砲と呼ばれる、対空攻撃に使用する連装対空砲を甲板に3基6門が配備されている。

 

 

「さぁ来い………」

 

 

やがて前方の水平線から雷の轟音が聞こえてくる。

 

 

「来たぞ!日本の飛行機械だ!対空魔光砲発射用意っ!」

 

 

ヴァルハルはエストの左側面を向かってくる嶺花に向けて、魔光砲の発射口を向ける。

 

 

「見えた!発射用意…」

 

 

ヴァルハルが手を上げて、闇夜に嶺花のエンジンノズルから吐き出される噴射炎を頼りに魔光砲の照準を合わせる。

 

 

「発射っ!」

 

 

合図で手を下げようとした瞬間、嶺花は突然急上昇した。

 

 

「クソ!読んでたなっ!?照準を直せ!」

 

 

慌てて照準を変更させるが、亜音速近い速度で飛行する嶺花に中々照準が合わせられない。

 

 

「ダメです!照準合いません!」

 

「敵飛行機械、竜母に向かいます。」

 

 

250㎏と500㎏爆弾で武装した陽動役の嶺花は竜母に向かって直上から急降下を仕掛け、爆弾を投下した。

 

 

「竜母トウガ被弾っ!」

 

「アニスも被弾しました!速力低下、火災発生っ!」

 

「クソ!何としてもヤツを落とせっ!」

 

 

瞬く間に機雷攻撃から生き残っていた残りの竜母が行動不能にされ、ヴァルハルは怒りに身を任せて嶺花を指差し怒鳴り散らす。

 

 

「司令官!対空魔振装置に新たな反応あり!」

 

「何っ!」

 

 

魔振装置の情報が表示されるガラス板を見る。

 

 

「何なんだこれは……装置が故障してるんじゃないか?」

 

「いえ、正常に作動しています。」

 

「だとしたら……この巨大な反応は何なんだ?」

 

 

魔振装置が捉えた銀竜の反応はヴァルハルを驚かせた。

反応は明らかにワイバーンや飛行機械の大きさを上回っている。

ヴァルハルは再び前方に向かって目を見張る。

 

 

 

「ん?……んんっ!?」

 

 

ヴァルハルの目に飛び込んで来たのは、今まで見てきた日本軍の航空機とは一線を画す程の巨大な物体の反応であり、急いで甲板に出て前方を見ると、それは雲の中より突然現れた。

 

 

「何なんだアレは……あんなのが居るなんて聞いてないぞ!」

 

 

ヴァルハルは高速で迫ってくる銀竜の姿を見て腰を抜かした。それ程までに銀竜の大きさが常識を外れているのである。

 

 

「対空魔光砲用意っ!急げ!急げ!」

 

 

放たれなかった対空魔光砲が急いで銀竜に向けられるが、手動旋回式の魔光砲の旋回速度は非常に遅く、その間にも銀竜は艦隊に迫りつつあった。

 

 

「機長、敵艦隊補足しました!」

 

「よし。攻撃手、艦隊の一番前に居る大型艦を狙え。」

 

「了解。」

 

 

掃射装置の操作を担当する火器官制官は照準をエスト以下の戦列艦数隻に合わせる。

 

 

「照準チョイ右………ヨウソロッ!」

 

 

火器官制官の指示で機体が完全に艦隊に向けられ、照準を合わせられる。

胴体上と胴体下の扉が開かれ、発射口が姿を表す。

 

 

「攻撃用意よし!」

 

「攻撃開始ッ!」

 

「発射用意………撃てっ!」

 

 

火器官制官が手に握っていた有線式リモコンに付けられた発射用引金を引くと、最初に下方の掃射機からロケット弾の一斉掃射が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

続く




銀竜の元ネタはクリスマス島攻略作戦のB32に、艦隊シリーズ終盤に登場したアースの要素を組み合わせた物です。

皆様からのご意見とご感想お待ちしております。

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