後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第38話

銀竜によるロケット掃射機から放たれた大量のロケット弾は、小型戦列艦を先頭に単縦陣を取っていた侵攻軍艦隊に襲いかかる。

 

 

 

「アジョワン、オレガノ、カルダモン轟沈!!」

 

「キャラウェイ大破っ!」

 

「クミン火災炎上っ!行動停止っ!」

 

 

前方から行われた最初のロケット掃射で、先頭艦から順に並んでいた戦列艦が次々と被弾し、爆発した後に炎を上げながら完全に停止し、破口より浸水し傾斜していく。

 

 

「5隻が瞬く間に…………」

 

 

この時点で艦隊は機雷原で多数の艦を失い、残っていたのは10隻の戦列艦のみであったため、実質的に半分近くの残存戦力を失った事になる。

下方からのロケット掃射を終えた銀竜が旗艦の上を通過し、化け物級の銀竜の大きさに圧倒される。

 

 

「ぬぅ!何て偉容だっ!?」

 

 

旗艦上空を通過した銀竜は一端上昇し、左に大きく旋回すると、最初の攻撃の時よりも高度を下げて、海面から50メートルの位置での低空飛行に入り、艦隊の後方から迫る。

 

 

「後ろから来る気かっ!?対空魔光砲用意っ!」

 

「司令っ!後方のサフランが邪魔で照準がつけられません!」

 

「サフランに退くように伝えろっ!」

 

 

後方に居た戦列艦サフランにその場から退くように魔信を入れ、命令を受けたサフランが右に舵を切ろうとした瞬間、銀竜の胴体上のロケット掃射機による曲射攻撃で、後方の戦列艦が次々と被弾し、サフランにもロケット弾が殺到し一瞬で破壊される。

 

だがそれで対空魔光砲の死角が無くなったため、魔光砲の操作員は迫ってくるロケット弾攻撃に怯む素振りも見せず銀竜に向かって照準を合わせ、引き金を引くと、長い砲身の先に光が収束し、ボウリングサイズの光弾となって砲から打ち出された。

だが魔光砲が発射された瞬間にロケット弾が命中し魔光砲ともども船は破壊され炎に包まれた。

 

 

 

 

 

「ん?あれは………」

 

「いかん!回避っ!!」

 

 

 

旗艦から魔光砲の光を確認した木村大尉は操縦桿を右に回し機体を右に傾けるが、光弾は右翼の第2エンジンに直撃し、炎上する。

 

 

「第2エンジン被弾っ!」

 

「第2エンジン停止っ!燃料弁閉鎖っ!自動消火装置起動っ!」

 

「了解っ!」

 

 

だが幸いにも木村が慌てる事なく冷静に対処できた事と、自動消火装置のお陰で、炎上していたエンジンの火は消えた。

 

 

「ふぅ………消火成功です。」

 

「まさに窮鼠は猫を噛むだな…………こりゃ上へ敵にも対応兵器がある事を報告しないとな。」

 

「機長、速度が落ちました。」

 

「了解。残りのエンジンで何とか基地に帰れるか?」

 

「はい。何とか。」

 

「よし。銀竜1よりオオワシ1へ、本機は敵主力艦多数を撃破するも、敵の対空兵器の攻撃を受け被弾し戦闘不能。」

 

『こちらオオワシ1、基地への帰艦は可能か?』

 

「飛行に問題なし。帰投可能。」

 

『了解。後の攻撃は嵐龍隊に引き継ぎ、基地へ帰投せよ。』

 

「了解。これより帰投する。」

 

 

ロケット弾を撃ち終えて、傷付いた銀竜は嵐龍隊に後を引き継ぎ嶺花2機の護衛を受けて沖縄の基地へと帰投していく。

 

 

 

 

 

一方で、艦隊の後方に居た上陸部隊3万人を擁する陸軍部隊の皇国兵達は、護衛の艦隊が殲滅され、愕然としていた。

 

 

「そんな……」

 

「俺達はどうなるんだ!」

 

「お終いだっ!もうお終いだっ!」

 

 

最強と信じていた自国の艦隊が全滅し、引き返した銀竜に続いて現れた嵐龍隊の姿を見て、次は自分達が殲滅される事を直感した皇国兵達の間でパニックが伝播していく。

 

 

「将軍!どうしましょう?」

 

「どうするも………海の上じゃ我々は無力に近い……降伏するのも1つの手だが………既に我々は敵に宣戦布告をしてしまっている。降伏の意思を示したとしても敵に何をされるか……」

 

「しかし、兵達の命は何者にも代え難いと思います。皇国兵の恥となる事を承知して進言します………どうか降伏のご決断をっ!」

 

 

 

将軍は回りを見渡し、既に配下の兵に戦意も無く、恐怖しかないと判断し降伏を決断した。

 

 

 

「分かった…降伏しよう……………降伏旗を掲げよ。」

 

 

 

この命令から数分後、皇国兵達は降伏旗の変わりに白旗を掲げた事により、降伏の意思を示した事により駆けつけた高杉艦隊とクワ・トイネ艦隊に収容され捕虜となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

東洋諸国侵攻軍の敗退の知らせは、東洋諸国の外航ルートを経由して皇国第3外務局からアルデへと伝えられた。

 

 

「東洋侵攻軍艦隊全滅……戦死20万に陸軍兵士3万人が捕虜……」

 

 

アルデは報告書を見て怒りに震えていた。

 

 

「最強の我が軍が蛮族如きに負けるなど……有り得ん!何かの間違いだっ!間違いに決まっている!」

 

 

アルデは報告書を床に叩きつけて怒鳴り散らす。

 

 

「アルデ閣下、皇帝陛下がお呼びです。」

 

「陛下がっ!?」

 

 

その時、アルデの体の震えは怒りから怯えに変わった。

 

 

 

ルディアスからの召喚命令を受けたアルデはパラディス城へと向かい、王座の間でルディアスに報告する。

 

 

「あ、あの東洋諸国の日本と言う国の蛮族供がそれ程の戦力を有していたとは……これは軍の責任と言うより第3外務局の怠慢かと……」

 

「アルデ、今回の件は余が計画した事は知っているだろう?だが作戦立案の段階で、貴様が第3外務局からの忠告を無視し、余に対して『日本など恐るるに足らず』と言ったのを覚えているか?」

 

「そ……それは………」

 

 

ルディアスの指摘にアルデは何も答えられなかった。

 

 

 

「この失態は君を極刑に処するに然るべき事だと思うが……違うかね?」

 

「………………」

 

 

アルデは死を覚悟した。

 

 

「だが君も知っているだろうが、我が皇国に敗北などあってはならない!そうだろう?」

 

「は…はいっ!」

 

 

ルディアスに詰め寄られ、狂気とも言える顔にアルデは凍りつく。

 

 

「我が国は完全無欠でなければならない!作戦は多少の損害を負いつつも、我が皇国軍は東洋諸国を灰塵に帰し、支配下に置いた…………よいか?」

 

「はい!」

 

「アルデ、君もそれを信じるがいい。無論、今回の件は他言無用だ。もしこれが属領に知られたらどうなるか分かっているな?」

 

 

パーパルディアは恐怖政治でフィルアデス大陸を支配下に置いている事と食料生産は属領に頼っているため、万が一にも皇国が敗北したなどと属領に知られた場合、どうなるかは誰の目にも明らかである。

 

 

「はっ!」

 

「よし。アルデよ、再度東洋諸国への侵攻計画を立案せよ!それも早急にな。」

 

「分かりました!必ずや!」

 

「では下がってよい。」

 

「ハイル・ルディアス!」

 

 

アルデは足早に王座の間から退出した。

残されたルディアスは、部屋の壁に飾ってあるフィルアデス大陸を中心とした地図を見上げる。

 

 

「私の第3文明圏統一計画……これさえ叶えられればグラメウス大陸も落とし、ムーも下し、ミリシアルも下せば………私はこの世界の王となるであろう!誰にも私の夢の邪魔はさせん!邪魔する者には死あるのみ!」

 

 

ルディアスは懐から装飾が施された、マスケット式拳銃に火を付けて地図に向かって発砲する。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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