後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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今回はレミールが主役です。


閑話休題

ここは、牢獄の中……

 

 

狭くて、苦しくて、辛くて、知りたくない現実の中…

 

 

目の前にこちらを見下す眼鏡を掛けた男が呟く…

 

 

『無様だな。』

 

 

 

その言葉で心の中の怒りに火がついた……

 

 

『こんな事が許されるとでも?列強たるパーパルディア皇国の皇族を捕らえるなど……こんな事が許されるとでも?お前達は文明圏外にある国だ。列強国が蛮族をいくら殺そうが……………そんな事で、列強の皇族たる私をこんな目に合わすなんて、許される事ではないぞ!』

 

 

その時、男の表情が険しくなり、言い返してくる。

 

 

『やはり……私から見れば、あなたの方が野蛮人だ!』

 

『ぐっ………私は皇族だ!私が死刑を命じたのは……死んだのは平民だろう!』

 

『だから何だ!だから罪が許されるとでも思ってるのか?他国の平民は心が無い「物」とでも思ってるのか?全員には家族がいるんだ!』

 

 

それを聞いて脳裏に何かが押し寄せる。

 

 

『お前の行為によって泣いた人がどれ程いると思っているっ!!人生を狂わせられた人がどれ程居ると思っているっ!』

 

『やめろ……』

 

『全ての人間が、ただ漫然と何もしないで育ってきたとでも思ってるのか!』

 

『やめろ…やめろ…』

 

『人間はな……愛情が無ければ育たないんだよ!!』

 

 

その言葉が決定的となり、視界と心が闇に呑まれてしまい、もう何も感じる事が出来なくなってしまった。

 

 

 

そして何処からかか声が聞こえてくる……

 

 

『返せ……』

 

『家族を……息子と娘を返せ…』

 

『返せ!』

 

『返せ!』

 

『返せ!』

 

 

 

返せと言う言葉がコールのように響き渡り、胸を苦しめ、聞こえてこないように耳を塞ぐ。

 

 

 

『やめてくれ!やめろ!来るなっ!来るなっ!』

 

 

 

そう叫ぶが声は次第に大きくなっていき、やがてその声だけが脳内を支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

 

 

 

叫び声と共に、暗闇の部屋の中にあるベッドの上で一人の女が飛び起きる。

 

 

「寝てしまったか……………」

 

 

彼女の名は『レミール』……

 

 

パーパルディア皇国の皇族の中で皇帝の次に最高位に位置する皇女の地位にある彼女は、ベッドから降りると、カーテンを押し退けて窓の外を見る。

 

 

「あの日以来か………この夢を見るようになったのは。」

 

 

彼女は今から数か月程前に、第3外務局から"ある国"の名前を聞いた日より悪夢にうなされるようになった。

 

 

 

「日本……………この言葉を聞くだけで背筋が凍る……それに私が知らない夢…………」

 

 

日本と言う言葉が耳に入ってくるとデジャウに近い夢を見るようになる。

その夢の内容は彼女にとって実に受け入れ難い物ばかりだった………

 

 

「フェン王国への侵攻から日本人虐殺に始まる悪夢………忘れたくても忘れられないリアルな夢……この夢から逃れようと寝る事もしなくなった………だが寝てしまうと必ず見てしまうあの悪夢……」

 

 

レミールの顔は酷くやつれており、目の下には隈が出来、机の上に並べられた精神安定の効果がある薬草で作られた大量の薬と水………

 

 

「いかん!また寝てしまわないようにしなければ…」

 

 

眠気を誤魔化すためレミールは、執務用の椅子に腰掛けて机の上に溜まっていた仕事を処理し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして朝が来ると、レミールは仕事着に着替えて、皇帝に会うためパラディス城に向かう。

 

 

「おお、来たかレミールよ。」

 

「はい。」

 

「ふむ…レミールよ、既に知っていると思うが我が東洋諸国侵攻軍が敗北したのは誰の責任かと考えていた。」

 

 

 

ルディアスの問いにレミールは『またか』と思いつつ、平静を装い答える。

 

 

 

「はい。責任は皇帝陛下ではなく、アルデ以下の将官達にあるかと………陛下の命令を忠実にこなす事がアルデ達の使命であります。陛下には何の責任もなく、全てはアルデの無能による罪かと…」

 

「そうか。成る程…確かにそうだ。ハハハハハハ!」

 

 

 

レミールの言葉に機嫌を良くしたルディアスは高らかに笑う。レミールは皇女であるが、感情の起伏が激しいルディアスの精神安定を計る役目を担っている。

 

 

 

 

そして数度、言葉を交わした後にレミールは退出しようとする。

 

 

「では陛下…私はこれより医師による診断を受けなければならないため、これにて失礼いたします。」

 

「レミールよ何処か体が悪いのか?」

 

「えぇ……少し体調が優れず…」

 

「体は大事にしてくれ。私にとってはレミールが心の拠り所なのだからな。」

 

「はい。では失礼いたします。」

 

 

 

王座の間を出たレミールは、うつ向きながら城を出て迎えの馬車に乗り込み、皇都の近郊にある小さな診療所に向かう。

 

 

「ここで待っててくれ。」

 

 

馬車を降りて、迎えの者に待ってるように伝えると診療所の中へと入った。

 

 

「レミール様。」

 

「久しいな。」

 

 

彼女の目の前に現れたのは、髭を蓄えた初老の医者だった。

 

 

「お久しぶりでございます。して本日は如何様なご用にて?」

 

「あぁ…例の薬を貰いに来ただけだ。」

 

「分かりました…………レミール様、私は貴女の幼き頃より主治医を勤めております。貴女様のお顔を見れば分かります…………失礼をご承知でお伺いしますが、何かありましたか?」

 

 

主治医の的を突いた質問にレミールはあっさりと降参し、例の夢の事を話す。

 

 

 

「………成る程。その日本国の名前を聞いた時より、奇妙な夢を見るようになったと?」

 

「あぁ………だから私はその夢を見たくなくて眠らないようにしているし、こうして例の精神安定薬に依存してしまったのだ………」

 

「う~む………………」

 

 

医者は少し唸ると、ある考えを口にする。

 

 

「レミール様、貴女様は転生と言う言葉を信じますか?」

 

「転生?……まぁ、過去にも世界でそう言う事例はあったと聞いているから否定はしない。」

 

「レミール様が抱えている悩みを総合すれば、明らかにそれは前世の夢かと考えます。」

 

 

前世と言う言葉を聞いてレミールの顔が驚きの表情に包まれる。

 

 

「前世の夢……」

 

「まぁこれは飽くまで書物で読んだ事の受け売りですが…………」

 

「いや、満更嘘でも無いかもしれん。夢は確かに現実的で、尚且つ心の中に残る………もしこの世に神が居るのなら前世の私がした所業を今世の私に何をさせようと言うのか……償いか……あるいは神が下した罰なのか……」

 

「レミール様……」

 

「いや、すまない。忘れてくれ。」

 

 

レミールは簡単に診断を受けた後に薬を貰い、診療所を後にすると自宅である邸宅へと帰り、眠らないように仕事に打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




転生物の代名詞である艦隊シリーズなので、転生ネタも混ぜてみようと思いレミールを選んでみました。

皆様からの、ご意見とご感想お待ちしております。

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