後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第39話

中央歴1639年12月5日

 

大成功に終わった出城作戦から数日が経過した。

クワ・トイネ公国のマイ・ハークの王城内に設けられたGOCA加盟国による臨時の戦略会議が行われていた。

 

 

「大高総理、やはり皇国本土への直接侵攻は現実的ではないとお考えなのですか?」

 

「はい。パーパルディア皇国は確かに独裁政治による覇権国家であり、強大な軍事力を有します。今回の出城作戦で皇国の海軍力に大打撃を与えたとはいえ、彼等は未だに強大な戦力を抱えています。それを考えますと皇国本土への侵攻は多大な損害を被る事になります。」

 

「しかし、我々は既に皇国艦隊の撃破に成功している上に、貴国やGOCA加盟国にはまだ戦力に余裕はあるが、プライドが異常に高い奴等の心情を考えると、恐らく奴等は今回の損害を糧にして再び侵攻してくる可能性が非常に高い。奴等も馬鹿ではないから、今度は徹底的に対策を練った上でやって来るだろう。」

 

「もしそうなら我々にも少なからず被害を被る事に成りうる。敵には我々の知り得ない新兵器を持っている可能性だってある。下手したら敵の侵攻を許す事にも……」

 

 

 

皇国の恐ろしさを知っている各国の首脳達は頭を抱えて考える。

だが大高はその場で挙手をして、提案を出した。

 

 

 

「皆さん、ここは冷静に考えましょう。敵が再び侵攻してくるのなら、侵攻する前に彼等の戦意を奪い侵攻させないようにすれば良いのです。」

 

「確かにそれは理屈だ…………だがそんな事をいったいどうやって?」

 

「確かパーパルディアはフィルアデス大陸内にあるほぼ全ての国家を支配下に置いているのはご存じかと思います。それはパーパルディアにとっては最大の強みであり最大のネックでもあるのです。」

 

「最大のネック?どういう事なのでしょうか?」

 

「パーパルディアに支配された国家は恐怖政治と強大な軍事力で国としての力を大きく制限されています。言うなれば、風下に置かれた蝋燭と同じなのです。我々はそれに火をつけてやるのです。」

 

 

 

大高の言葉に、その場に居た者全員の表情が驚きに包まれる。

 

 

 

「まさか……皇国の牙を抜くと言うのですか?」

 

「はい。聞けば、パーパルディアは食料生産を属国に完全に頼っていると聞きます。戦意に火をつけた属国が再び力を取り戻し再独立に成功すれば皇国はたちまち資源と食料の供給元を失う事になります。しかしそれ以前に抑えなければならない場所があります。」

 

「それは何処なので?」

 

「それは…………工業都市デュロです。」

 

 

 

工業都市デュロ……

 

皇国の南部にある最大の工業都市からは皇国全軍を賄えるだけの兵器や武器が大量に産み出され、皇国の軍事力を支えている柱と言っても良い。

ここを叩く事が出来れば皇国の軍事力を半減させ、戦意を挫く事も可能となる。

 

 

「しかし大高総理、デュロには皇国軍のデュロ防衛艦隊と陸軍が守りを固めています。直接侵攻は容易ではないと思われますが。」

 

「それにつきましては既に手を打ってあります。ですがその前に準備しなければならない事があります。」

 

「準備?」

 

「実はここまでの話なのですが、皇国の政治に携わる"ある人物"より接触がありまして………」

 

 

 

 

 

 

 

この会議より数時間前、帝都内にあるラジオ放送局の収録室にルミエスと大高の姿があった。

彼女がここに居るのは、日本国の通信技術を最大限に活用したある宣言をするためである。

 

 

「しかし私の言葉がパーパルディアに虐げられている大陸各国の方々に通じれば良いのですが………」

 

「大丈夫です。皇国の属国となっている方々には殿下の言葉は、自由を取り戻すための大きな切っ掛けになるでしょう。」

 

「そうであって欲しいのですが………」

 

 

 

やがて準備が整い、日本国内、GOCA加盟国の中継用送信アンテナを通じて、フィルアデス大陸の各国に潜伏している東機関により設置された複数の送受信用アンテナに電源が入れられる。

 

 

「準備整いました。いつでも…」

 

「ではルミエス殿下、お願いします。」

 

「はい……」

 

 

ルミエスは緊張した面持ちでマイクの前に立ち、息を大きく吸い込み、マイクに向かって話始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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