後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

41 / 130
第40話

放送局から放たれる電波に乗せ、ルミエスの言葉がフィルアデス大陸の、パーパルディアの属領となった各国に向かって放たれる。

 

 

『この魔信をお聞きの皆様。私はアルタラス王国王女のルミエスと申します。この度私が魔信を使っているのは、フィルアデス大陸に存在する各国の戦士や民の皆様にお伝えしたい事があるからです。』

 

 

彼女の言葉に、フィルアデス大陸の各国の国民や兵士、レジスタンス達が耳を傾ける。

 

 

 

『さる11月24日、パーパルディア皇国は我が故郷、アルタラス王国に対して理不尽とも言える文書を突きつけてきました。それは我が国の魔鉱山シルトラウスの献上と私を奴隷として引き渡せとの内容でした。無論これは到底受け入れられる物ではありません。私の父、アルタラス王国国王のターラ14世はこの文書の承諾を断り、皇国に対して宣戦布告をしました。………お聞きの皆様は皇国の力をよくご存じでしょうし、皇国に対して宣戦布告などとは命知らずと思いでしょう。ですが我が国は周辺の東洋諸国並びに、皇国と同等かそれ以上の力を持つ"ある国"と同盟を結びました。』

 

 

ある国と言う言葉を聞いた者達は、魔信装置に耳を傾ける。

 

 

『その国の名前は………日本国です!』

 

 

その名前を聞いた者達は噂程度でしか日本について聞いていないため、少し首を傾ける。

 

 

 

『我が国は日本国を主とする大東洋諸国連合を結成し、東洋諸国へ侵攻してくる皇国軍艦隊を壊滅させ3万人の皇国兵を捕虜としました!日本国は我々が知り得ない様々な兵器や戦術を駆使し皇国の野望を見事に阻止したのです!これをお聞きの皆様、確かに皇国は強いですが無敵の力がある訳ではございません!』

 

 

皇国は無敵ではないと言うルミエスの言葉に、聞き入ってた者の脳裏に小さな焔のような感情が湧き出てくる。

 

 

『皆様、私はこれからも日本国と東洋諸国と共に皇国と戦っていくつもりでいます。ですが皇国は最大の弱点を抱えています。それは今、皇国に支配されている貴方達なのです。貴方達が再び真の独立国として舞い戻りたいのであれば…………立ち上がってください!』

 

 

その瞬間、誰もの心が震えた。

 

 

『私達、大東洋諸国連合は独立を目指す皆様を精一杯支援するとお約束いたします………ですが、皇国に恨みがあるのはご承知でお願いしたい事があります。それは…………決して皇国領にある非戦闘員に対しては決して手を出さず蛮行に走らないようにお願いします!怒りに身を任せて蛮行に走れば、それは皇国兵がやって来た事と変わらなくなるからです………』

 

 

誰もが再び驚いた。

普通なら戦争において、敵国に対して恨みがあれば戦闘員だろうと非戦闘員だろうと構わず手を出してしまうのは仕方の無いの事なのである。

だが魔信から聞こえてきたのは敵国である皇国の民に手を出してはならないと言う言葉であった。

冷静になって考えれば、そんな事をすれば今まで皇国が自分達にやってきた蛮行と変わらないからである。

誇り高い軍人が多い自分達の組織の人間が蛮行に走れば、独立のために戦う意味を成さなくなる。

 

 

 

 

『そして最後のお願いとしてもう一つ申し上げます………決して命を粗末にしないで下さい!』

 

 

 

その言葉で誰もが決断した。

再び国の主権と独立を勝ち取るため、再び立ち上り皇国を国から追い出さなければならない。

 

 

 

この日を境に、戦争の形成は完全に逆転する事となった。

 

 

魔信による広域放送が行われた日より、大陸のパーパルディアの属国らが一斉に武装蜂起し、皇国の属領統治機構はこれに対処すべく兵力を全て割く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この武装蜂起より二日前の深夜

 

 

紺碧島ではデュロ攻撃に備えて、本土より"ある秘策"が到着していた。

 

 

「あれが例の秘策か…………見たのは久しぶりだな。」

 

 

紺碧港に停泊している一隻の潜水艦を見て前原と入江は呟く。

その潜水艦は、前達が乗り込む伊601を凌ぐ巨大な船体を持ち、司令塔基部前方と後方にある2連装15㎝砲。

 

 

「太平洋で鹵獲した、あの砲撃潜水艦をまさか我々が使う事になるとは………予想外でしたな。」

 

 

彼等の目の前に停泊するのは、かつて前世界にて紺碧艦隊が鹵獲した、ドイツ海軍沿岸奇襲用砲撃潜水艦『UX99』だった。

 

 

「確か、あの艦の乗員は兎も角、艦長は旭日艦隊の大石長官が推薦した例のUボートの艦長でしたな?信用できますか?」

 

「大石長官は人を見極める事に関しては一流だ。信用できると思う。」

 

 

すると、UX99から一隻のボートがやって来る。

ボートは伊601に横付けすると、そこからドイツ海軍の制服を着用した一人のドイツ軍人がやって来ると、前原の前で敬礼する。

 

 

「特務潜水艦UX99艦長のへルマン・フォン・オットーであります。」

 

「私は貴方達がX艦隊と呼ぶ、紺碧艦隊司令官の前原です。ようこそオットー少佐。」

 

「はい。ヘル前原、貴方の事は大石閣下から聞いています。何でもアメリカ艦隊をたった数隻の潜水艦と優れた戦術で殲滅されたとか…」

 

「ははは……大石閣下も大げさだな。私はそれ程優秀な人間ではありませんよ。只の潜水艦乗りに過ぎません。」

 

「またご謙遜を……ドイツ海軍内でも貴方達は大きな噂となっていますよ。」

 

 

両人は互いに打ち解けた後、デュロ攻撃についての作戦立案と準備に追われる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




皆様からの、ご意見とご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。