後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第41話

中央歴1639年12月6日

 

 

ルミエスからの放送による属領の反乱への対応に追われていたパーパルディア皇国上層部では、ルディアスを除き、軍民の責任者達が集まり、今後の対応について協議していた。

 

 

「徹底抗戦だ! 列強国である我が国がいつまでも東洋の蛮族に舐められたとあっては列強として恥だ!」

 

「しかし、東洋諸国へ差し向けた艦隊と陸軍の損失は大きい。せめて、属領の反乱を鎮圧し兵力が整ってからでも遅くはない。」

 

「それまで奴等が待ってくれると思うか? 今は東洋諸国の連中が攻勢を仕掛けてくる様子は無いが、属領の反乱で我が軍の兵力は偏っている。そこを突かれたら東洋諸国への侵攻どころか、奴等が我が国の本土にやって来る可能性だってある!」

 

「アルデ殿は我が国が奴等に土足で踏みにじられても良いと言うのか!?」

 

「そんな事は言っていない! 私はただ、奴等が我が国の東洋諸国侵攻軍を撃滅させるだけの戦力があると分析した上で言っているだけだ!」

 

 

 

今、ここで行われている議題は主に『東洋諸国への再侵攻』に向けての兵力の編成、『属領の反乱に関する懸案』の二つであったが、会議は東洋諸国再侵攻に関する意見のぶつかり合いに発展していた。

 

 

「そもそも、今回の属領の反乱を許した事による我が軍の兵力の見直しの原因は、属領統治機構の怠慢では無いのですか?」

 

 

アルデは目の前の席に座っていた属領統治機構の責任者である『パーラス』に問い掛けると、直ぐ様立ち上り反論する。

 

 

「アルデ殿、確かに属領の反乱を許してしまった挙げ句、各地の属領統治機構支部が受けた被害については我々に責任はある…………だが、反乱が起きた時にアルデ殿は我々の援軍要請を断られた。もし援軍さえあれば属領の反乱等すぐに鎮圧できたものを…」

 

「それは仕方が無いだろう! 反乱が起きたのは侵攻軍が壊滅した直後で、兵力の配置について対応が出来なかったのだから!」

 

 

 

 

互いの失態による責任の擦り付け合いに発展する議場で、奥の目立たない席に座っていたレミールは頭痛がする思いで会議を黙視していた。

 

 

(どっちもどっちだ! お互いに日本国の強さを理解していない証拠だ!)

 

 

レミールは日を追う事に、前世の記憶について徐々に思い出していき、今の彼女の脳裏にある前世の記憶は『デュロ空爆』から『皇都空爆』までの記憶だった。

 

 

(だがこの世界の日本国との戦争の歴史は私が知っている物とは違ってきている…………前世の記憶通りの歴史とは異なった様相を呈している現状では、どうやって祖国を守るべきか………)

 

 

 

必死に考えるレミール。

 

 

そして数分間の後に、彼女の脳内にある方法が一つだけ出てきた。

 

 

(皇国を中から変えていくしかない!)

 

 

考えついたのは皇国の政治や思想を根本的に覆すための"ある決断"だった。

 

 

(もし実行するとして、誰を味方につける?)

 

 

レミールは議場に居る者全員に目線を向ける。

 

 

(皇国軍最高司令官のアルデか? 駄目だ! 奴は戦争をする事しか能が無い。………だとしたら属領統治機構最高責任者のパーラス? 駄目だ! 奴は属領の臣民を苦しめ虐める事しか能が無い変質者だ!)

 

 

他の面々にも視線を向けるが、彼女にとっては問題にもならず全て候補から外れてしまう。

 

 

(やはり"計画"を前倒しにするか。)

 

 

 

 

 

 

 

この日より2日前の12月4日

 

 

 

「何? レミール様が?」

 

「はい。火急の用との事です。」

 

「うむ………火急の用とは……………分かった。応接間にお通ししてくれ。」

 

 

 

丁度、自宅で仕事をしていたカイオスはレミールの訪問を受け、レミールを応接間に通す。

 

 

「カイオスよ、すまないな。」

 

「いえ。どうせ暇を持て余していましたから。ところで、火急の用とは?」

 

「所で、火急の用とは?」

 

「あぁ……………ここだけの話だが、カイオスにしか話せない事なのだ。くれぐれも内密にお願いする。」

 

 

レミールの表情を見て、カイオスは只事ではないと思い、真剣な眼差しで聞きに入る。

 

 

「実はな……」

 

 

レミールはカイオスに例の事を話す。

それを聞いたカイオスの表情は驚愕に包まれる。

 

 

「まさか……そんな事を……」

 

「もう皇国上層部の間では、日本国を含めた東洋諸国や属領反乱軍を同時に相手をする事で話が進んでいるんだ。カイオスも自分が持っている情報で日本国の強さは耳に入っているだろう?」

 

「まぁ…はい。商人伝手ですが日本国が東洋諸国に輸出している製品の実物や話を聞いて、日本国は侮るどころかミリシアルに匹敵する列強国家であると認識せざる得ません。」

 

「そうか。なら……」

 

「はい。微力ではありますが是非ともご協力させて頂きます。」

 

 

早速味方をつけたレミールは次の話題に移る。

 

 

「では今回の計画についてだが、私は日本国に協力を仰ごうと思っている。」

 

「敵国に計画の協力をっ!?」

 

「あぁ……正式には利用すると言った方がいいか?」

 

「しかし日本国がそれに応じてくれるには、我々からそれ相応の対価を支払わなければ………」

 

「それについては考えがある………」

 

 

そう言ってレミールはカイオスに耳打ちする。

 

 

「それは……誠ですか?」

 

「あぁ。」

 

「属領の独立容認、皇国技術の一部又は状況によっては全ての情報の開示、軍縮……………」

 

「無茶は承知だ。だがこれくらいのカードを用意しておかなければ、日本は応じまい。」

 

「確かに…………解りました。内密の形で大使館に居る日本国大使との会談を設けましょう。」

 

 

 

レミールによる皇国改革のための一大計画は遂に始動した。

 

 

 

 

 

 

 

続く




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