後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第42話

その日の午後より、パーパルディア皇国の郊外に設けられた第3外務局庁舎内にある会談室では、カイオスからの緊急の会談要請を受けた日本国大使『浅田泰二』と数名の日本人外交官が、カイオスとレミールを交えての非公式会談を行っていた。

 

 

「以上が我が国……と言うより、私とこちらに居られるレミール様による貴国への要請文となります。」

 

 

カイオスは日本国への要請文が書かれた書類を手渡す。

 

 

「拝見します。」

 

 

書類を受け取った浅田は、ズレていた眼鏡を掛け直し、厳しい表情で中身を確認し、他の面々にも確認させるとカイオスに問い掛ける。

 

 

 

「……では貴国は軍縮を条件に、我が国へクーデターに手を貸せと仰るのですか?」

 

「はい。私もレミール様も、勝ち目も未来も見えない戦争を早く終わらせたい思いがあるのです。」

 

「ですが貴国が出した条件は東洋諸国全体にとっては良いでしょうが、我が国にはどのような利があるのですか?」

 

 

外交慣れしているカイオスは書類に敢えて切り札を書いていなかった。日本国がどのような意思を持っているか明確ではない現状では最初に全ての切り札を示しても意味は無い。

確実に相手国の度肝を抜くには、切り札は最後にとっておくのがカイオスの外交手段である。

 

 

「はい。確か貴国は科学文明国のため魔法や魔導技術に関してはノウハウが無く、解析に相当苦労していると聞いています。」

 

 

浅田はカイオスの言葉に内心驚いた。

 

 

(驚いた……何故目の前の御仁がその情報を?)

 

 

彼の思っている通り、日本は現在、クワ・トイネ公国との国交開設時やロウリア戦の戦訓から魔法に関する技術を科学技術と融合させる事での有用性に着目し、研究が開始されたが、絵本や物語等の空想上での存在でしか無かった魔法技術に関してのノウハウが全くと言っていい程なく、解析は初期段階からまったく進んでいないのが現状である。

 

 

「もし貴国が魔法技術をお求めになるのであれば、我が国が保有する魔法や魔導技術関連に関する物を貴国に提供する準備があるのです。無論これは我々だけの非公式なものですが………」

 

 

カイオスの言葉は浅田の心を大きく揺るがせる。

それ程までに、日本は魔法技術を欲しているのである。

 

 

(確かに……これ程の魔法技術力が手に入るのは魅力的な話だ。)

 

 

浅田がそう考えていると、カイオスは更に付け加える。

 

 

「貴国や東洋諸国との戦争は、我が国にとっては将来的に希望もなく、未来もない事になるのは分かっているつもりです。そこで付け加えさせて頂きますと、貴国が我々の要請を呑んでいただけるのなら、今出した条件に加えて、我が国が今抱えている属領の独立も約束致します。」

 

 

カイオスとレミールは出せる物は全て出し、浅田達の反応と返答を祈るように見守る。

 

 

(頼む…呑んでくれ…)

 

(これを呑んでくれはければ……)

 

 

数分の沈黙の後、浅田は返答する。

 

 

「分かりました。貴殿方の要請は私が必ず責任を持って、我が国の首相へとお伝えします。」

 

 

この返答にカイオスとレミールは緊張から解かれる。

 

 

「ありがとうございます。くれぐれもお願いします。」

 

「はい。つきましては貴殿方と我々の間で誤解が起きないよう、連絡手段を確保しておきたいのです。」

 

「それについては私が責任を持とう。」

 

 

 

計画は遂に、準備段階へと移行する。

 

 

 

 

 

 

中央歴1639年12月10日

 

 

 

新紺碧島のドックでは、紺碧艦隊と随伴するUX99の出港準備に追われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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