後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第43話

中央歴1639年12月10日

 

フィルアデス大陸より東へ500㎞の海中を、誰にも悟られる事なく紺碧艦隊が進んでいた。

 

 

「皇国領海に入ってから数時間。そろそろ敵の哨戒圏内だな。」

 

「はい。砲撃潜水艦が目標とするデュロの沖20㎞の地点には問題なく到達できると思われます。」

 

 

紺碧艦隊はカイオスとレミールによるクーデター支援のため、大高からの密命により、皇国軍の目を引き付ける目的でデュロへの直接攻撃を仕掛けるべく、新紺碧島より1日掛けてここまでやって来たのである。

今回の前原達の仕事は、鹵獲砲撃潜水艦UX99はデュロ沿岸にある工業地帯への砲撃支援で、UX99の進撃と帰還のための安全確保と謀略無線『木霊』を用いて、デュロを防衛する皇国艦隊を引きずり出し、罠に掛かった皇国艦隊を殲滅するのが今回彼らに課せられた任務である。

 

 

「さて『水蜘蛛作戦』を実行に移そう。艦長、木霊を始動だ。」

 

「了解。タンクブロー、潜望鏡深度まで浮上っ!」

 

 

 

作戦は開始され、潜望鏡深度まで浮上した伊601は無線アンテナを海面に出し、皇国軍デュロ防衛隊に対する無線謀略『木霊』を始動させる。

 

 

 

「司令……訓練で魔導通信装置は散々使いましたが、ロウリアから提供されたこの装置は役に立ちますかな?」

 

「それは今回の作戦次第だな。…通信長、木霊の用意は?」

 

「準備完了です。無線と使い方は同じですから、直ぐにでもいけます。」

 

「よし!木霊発動!」

 

 

伊601に新装備された魔導通信装置に電源が入れられ、周波数を合わせると通信長がマイクを手に取り、事前に作られたマニュアルに従って偽電文を流す。

 

 

 

 

「デュロ防衛部隊本部、こちら海軍本部。応答せよ。」

 

『こちらデュロ防衛隊本部。どうぞ。』

 

「デュロ防衛隊本部へ、現在デュロより南へ100㎞の海上を不明艦隊が接近中との情報が入った。ただちに防衛艦隊全艦を出撃させよ。尚、敵に対する防諜徹底のためこの通信以降の魔導通信を禁止する。」

 

『こちらデュロ防衛隊本部、了解した。これより艦隊を出動させる。』

 

 

魔信が切られ、皆の緊張が解かれる。

 

 

「敵は掛かりましたな。」

 

「うむ。先行しているUX99へ音通魚雷にて暗号を打電せよ。」

 

 

木霊による偽情報送信は直ちに音通魚雷にて紺碧艦隊より先行してデュロ沖20㎞地点の海底に着底していたUX99に伝えられた。

 

 

 

「オットー艦長、旗艦より電文です。」

 

「来たか。内容は?」

 

「"木霊は山彦となった"……以上です。」

 

「作戦開始の合図だな……アップトリム5、深度100へ。」

 

 

UX99はその場から水中100メートルまで浮上し、ソナーの出力を最大にする。

 

 

 

「……………………艦長、本艦前方、距離20㎞より水上を航行する多数の音源を探知。」

 

「数は?」

 

「10……20……30………40隻です。」

 

「間違いない。情報にあったデュロ防衛艦隊の艦数と一致する。」

 

「どうしますか?」

 

「このままやり過ごせ。ソナーから音が聞こえなくなったら浮上し、砲撃だ。」

 

 

 

敵に対潜ソナーや対潜攻撃手段は存在しないとはいえ、生粋の潜水艦乗りであるオットーと乗員達は息を潜める。

 

 

「敵艦隊、本艦上方を通過………」

 

 

艦隊はUX99の真上をゆっくりと通過していき、何も気付かず過ぎ去っていく。

 

 

「敵艦隊、ソナー探知範囲外に出ました。」

 

「よし。アップトリム5、浮上だ。」

 

「了解。」

 

 

デュロ防衛艦隊が水平線の奥へと消え去ったのを確認したオットーは浮上を指示し、UX99は浮上し、艦首より一気に海面へと浮上した。

 

 

「よし、艦首、艦尾砲塔展開っ!」

 

「艦首、艦尾砲塔ハッチ開けっ!」

 

「測距儀展開っ!」

 

 

水密用のハッチが開かれ砲塔から2本の15㎝砲の砲身と測距儀が展開される。

 

 

「全砲塔、左舷へ旋回っ!測距開始っ!」

 

 

2基の砲塔が左に向けて旋回し砲身がデュロ沿岸から北と南西へ広がる軍需工場へと向けられる。

 

 

「各砲塔旋回角よし!仰角調整完了っ!」

 

「弾種徹甲榴弾っ!一斉射を掛けて弾道を確認します!」

 

「艦長、砲撃準備完了です。」

 

「よし!発射用意…………」

 

 

オットーが手を上げ、一呼吸置き下へと振り下げる。

 

 

「撃てっ!」

 

 

合図と同時に2基の砲塔から一斉射撃が始まった。放たれた4発の砲弾は弾道を描きながら目標へと飛び去る。

 

 

 

「着弾まで10……5……弾着今っ!」

 

 

カウントダウンと同時に4発の砲弾が着弾し、派手な爆煙が上がった。

 

 

「着弾確認っ!射程よし!散布面積を広げつつ連続射撃開始っ!撃て!」

 

 

続いて、各砲塔からの機関砲のような連続射撃が始まり、耳をつんざくような砲撃音が辺りに響き渡る。

放たれた15㎝榴弾は次々と軍需工場へと着弾し、魔導砲の砲弾や砲身と歩兵用の銃火器や鎧を製造する工場と倉庫を次々と破壊していく。

 

 

「砲撃やめ!即応弾40発、射撃終了っ!」

 

「次弾装填急げ。第2目標へと向かうぞ。」

 

 

軍需工場を破壊したUX99は、次なる目標となる造船所へと向かう。

 

 

「第2目標視認っ!」

 

「砲撃始めっ!」

 

 

続いて行われた第2次攻撃でUX99は、造船所のドックや修理中の戦列艦、倉庫も全て破壊し尽くした。

 

 

 

「さて……我々の仕事はここまでだ。急速潜航っ!」

 

 

任務を終えたUX99は誰にもに見つかる事なく、海中へと姿を消し、紺碧艦隊との合流のためデュロ沖を去っていく。

 

 

 

 

 

その頃、皇都の第3外務局庁舎ではレミールとカイオスが、既に行動を開始していた。

 

 

「レミール様、日本国より作戦成功の通信が来ました。」

 

「よし!各部隊に行動を開始するよう伝えろ!」

 

 

 

 

 

 

 

続く




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