後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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少し足早でしたが皇国戦終結です。


第45話

カイオスとレミールが配下の反乱兵と共にパラディス城へと向かっている頃、城内の議場は混乱に陥っていた。

 

 

「ええい!どうなっておるのだアルデ!!」

 

「分かりません!突然、陸軍部隊が基地や海軍基地を占拠してしまったとしたしか報告が……」

 

 

ルディアスの怒鳴り声にアルデは冷や汗をかきながら恐る恐る報告する。他の幹部達も突然の事態に冷静さを欠いていた。

 

 

「他の者もどうなっておる!!」

 

「こちらも陸軍部隊が侵入してきたため状況が分かりません!」

 

「こちらも同様です!」

 

「直ぐに状況を確認するのだ!!こんな事をしでかした者を直ぐに捕らえよ!!」

 

 

この時点で皇国の政府としての機能は完全に麻痺しており、都内からは反乱軍の動きに呼応した一部の治安機構の兵士達が合流し、都内の施設は次々と制圧していく。

 

 

「レミールは!?レミールを呼べ!」

 

 

完全に頭に血が昇っていたルディアスは精神安定を図ろうとレミールを呼び寄せようとするが………

 

 

「それが……先程から連絡を取っているのですが所在が掴めません!」

 

「何だとっ!?探せ!探して何とか余の元へ連れて来るのだ!」

 

「はっ!」

 

 

何時もなら呼べば直ぐにやって来るレミールが来ない事にルディアスの精神状態は時間が経過する毎に不安定になっていく。

 

 

「陛下!!この混乱の原因が分かりました!」

 

 

 

そこへ情報局の局長がやって来る。

 

 

「何なんだ?」

 

「反乱です!陸軍の皇都防衛隊による反乱です!」

 

「反乱っ!?状況は?」

 

「皇都防衛隊を始め、皇都治安機構、陸軍の3個大隊が反乱に加わっているようで、各陸軍基地や海軍基地も彼等により占拠されたものかと………」

 

「この愚か者っ!!貴様は情報局局長として察知出来なかったのか!!」

 

「申し訳ありません!」

 

「アルデ!!直ちに配下の部隊を率いて鎮圧に当たれ!」

 

「はっ!」

 

 

アルデが議場を退出しようとした時、ドアが勢いよく開かれ、武装した兵士が勢いよく押し掛ける。

 

 

「何者だ貴様ら…グァっ!」

 

 

押し掛けてきた兵士達は瞬く間にアルデ以下の首脳達を取り押さえていき、兵士達の後ろからレミールとカイオスが現れる。

 

 

「レミールっ!?それにカイオスっ!」

 

「皇帝陛下………」

 

「そのまま動かないで頂きたい。」

 

「二人とも……これはどう言う事だ?」

 

 

ルディアスの問いにレミールが答える。

 

 

 

「見ての通りです。我が国の滅亡を阻止するため、陛下には皇帝の座から降りて頂きます。」

 

「レミールよ何の冗談だ?」

 

「冗談ではありません。貴方は元々、優しく、慈悲深い聡明な方だった…………」

 

 

 

そこまで言うと、レミールの顔付きが悲壮感なものから一転して、厳しくも真剣な顔付きへと変わった。

 

 

「ですが、先代より皇位を継承されて10年、貴方は変わってしまった。先の見えない領土拡大、武力による属領統治、一党独裁体制……先も見えない暗く、いつ国を破滅の道へと歩ませかねない貴方に国を司る資格はありません!!!!」

 

 

 

彼女のその言葉にルディアスの表情が赤くなり、座っていた席から立ち上がる。レミールを指差しながら怒鳴るように話し出す。

 

 

 

「レミールよ、貴様は日本に寝返り、我を陥れようとするのか!!お前は売国奴の汚名を被るつもりか!!」

 

「はい。勝ち目の無い戦争を続けて国を滅ぼすより、売国奴に成り下がろうと、私はこの国を救いたく思っております!」

 

 

レミールの覚悟は本物だった。

辺りを見回してもルディアスに味方をする者は既に取り押さえられ、別室に連れていかれている。

 

 

 

 

初めて見るレミールの声色と表情に驚きを隠しつつ、ルディアスは深呼吸で心を落ち着かせ、再び椅子に腰掛ける。

 

 

「我を皇帝から引摺り下ろして、国を司ると言うのなら、この混乱をどう収める?」

 

 

試すような言い方にレミールは表情と声色を変える事なく答える。

 

 

「案があります。その上で皇帝陛下には最後のお願いを聞いていただきたく思います」

 

「願い?…………………申せ」

 

 

レミールは一瞬だけ目を閉じて、息を思い切り吸い込んでから、ルディアスの目を見つめて願いを述べた。

 

 

 

「全軍に戦闘停止と、退位を国内外に宣言してください!」

 

 

 

レミールの言葉にルディアスは一瞬だけ驚いたような表情を見せるが、直ぐにいつも通りの冷静な表情に戻り、目を閉じて沈黙する。

 

 

「…………………」

 

「……………分かった。お前がそれ程の覚悟を持っているなら、余はもう何も言うまい。」

 

「陛下………本当によろしいのですか?」

 

「あぁ…………我はもう疲れた……」

 

 

 

レミールの願いを受け入れたルディアスは力なく項垂れるが、同時に何かから解放された様な表情に変わる。

 

 

「では陛下、こちらを」

 

 

レミールは皇帝専用の高出力魔導通信機を用意し、送信出力を最大に設定してルディアスにマイクを手渡す。

 

 

 

 

 

 

この直後、ルディアスの肉声による広範囲の魔導通信により皇国軍全軍に向けて戦闘停止と宣戦布告の取り消しによる軍の撤退、属領の独立容認、日本国との和平交渉開始、自らの皇帝の座からの退位を宣言した。

 

 

 

こうしてフィルアデス戦争はパーパルディア皇国の戦争放棄と、属領独立容認、日本国を含めた東洋諸国への謝罪と戦犯の引き渡しにより特に大きな混乱も起きず終結した。

 

 

 

 

続く




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