後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第47話

中央歴1639年12月20日

 

 

第二文明圏列強国『ムー』の首都オタハイト近郊の『アイナンク空港』

 

 

「いきなりの呼び出しとは……それも軍と外務省からとは。」

 

 

技術士官マイラスは何時もの如く、日本とグラ・バルカス帝国の情報に関する仕事をしていたら、突如として軍を通じて外務省からの呼び出しを受けて、アイナンク空港の空軍基地にやって来ていた。

 

 

「失礼する。」

 

 

控え室で待ってると、ドアが開きムー軍の制服と、外交用礼服を着こなした外務省関係の男の計二人が入ってくる。マイラスは通例通り、その場で敬礼をする。

 

 

「すまないなマイラス君。急に呼び出してしまって。」

 

「いえ。それより、私が呼び出しを受けたのは如何なるご用件で?」

 

「それについては、こちらに居られる外務省の方から……」

 

 

軍服を着た軍人の横に居た、外務省の若い外交官がマイラスに説明を始める。

 

 

 

「どうも、外務省のユウヒと申します。では本題に入る前に、マイラスさん。日本国の事についてはこ存じですよね?」

 

「はい。先日、パーパルディアを事実上降伏させた新興国家の事ですね。それが?」

 

「実は今から1ヶ月前にパーパルディア担当のムーゲ大使から連絡がありまして、日本国が我が国との国交開設の交渉を行いたいとの連絡がありまして……」

 

「え?」

 

 

マイラスは突然の事に驚く。

何せ自国と同じ科学文明国で、尚且つムーを遥かに上回る技術力を持ち、情報部がグラ・バルカス帝国と同様に要注意国と指定していた噂の日本国が自ら接触を図ってきたのである。

 

 

「それは本当ですか?」

 

「はい。」

 

「しかしそんな話は情報部には届いていませんが…」

 

「それは仕方がありません。何せ当時の日本国はパーパルディアとの戦争中で混乱が続いていて、しかも口頭での申し出だったものでしたから、つい先週まで報告が本国に入って来なかったのです。」

 

「成る程……それは仕方ありませんな。で、その後はどう言った形で話が進んだのですか?」

 

「取り合えず政府決定でムーゲ大使を通じて12月中に交渉を行うとの方向で調整していたんです。ですが具体的な日時については、日本国側より戦争の後処理が残っているとの事で、ある程度一段落つき次第に我が国に特使を派遣して交渉を行うとの事だったのですが、今から数時間程前に沿岸警備隊から連絡があって、マイカル沖に日本国の特使を乗せた船がやって来たとの報告が入り、日本国の情報について人一倍研究している貴方に来てもらったのです。」

 

「そこで君に日本国についての技術レベルを可能な限り探って欲しいのだよ。」

 

 

ユウヒの話にマイラスは内心、興奮を覚えた。

 

 

(あの日本国との接触に立ち会え、技術力を見るチャンスがこんなに早く巡って来るとは!)

 

 

偶然と言う幸運にマイラスは神に感謝する。

 

 

「今、日本国特使を乗せた日本の軍艦はマイカル沖に待機させてある。あと30分程で特使を乗せた日本の軍用機がここに到着する予定だ。」

 

「本当ですか!?」

 

 

マイラスは今まで写真でしか見た事が無かった日本の軍艦を遠くからでも良いから見たいと言う衝動に駆られていた。

 

 

「恐らくここの空港の管制塔からも見える筈だ。君にも日本の軍艦を見てもらいたい。」

 

「是非っ!」

 

 

マイラスは我先にと控え室から管制塔へと駆け足で向かう。

 

 

「おおっ!」

 

 

管制塔からは確かに、沖に待機している戦艦とおぼしき艦影が1隻と空母らしき艦影2隻の他に巡洋艦と駆逐艦多数が見える。

 

 

「ん?あの戦艦は何だ?」

 

 

マイラスは双眼鏡で戦艦の艦影に違和感を感じた。

 

 

「艦首が異様に長いし、艦橋基部には大型機格納庫らしき構造物があり、主砲が艦尾にしか無い上に他に目立った武装が見当たらない………あんな戦艦、情報にあったかな?」

 

 

マイラスは、日本からムーへの特使の護衛の任務を受け持っている紅玉艦隊旗艦の米利蘭土を見て疑問を感じる。

実際に米利蘭土は同じ日本海軍の将兵から見ても、奇妙この上無い艦であり、鹵獲したコロラド級戦艦を大改造しているため、艦首が日本のオリジナル、艦尾はメリーランドだった時の艦影が残っているので違和感を感じるのである。

 

 

「お!来たかな?」

 

 

 

やがて、紅玉艦隊所属の空母紅鶴から特使を乗せた艦上電子偵察機『星電』が、姉妹艦の白鶴からは護衛の電征Ⅲ型が3機飛び立ち、アイナンク空港に向かってやって来る。

 

 

「情報通りだな………主翼と一体化した全金属製単翼機で、速度はマリンの倍ときている。」

 

 

マイラスは星電を護衛している電征に目をつける。

電征と星電の飛行する速度に、エスコート役を担う、ムー軍の主力戦闘機『マリン』が大きく引き離されていき、マリンは必死に追い付こうとしているのが分かる。

 

 

 

「我が国では研究段階の全金属製低単翼機を実用化している所を見ると、やはり諜報員からの情報は正しかったみたいだな。」

 

 

 

そして15分後、空港上空を旋回飛行していた星電が電征より先行してアイナンク空港の滑走路へと着陸し、後から電征3機も着陸し、誘導員によって所定の位置へと移動する。

 

 

「さて……行きましょう。」

 

 

マイラスはユウヒと軍人と共に星電の所へと向かい、特使を出迎える。

 

 

「ムー国の皆様、お初にお目に掛かります。私は本日、日本国より貴国へ特使として遣わされました御園と申します。こちらは補佐官の佐伯です。」

 

「私はムー国外務省より本件の担当を致します、ユウヒと申します。こちらはムー国のご案内を勤めます、技術士官のマイラスです。」

 

「マイラスと申します。本日はよろしくお願いいたします。」

 

 

 

両国の代表はお互いつつがなく自己紹介と挨拶を交わす。

 

 

「では、本日は長旅のお疲れを癒すために、首都にあるホテルへと移動します。私についてきてください。ですがその前に、お見せしたい物があります。」

 

 

マイラスは空港の駐車場へ行く前に、空港の空軍基地の一角にある格納庫へと二人を案内する。

格納庫には、1機のマリンが格納されておりマイラスは、日本の技術関係に探りを入れるため、マリンについての説明に入る。

 

 

「これが我が国の主力戦闘機マリンであります。最大速度はワイバーンよりも速い360キロ、航続距離850キロ、武装は7・7㎜機銃を2基備えています。」

 

「これは……」

 

「海軍の95式にソックリですね。」

 

 

佐伯が発した言葉にマイラスは反応する。

 

 

「(そっくり!?)」

 

「このタイプの複葉機はめっきり見なくなりましたね。今は軍から払い下げられた機体を民間航空会社や個人所有の機体が飛んでいるだけですからね。」

 

「(めっきり見なくなった!?民間航空会社に個人所有機だとっ!?)」

 

 

ムー国でも最新鋭に当たるマリンにそう感想を述べる佐伯にマイラスは話しかける。

 

 

「失礼ですが、貴国では民間人も航空機を持つ事が出来るのですか?」

 

「はい。熱心なコレクターや一部の富裕層に留まっていますが、我が国では航空機の個人所有は法律で認められています。」

 

「成る程……先程、貴方は複葉機は見なくなったと仰っていたようですが、貴国も複葉機を使っていたのですか?」

 

「はい。我が国でも10年以上前までは複葉機が主力だったのです。しかし軍用機として我が軍の航空機は完全に低単翼機や、レシプロエンジンよりも高出力のターボプロップエンジンやより高い出力を誇るジェットエンジンを搭載した機体に取って変わっています。」

 

 

佐伯の答えにマイラスは「やはり」と言った表情となる。

 

 

「成る程、貴国にも航空機向きのエンジンがあるのですね。是非ともその構造や性能を見てみたいです。」

 

「我が国と国交を結んで頂ければ、法律が許す限り貴国に対して技術に関する輸出が出来ますよ。」

 

 

マイラスは更に探りを入れるため、二人にカマを掛ける。

 

 

「ところで貴国の航空機は一番速い物でどれくらいの速度が出るのですか?」

 

 

その質問に関して御園と佐伯は顔を合わせて、小声でヒソヒソと話し合う。

 

 

(どうしますか?一応我が国の民間書籍にも記されていますが……機密に触れそうですが……)

 

(佐伯さん、何れも国交を結べば性能は知られますが、今はその段階ではありません。何とか誤魔化してください。)

 

 

御園の頼みに佐伯は再びマイラスに向き直る。

 

 

 

「えぇと……そうですな……詳しい事は機密ですし、私は航空機の分野に関しては知識は乏しいのですが、我が国のある航空機の速度は600キロを越えるものがあります。」

 

 

「そう……ですか………」

 

 

 

マイラスはもう少し探りを入れるつもりだったが流石にこれ以上の事を聞いていも答えてくれないと判断し、二人を駐車場へ案内しマイカルのホテルへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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