後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第48話

中央歴1639年12月21日

 

マイカル市内のホテルで一泊した御園と佐伯は、ホテルロビーでマイラスから今回の国内見学と、ムー国王との公式会談の事についての説明を受けていた。

 

 

「以上が本日のスケジュールとなります。何かご質問はありますか?」

 

「では………」

 

 

佐伯が挙手をして質問をする。

 

 

「今回のマイカル市内の見学で、貴国の最新鋭艦を見学させて頂けるとの事ですが、新鋭艦の、しかも戦艦を我々に見せて不都合とはお考えにならないのでしょうか?」

 

「いえ、これは列強国同士では普通に行われている事なのです。無論、全てを見せる訳ではありませんが、戦艦はその国にとっては科学技術の結晶なのです。互いに力を見せあい、国家間同士でのパワーバランスを保つための、一種の砲艦外交のような物なのです。」

 

 

マイラスの述べる通り、ムーを含めた列強は砲艦外交も大切な外交手段と考えており、特に戦艦は軍事力と科学力を同時に示すには都合の良い物であるため、戦艦そのものが国を示すための物と言っても良い。

 

 

「そうなのですか。では我が国も貴国に習って、そう言った外交手段が取れるように報告する必要がありますな。貴重なご教授ありがとうございます。」

 

「いえいえ。私はプロの外交官ではありませんし、我が国の外交の基本をお答えしただけに過ぎません。」

 

 

 

それから、細かい日程について確認した後、迎えの車に乗り込んだ3人はホテルを出発し、ムー国の歴史についての説明を行うため、マイカル市内にある歴史資料館へと移動した。

二人はマイラスから説明を受けながら資料館内で展示されている資料や展示品を見て回る。

 

 

「では我が国の歴史についてのご説明に入ります。まず、各国には神話とか言い伝え程度としか信じて貰えていないのですが、我が国は元々この世界の住民では無いのです。」

 

「え?」

 

「つまりどう言う事なのですか?」

 

「実は我が国は、12000年程前に、この星に大陸ごと転移してきた転移国家なのです。」

 

 

マイラスから語られた事実に二人は驚きを隠せなかった。

 

 

「そして、今私の手元にあるこの地図は、我が国が元居た惑星を表した物であります。」

 

 

マイラスが資料館の資料室から持ってきた"ある物"を取り出す。

 

 

「これは、惑星にある大陸を示すための……」

 

「地球、ですね。」

 

「え?……御園殿、今なんと?」

 

「地球です。この地図に記されている大陸は間違いなく地球の物です。」

 

 

マイラスは、自分達しか知らない故郷の惑星の名前と地図を二人が知っている事に、驚きで表情が固まってしまった。

 

 

「これは……大陸の配置に少し差異があるが、間違いなく地球の物に間違いない!」

 

「見てください御園さん。ここに知らない大陸がありますよ……こんな大陸、前世界にありましたか?」

 

 

佐伯は見覚えのない大陸を指差す。

 

 

「マイラス殿、この大陸は一体………」

 

「あ……ここは我が国があるムー大陸で、南にあるこの大陸はアトランティス大陸です。前の世界ではこのアトランティス大陸にあったアトランティス帝国は我が国と世界を2分する程の国力を持っていました。しかし我が国が居なくなって、前世界はアトランティスが支配しているでしょうね………因みに……ここにある小さな列島はヤムートと言って、我が国唯一の同盟国でありました。」

 

 

マイラスが指差したのは、ユーラシア大陸の下に位置する小さな列島だった。

 

 

「これは……間違いない!日本列島………我が国だ!」

 

「確かに……間違いありません、日本です。」

 

 

御園と佐伯の驚きようにマイラスは疑問の表情を浮かべる。

 

 

「御園殿、佐伯殿、このヤムートについて御存じなのですか?」

 

「えぇ…………マイラスさん、突然ですが我が国の説明をさせて頂くと、貴方が指差したこのヤムートと呼ばれる列島は、我が国…………つまりこれは日本国なのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

御園の説明にマイラスは全身が固まるような衝撃が走った。

御園は手にしていたバックから、世界地図を取り出して机の上に広げる。

 

 

 

「これが前世界における我が国が居た地球を示す世界地図です。ご覧ください、貴方がヤムートと言ったこの小さな列島は我が日本国なのです。」

 

「…………」

 

「そして先程説明して頂いたアトランティス大陸は、陸地の形状から今は南極大陸と見て間違いありません。おそらく貴国が消えた事で地軸が相当ずれて、今の位置に動いたのでしょう。」

 

 

マイラスは興奮し驚いていた。

何せ、いま目の前に居る二人の話が本当なら、これは国を揺るがす程の歴史的大発見であるので、嫌でもそうなる。

 

 

「もしお二人の話が本当なら…………これは……歴史的な………時空を越えての大発見になりますよ!!日本国がかつてのヤムートなら、我々の出会いは10000年振りの再会となります!」

 

 

マイラスは二人の手を取る。

 

 

「この事を直ぐ上に報告いたします! かつての友好国と再会できたとなれば、政府は貴国との国交開設に前向きとなるでしょう!」

 

 

直ちにマイラスは外務省へ直通電話にてこの事を報告し、外務省を通じてムー国王や議会にもこの事実が伝えられ、政府は直ちに御園と佐伯が国王と会談するための準備を始める事となった。

 

 

 

 

歴史資料館でムー国の歴史についての説明を受けた後に、マイラスは海軍基地が置かれているマイカル港の埠頭に停泊している、ムー海軍の最新鋭艦ラ・カサミ級戦艦1番艦『ラ・カサミ』へと案内する。

 

 

「これは………我が国の敷島型戦艦と瓜二つですな。」

 

「シキシマ型戦艦?………貴国にはラ・カサミ級戦艦を上回る戦艦があると聞きますが、ラ・カサミにも似た戦艦があるのですか?」

 

「はい。今から40年程前………前の世界での話になりますが、我が国は隣国のユーラシア大陸にある帝政ロシアと戦争をしていたのです。その時、ユーラシア大陸と日本列島の間にある日本海にて、ロシア海軍のバルチック艦隊と我が国の連合艦隊が歴史的な大海戦を行ったのです。その時、連合艦隊旗艦だったのが、目の前のラ・カサミ級戦艦に酷似する敷島型戦艦4番艦の戦艦三笠だったのです。」

 

「おぉ…そのミカサとラ・カサミ……名前が似ている所を見ると何か運命を感じますな…………ところでその海戦の結果は?」

 

「はい。当時、艦隊を指揮していた連合艦隊司令長官『東郷平八郎』元帥の冷静な判断力による艦隊指揮で我が国は見事に数で勝るバルチック艦隊を打ち破ったのです。今は三笠は現役を退き、横須賀で記念艦として余生を送っています。」

 

 

御園の説明にマイラスは、ラ・カサミ級戦艦とほぼ同等の性能を持つ三笠が、日本人からみれば40年近く前の旧式戦艦である事を知り、日本の科学技術はムーよりも遥かに進んでいる事を知った。

以前のロデニウス戦争とフィルアデス戦争で、諜報員が入手した日本海軍と陸軍の戦闘能力に関する報告で、頭では理解しているつもりだった。しかし実際にその当事国だった日本人からその話を聞かされれば、信憑性は非常に高まる。

 

 

 

「では、最後に我が国の国王陛下との会談に向かいましょう。」

 

 

一通り案内を終えたマイラスは、今日の日程における最後の仕事である、国王ラ・ムーや首相を始めとした首脳陣との会談のために二人を議事堂へと案内した。

 

 

 

 

 

 

それから数日を経ずして、日本とムーは互いに転移国家である事、かつての友好国であり、10000年振りの再開という両政府のメディアの報道を聞いた両国民の後押しを受けて、両国間による正式な国交を締結するに至り、日本は新たに、そして頼もしい味方を得る事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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