日本武尊に乗艦したマイラスとラッサンは大石直々により、目の前に一際存在感のある日本武尊自慢の45口径51㎝主砲塔の説明を受ける。
「これが本艦の主兵装となる、主砲です。」
「これは……何という大きさ……」
「ラ・カサミの主砲よりも一回り……いや二回りは大きいぞ……大石閣下、この砲の口径は如何程で?」
「う~む………」
戦艦の主砲の直径や口径は基本的には機密扱いとなっているが、この世界の砲艦外交では互いの最新鋭艦の性能を全てでは無いが公開する事となっているため、ムー国との外交問題と軍の機密を守るための両方の観点から、大石はこう答える。
「そうですな、貴国のラ・カサミ級戦艦の1・5倍はありますかな?」
「ラ・カサミが30・5㎝砲だからそれに1・5を掛けるとして………………………っ!!?」
マイラスは脳内で素早く計算し、日本武尊の主砲口径の大きさに驚いた。
「45㎝砲…………」
「45㎝っ!?」
ラッサンは驚いた。
実際は51㎝砲だが、大石は敢えてラ・カサミ級の主砲口径を基準にして51㎝砲に近くなる数値で答えたのである。
「なんて事だ……既に火力では負けているのか……」
ムー国では既にラ・カサミ級戦艦の後継艦となる新型戦艦に搭載予定の35・5㎝砲と口径長を長くした30㎝砲がようやく試作段階に入っていたのだが、目の前の日本武尊の45㎝砲はそれらを遥かに上回る口径長と直径を持っている。
「因みに、この砲の発射速度と装填方法は?」
「発射速度は砲弾が大きくて重い分、従来の艦載砲には劣りますが、それでも完全な自動装填装置による恩恵で決して遅くはありません。」
「完全自動装填っ!?この砲への砲弾装填に人力は必要ないのですか?」
「はい。本艦の主砲弾は人力での装填は不可能ですからな。弾薬庫から砲弾と装薬の砲塔内部への揚弾、砲身への装填は全て全自動となっています。」
ラ・カサミ級戦艦は敷島型と同様に、弾薬庫から砲弾と装薬の揚弾は自動となるが、砲身への装填はレイルの上に乗せられた砲弾を人が砲身へ押し込んで装填するタイプであり、完全自動装填装置は今のムーでは実用化はかなり先となる。
「いやはや…既に私はこの艦の性能に驚きです。」
「本艦の凄い所はまだありますよ………」
そこへ原が大石に駆け寄る。
「長官、そろそろ……」
「ん?もうこんな時間か………御二人とも、本艦はこれより訓練航海に向けての出港準備に入ります。私は出港準備のため第1艦橋に上がりますが、共に参られますか?」
この申し出に、二人は二つ返事で了承した。
「はい!是非お願いします!」
「分かりました。ではこちらへどうぞ。」
大石の案内でマイラスとラッサンは日本武尊の檣楼基部からエレベーターに乗り込み、第1艦橋へと昇る。
「司令長官、入られます!」
既に第1艦橋では富森艦長以下の、艦の首脳が集まり各々の配置から、上がってきた大石に敬礼をする。
「皆、今日は素敵なゲストをお迎えした。ムー国より参られた、マイラス殿とラッサン殿だ。」
「ムー国より日本国の招待を受けてやって参りました、技術士官のマイラスです。」
「同じく戦術士官のラッサンです。本日はよろしくお願いいたします!」
二人の自己紹介に全員が敬礼し、富森艦長が二人に歓迎の言葉を述べる。
「ようこそ日本武尊へ。私は本艦の艦長を勤める富森正因であります。本日はどうぞ当艦を心行くままご見学なさってください。」
そうこうしているうちに、出港準備が整い、日本武尊は柱島泊地を出港し、訓練海域の周防灘へと進路を取った。
続く
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