後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第53話

中央歴1640年2月5日

 

京都府舞鶴市舞鶴港の軍港では、多数の輸送艦が陸上からボートを使って多数の戦車や装甲車、トラック、上陸用舟艇、物資等の積み込みを行っていた。

 

 

「師団長、物資並びに資材の積み込み、あと一時間で完了します。」

 

「分かった。全て予定通りだ。」

 

 

作業を見守っていた海兵師団の師団長『九鬼鷹常』中将が部下からの報告を受け、港の広場で整列していた完全武装の海兵師団の兵士達の前の壇上に立ち、マイクを手に、全員と目を合わせながら訓示を始める。

 

 

「…………えぇ海兵師団諸君、我々は新世界における初の実戦に就く事になった。我々の目的はトーパ王国に突如として現れた正体不明の軍事勢力を現地の軍と共同し排除する事にある。これまで戦ってきた相手とは一線を画す相手であるが、日頃の厳しい訓練で積み上げてきた能力を最大限に活かしつつ、命を無駄にするような行動はこれを厳禁する事を胸に任務に当たって欲しい。それと………私が考えた此度の作戦名を発表する。」

 

 

そう言って九鬼は懐から折り畳まれた半紙を取りだし、それを広げて皆に向ける。

 

 

 

「作戦名は……『鬼ヶ島討ち入り作戦』だ。」

 

 

 

その作戦名について、整列していた兵の一人が質問を投げ掛ける。

 

 

 

「閣下!鬼ヶ島とは桃太郎に出てくるあの鬼ヶ島ですか?」

 

「そうだ。今回の作戦で鬼となるのは魔王軍、それを退治する我々は桃太郎と言う訳だ。」

 

「成る程、我々は童話の桃太郎に習い、鬼退治をしに行く訳ですな。」

 

「あぁ……スケールは違うが、皆で桃太郎になりきろうじゃないか。」

 

 

そこへ若い兵士が声を挙げる。

 

 

「閣下!ではきび団子はどうしましょう?きび団子が無ければ我々桃太郎は力が出ませんぞ!」

 

「そう言うと思って、岡山から特製のきび団子を人数分用意してある。移動中に食べるといい。」

 

「やったぁ!!」

 

「お前はきび団子が食べたいだけなんじゃないのか?」

 

 

側に居た上官の兵士が問い掛ける。

 

 

 

「大丈夫であります!!皆が食べなかった分は私が食べます!」

 

「馬鹿!調子に乗って食べ過ぎて軍医の世話になっても知らんぞ!」

 

「自分の腹は戦艦の燃料タンクには負けません!!」

 

「アホ!調子に乗るなっ!」

 

 

兵士の冗談に皆が笑い、九鬼達も笑い、緊張で凝り固まっていた雰囲気が一気に和らいだ。

そして和やかな雰囲気で訓示が終わると、兵士達は直立不動で一斉に敬礼し、九鬼もそれに答えるように敬礼で返した。

 

 

 

「以上を以て訓示とする。各員は直ちに輸送艦への乗り組みを開始せよ。解散っ!!」

 

 

その命令と共に海兵師団は一斉に迎えのボートに乗り込み、輸送艦へと乗り込んでいく。

そして、雨が降り辺りが薄暗い中、海兵師団を乗せた輸送艦隊は沖で待機していた護衛の旭日艦隊と合流し、トーパ王国へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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