後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第55話

城塞都市トルメス

 

 

南側にある要塞への入り口では、トルメスに駐留する王国騎士団の司令官である騎士長アジズが、援軍としてやって来る日本軍の到着を待っていた。

 

 

「………」

 

 

アジズは何も言葉を発さず、仁王立ちで門の前で待ち続ける。

 

 

 

 

 

沈黙が続く中、塀の上に居た衛兵が叫ぶ。

 

 

「アジズ様、見えました!日本軍です!」

 

「来たか!」

 

 

アジズは衛兵が指差した方向を見る。

すると、街道の向こうから茶色に塗装された海兵師団の車列が近づいてくる。

 

 

「おぉぉぉ~!!!」

 

 

8個の巨大な車輪がついた獅子を先頭に、鉄で出来た帯のような物を足にくくりつけた鉄獅子と、荷台に幌をつけた獅子が列を成している。

 

 

「あれが伝説の大陽神の使いの祖と言われる者達か………」

 

 

アジズは、歴史書で見た大陽神の使い達が使役していた鋼鉄の鉄獅子の記述と当て嵌めて、魔物に占領された町の奪還が可能になるかもしれないという希望を抱いた。

 

 

 

 

車列はアジズの目の前で停止し、先頭の指揮通信車からアジズの部下のモアとガイ、百田と犬神の二人が降りてくるとアジズの前へとやって来る。

 

 

「アジズ様、日本軍の方々をお連れ致しました。」

 

「うむ、ご苦労。」

 

 

モアがアジズに口頭で報告を済ませると、百田と犬神がアジズの前に立ち、両足を揃えて直立不動で海軍式敬礼を行う。

 

 

「日本国海兵師団、トーパ王国派遣隊先遣隊の指揮官を勤めます、百田太郎であります。」

 

「同じく、副官の犬神剛であります!」

 

「城塞都市トルメスの司令官を勤めています、アジズと申します。今回は我々のために援軍に来て頂き、ありがとうございます。では早速ですが、状況の説明を致しますので、司令部へとご案内します。」

 

 

アジズの案内で百田と犬神は護衛の1個分隊を連れて、モアとガイの二人と共に司令部が置かれた建物へと案内され、司令室にて説明を受ける。

 

 

「現在、町は魔王軍の占領下に置かれているのはご存じかと思われます。魔王は街の中央にあるミナイサ地区の館を寝床にしているらしく、外へは出てきていません。」

 

「敵軍の配置は?」

 

「街へ出入りするための門は全て配下の魔物が見張っており、偵察に出した斥候からの情報では東西南北全ての門にはオークが2体、コブリンが10体配置されています。」

 

「住民達が避難しているという地下へ続く入り口は何処に?」

 

「住民達が避難している地下シェルターへの入り口があるのは、中央広場側にある大きめの廃倉庫の床下です。未だに奴等は地下シェルターの存在や、入り口の在り処については把握していないと思われますが、時間の問題でしょう。中央広場へ続く大通りにはレッドオーガとブルーオーガのどちらか1体が居ます。」

 

 

 

アジズが用意した地図には、偵察兵が収集した情報を基に作成された敵の配置図が置かれている。

百田と犬神はそれを見て作戦を立てる。

 

 

「中央広場の赤鬼と青鬼も厄介そうだが、辺りを固めているコブリンとオークの化け物共もかなり厄介だな。」

 

「地図に書かれている敵軍の配置から、北門が手薄です。ここを戦車を先頭にして強硬突入し、一気に広場へと進出、戦車と装甲車が敵軍を引き付けている間に住民達を地下から連れ出してトラックに分乗させ、収容完了と同時に撤収………と言う方向でどうでしょうか?」

 

「うむ……アジズさん、レッドとブルーオーガ、オークとコブリンの戦闘能力はどうなのでしょうか?」

 

「オークとコブリンは人間より力はありますが我々でも倒せます。しかしオーガは人間の何十倍と言う力と疲れを知らない程の体力があり、尚且つ動きが素早い。それに体毛は針金のようになっており剣も槍も弓矢も通りません。バリスタなら通りますが。」

 

 

 

犬神はレッドオーガとブルーオーガの2体を今作戦に於ける脅威と認識した。

 

 

「中佐、オークやコブリンなら歩兵の出番ですが、オーガは戦車か装甲車でないと対抗できないのは目に見えています。作戦として指揮下にある5式改3両のうち2両と、装輪装甲車2両をオーガ用に配置させ、残りの車両は雑魚用に配置させましょう。」

 

「その方が良いな。アジズさん、今回の救出作戦に騎士団の団員10名程で構いませんから、お貸し願いないでしょうか?」

 

「分かりました。モアを指揮官に10名を付けましょう。ガイ、貴様はどうする?」

 

 

アジズはガイに問い掛ける。

 

 

「無論、付いていきます。友人のモアと共に敵と戦えるなら誰の指揮下に入ろうと構いません。」

 

「分かった。百田殿、これで如何でしょうか?」

 

「了解しました。では早速部隊編成を……」

 

 

 

 

その時、硝子が割れる音が響き渡る。天井に張り巡らされていたステンドグラス割れ、そこからドス黒いオーラを纏い、黒い羽根を生やした怪物が現れる。

 

 

「貴様は………魔王側近のマラストラスっ!」

 

 

アジズがそう叫び、その場に居た騎士団の団員と百田達が身構える。

 

 

「ホホホホ……人間共の頭を打ち取るために来てみれば、良い情報が手に入りました。魔王様に力をつけてもらうための人間達は地下に居るのですかぁ~? これは盲点でした~」

 

 

マラストラスは先程の会話から、魔王のエサとなる住民達の情報を伝えようと、足早にその場から飛び去ろうとする。

 

 

 

「させるかっ!!」

 

 

 

百田はマラストラスを逃がすまいと、腰のホルスターから14年式拳銃を取り出し、両手で構えると同時に向けて連射する。

 

 

「グァっ!」

 

 

14年式から放たれた8㎜南部弾はマラストラスの羽根に穴を開け、空を飛ぶ能力を失い不様に床に落ちる。

 

 

 

「人間が………私の羽根に傷をつけるだと?クソっ!」

 

 

マラストラスは悪態をつくと、片手に黒い炎の塊を作り、百田に向かって投げつける。

 

 

「チィっ!」

 

 

だが百田は横に飛び退いて咄嗟にそれを避ける。

 

 

「中々やるようだな人間よ………なら、これは避けられるか!」

 

 

今度は両手から炎を出して百田に投げるが、これも百田は姿勢を低くしてギリギリで避けられた。

 

 

「これも避けるか!小賢しい人間め!」

 

 

マラストラスは今度は両手を合わせて先程よりも特大の炎の塊を作ろうとする。

 

 

「させるか!」

 

 

百田は腰から提げていた軍刀を抜刀し、その場から一気に駆け出してマラストラスの頭上から刀を振り下ろす。

 

 

「ギャァッッ!!」

 

 

振り下ろされた刀の刃は、マラストラスの頭部を真っ二つに切り裂いた。傷口からドス黒い蛸墨のような液体が吹き出し、百田の顔と服に飛び散る。それにかまわず飛び下がると、百田は護衛に射撃を命じた。

 

 

「撃て!」

 

 

命令を受けた海兵が手にしていたステンガンMkVサブマシンガンによる一斉射撃が始まり、虫の息のマラストラスの体を穴だらけにしていく。

 

 

 

「撃ち方やめ!」

 

 

 

一斉射撃が終る頃には、マラストラスは完全にトドメを刺され、体が砂のように溶けて、やがて消えてしまった。

 

 

 

「あのマラストラスを……………百田殿、マラストラスを滅していただきありがとうございます。」

 

「いえ。………先程このマラストラスと言うのは魔王の側近と言っていましたが?」

 

「はい。古文書にもマラストラスは魔王の側近兼護衛を勤めていたとあります。」

 

「となると……生かしておくべきでした。そうすれば魔王軍の情報が得られたかも………」

 

「恐らく捕らえた所で喋らないでしょう。我々の脅威となる前に倒せて良かったと思います。」

 

 

 

魔王の側近マラストラスを倒すという、ある意味で魔物に対する初戦果を挙げた海兵師団と百田達。彼らとアジズ達は、それを喜ぶ間も惜しんで作戦案を練り上げ、正午に救出作戦を決行する事になった。

 

 

 

 

 

 

続く




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