「各員、乗車開始っ!!」
トルメスの北門へと終結した海兵師団と、モアの指揮下にある王国騎士団20名が其々に割り当てられたトラックや装甲車へと乗り込んでいく。
「中佐、各員乗車完了しました!」
「よし。我々も行くぞ。」
全員の乗車を確認した百田は指揮車へと乗り込もうとする。
「百田殿。」
見送りに来ていたアジズが百田に声を掛け、百田は振り返る。
「アジズさん、騎士団20名お借りいたします。必ず住民達を救い出します。」
「お願いします。」
百田はアジズに敬礼し指揮車へと乗り込む。
「全車、前進っ!」
救出部隊の車列はトルメスの北門から、5式改を先頭に町に向けて出撃した。
出発後、百田は指揮車内で作戦に向けての最終確認を行う。
「少佐、目的地の北門到着までの予想時間は?」
「道中で魔物の邪魔が入らなければ、30分後には到着できます。」
「分かった。それと、海軍と王都へに居る本隊との無線通信は大丈夫か?」
「はい。海軍と本隊の無線には既に周波数を合わせてあります。」
「完璧だ。後は実際に会敵してからという事だな……」
百田は未知の魔物を相手にする事への一抹の不安を感じつつ、指揮車内で現地到着までの間、心を落ち着かせるため瞑想に入る。
救出部隊は途中で敵に遭遇する事無く、当初の予定通りに町の北側へと回り込むルートを進み、町の入り口から1キロ地点の森の中にて停止。『城島仁史』大尉が指揮する1個小隊を偵察に出した。
『こちらキジ、やはり北門の警備はオーク2体とコブリン10体が配置されています。』
「こちら桃、周囲に他の戦力は確認できるか?」
『周囲にその他の戦力は確認できません。』
「了解した…………さて少佐、作戦開始のタイミングだが……」
百田の問いに犬神が答える。
「直ぐに実行するべきだと判断します。奇襲するなら夜間が適切ですが、相手は魔物という未知の敵が相手ですし、夜となれば充分な夜戦装備を持たない我々は不利となる可能性が大きいです。事前情報にあった各門の警備の配置から考えると、敵も恐らく我々の夜襲を警戒していると思われ、昼間に襲撃してくるという事は殆ど想定していないと思われます。」
「流石は少佐だ。事前情報だけでそういう事まで、考えているとは。」
「いえ……これは今まで経験した実戦での例でであって、この推測が魔物にも当てはまるかどうかは……」
「魔物と言えど知恵はある。当然、夜襲を警戒している筈だ。昼間の今なら奴等が油断している可能性が大きい…………やるか?」
百田の判断で救出作戦は直ちに実行に移され、作戦通り5式改2両が先行して北門へ向け突入を開始した。
「指揮車から各車へ!北門へ向けて突撃っ!」
『猿渡学』少佐率いる5式改2両はエンジン出力を挙げると、ほぼ全速力で草むらを掻き分け、木々を薙ぎ倒し、森から飛び出すと、北門へ向け進み続ける。
「なんだあれはっ!?」
「化け物だぁぁ!化け物だぁぁぁ!!」
北門を警備していた魔物は突撃してくる5式改に慌てふためきながらも、指揮するオークの命令で戦闘態勢を整える。
「バリスタだ!バリスタを出せ!」
北門の扉が開かれると巨大なバリスタが姿を表し、コブリンが鉄製の尖った矢をバリスタに装填し、照準を先頭を走る猿渡の5式改に合わせる。
「相手はやる気だな…………装填手、榴弾装填っ!砲手、目標は前方の対戦車兵器!」
装填手は弾薬庫から榴弾を取り出して砲に装填し、砲手は目の前のバリスタに向けて照準器の照準点を合わせる。
「撃てっ!!」
75㎜戦車砲から放たれた榴弾は、ようやく発射態勢に入っていたバリスタをコブリンごと吹き飛ばした。
「続いて榴弾、目標は北門………撃て!」
2発目に放たれた榴弾は北門の扉を粉々に吹き飛ばした。生き残りのコブリンとオークは5式改に敵わないと見るや、手にしていた剣や槍を持ち、全速力で突撃してくる。
「機銃で残りの雑魚を片付けろ!撃て!撃て!撃て!」
砲塔の同軸機銃が発射され、向かってくる残りの敵を排除していく。
「よし!……こちら猿1、北門を確保!繰り返す!北門を確保した!」
猿渡からの報告に百田は決断を下した。
「これより市街地へ突入する!全車前進っ!!!」
待機していた本隊が、5式改が切り開いた道を通って森から出て来る。5式改の援護の元、町へ向け全車が突入した。
続く
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