後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第57話

市街地へと突入した救出部隊は、目的地の町中央広場へと続く中央通りに向かって進んでいた。百田は車内で地図を広げて中央通りへ続く近道を探っていた。

 

 

「仕方ない……………猿渡!右の住宅街を突っ切れ!」

 

『突っ切れとは言いますが、建物を破壊するのは不味いのでは?』

 

「構わん!俺が責任をとる!」

 

『了解!突っ切ります!』

 

 

猿渡の5式改はその場で停止し、超信地旋回で車体を右に向けると、エンジンを吹かして住宅街に向けて突っ込んだ。

 

 

「後で賠償金請求されないですかね?」

 

「心配するな……その時は魔物のせいにでもするさ。」

 

 

部下の心配に猿渡は軽く答える。

木造と石造りの建物をブルドーザーのように破壊しながら進み、5式改の後ろを本隊が続く。

 

 

「出たぞ!」

 

 

数件の家を破壊しながら進み続けると、中央通りへと出て、そのまま一直線に広場へ向けて前進する。

 

 

 

すると、道の向こうに中央広場が見えてきた。

 

 

 

「見えたぞ!!」

 

 

「ん?…………いかん!!敵襲だ!」

 

 

広場への入り口近くに達した時、回りの建物の中からガラス窓を突き破って、武器を携えたオークとコブリンの集団が襲い掛かってくる。

 

 

「クソ!各車はトラックを守りつつ、各個自由射撃を行い、全速で広場へ突入っ!!」

 

「撃ち方はじめ!!」

 

 

5式改と装輪装甲車に乗り込んでいた海兵がハッチから身を乗り出すと、小銃と軽機関銃、車載機銃による射撃を開始する。

 

 

「グァッ!」

 

「キギャッ!」

 

「グォォ!!」

 

 

魔物達は車両から放たれる銃撃の前に次々と倒れていき、車両へ近づく事なくやられていく。

 

 

「突入ッッ!!」

 

 

広場へ車両が突入すると、装輪装甲車から完全武装の海兵と騎士団が一気に飛び出し、騎士団を先頭に、地下シェルターへと続く入り口がある廃倉庫へ向け突入する。

 

 

「こっちだ!」

 

「よし!第1と第2分隊は周囲を警戒しつつ騎士団と共に前進っ!第3と第4分隊はトラックの周辺を固めろ!」

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

 

城島大尉指揮する4個分隊のうち、2個分隊20名は騎士団と共に市民の安全確保とトラックへの誘導。残りの2個分隊20名は、市民を乗せるトラックが停車している倉庫前の安全を確保する。

 

 

「城島殿!ここが地下への入り口だ!」

 

「よし!騎士団は地下の市民達を連れ出してくれ、それまでは我々がここを守る!」

 

「分かった!騎士団、俺に続けっ!」

 

 

モアは倉庫の床下にある地下への扉を開けると、騎士団20名と共に中へと飛び込む。

そこにはやはり市民達がおり、騎士団が入ってきた瞬間に全員が一瞬だけ身構えた。

 

 

 

「市民の皆さん! 我々は騎士団です! 救出に参りました!」

 

 

モアのその言葉を聞いた途端、市民達の表情が一気に和らぎ、立っていた者は膝から崩れ落ち、うずくまっていた女性や子供達は安心したのか啜り泣いてしまう。

 

 

「いま外に、心強い味方が居ます! 皆さん落ち着いて我々の誘導に従ってください!」

 

 

モアの指示に市民達は大人しく従い、次々と入り口から外へと出てくる。

 

 

「これに乗ってください!」

 

 

出てきた市民達は目の前に停車していたトラックや、奥の方で魔物を追い払っている戦車と装甲車に一瞬だけ驚くが、その暇もなく騎士団にトラックの荷台へと乗せられていく。

 

 

「子供とお年寄り、女性の方が優先です! もっと奥へ詰めて下さい!」

 

 

騎士団と海兵達は近寄ってくる魔物に銃撃を加えつつ、市民達がトラックに乗り込むのを手伝う。

 

 

 

「………………市民達の収容まで後何分掛かる?」

 

「後5分もあれば!」

 

「急がせろ。何か嫌な予感がする………」

 

 

百田の予感は直後に現実となった。

 

 

 

 

 

 

グォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

 

 

 

耳をつんざくような叫び声が響き渡る。

 

 

 

「何だ?この声は?」

 

「中佐、あれを!!」

 

 

犬神が指差した方向に目を向けると、2体の巨人が姿を表した。

 

 

「ちくしょう! レッドオーガとブルーオーガだ!!」

 

 

誰かがそう叫び、誰もがその2体の大きさに目を奪われた。レッドオーガとブルーオーガは真っ直ぐ南の方向より広場へ向け走ってくる。

 

 

 

「何て巨体だ………独軍戦車の車高くらいはあるぞ。」

 

「中佐、どうしますか?」

 

「奴等をトラックと市民に近づけさせるな!!」

 

 

百田は無線機のマイクを取る。

 

 

「猿渡! お客さん2名が来場した! 南の方向からだ!」

 

『了解!こっちはもう少しで片付きそうなので、何とか足止めをお願いします!』

 

「了解した。犬神、お前が指揮を執って奴を足止めしろ!」

 

「了解しました!……城島大尉、そっちは大丈夫か!」

 

『解りました! 市民達の収容は終わりました! そっちに3個分隊を預けます!』

 

「すまん。」

 

 

犬神は軍刀を片手に指揮車から飛び出し、城島が指揮する4個分隊のうち3個分隊30名を率いて、広場の南入り口へと向かう。

 

 

「各員射撃用意! 迫撃砲用意!」

 

 

犬神の指示で迫撃砲分隊が81㎜小迫撃砲を展開し、素早く射角を合わせて、砲弾を砲身の先から半分装填し、発射指示を待つ。

 

 

「撃て!」

 

 

合図と同時に装填手が砲弾から手を放した。

砲身内に落下した砲弾は、奥にある撃発機が発射薬を発火させ、発射される。

放たれた砲弾は数秒程で、曲射によりレッドオーガとブルーオーガの頭上より降り注ぎ、足元に連続して爆発が起きる。

 

 

「グォォ!!」

 

 

迫撃砲弾は一般的には榴弾が使用されるため、砲弾の爆発により発生した衝撃波と爆風、破片が2体に襲いかかり、ダメージを与える。

 

 

 

「そのまま連続による効力射っ!」

 

 

 

迫撃砲分隊の海兵は連続でブルーオーガとレッドオーガに迫撃砲による連続砲撃を浴びせ続ける。

やがて2体は足を止め、立て続けに起きる爆発から身を守ろうと両手で頭を押さえる。

 

 

「敵は怯んだ!機関銃撃ち方始め!」

 

 

迫撃砲分隊が砲撃を終えると同時に、ブレン軽機関銃を構えた海兵による一斉射撃が始まった。

オーガの針金のような体毛は、迫撃砲の爆風と破片にむしり取られ、鎧としての機能は半減していた。放たれる7・7㎜弾は2体の表皮を貫通し、下の肉体へと食い込んでいく。

 

 

「グギャャャャャャ!!」

 

「グガァァァァァァ!!!」

 

 

 

オーガの表皮を食い破り、次々と体内にめり込む銃弾。2体はその激痛にもがき、暴れまわる。

 

 

「ん?……ようやく来たか!」

 

 

背後を振り向くと、5式改2両の砲塔がブルーオーガとレッドオーガに向けられていた。犬神は咄嗟に「伏せろぉぉぉ!!」と大声で叫ぶ。

 

 

「撃て!」

 

 

一瞬のち、5式改2両の主砲から放たれた75㎜榴弾は、吸い込まれるようにレッドオーガとブルーオーガに命中、2体を粉々に吹き飛ばした。

 

 

 

「やったぞ!」

 

「スゲェ! あのブルーオーガとレッドオーガを倒しやがった!」

 

 

一部始終を見ていた騎士団と市民達は歓喜に沸いた。

 

 

「よし! 脱出する!!」

 

 

百田の指示で、海兵達は急いで各々の車両へと戻り、敵の増援が来る前に撤収。広場から市街地を抜けて全速力でトルメスへの帰路に就いた。

 

 

 

「ふぅ……何とか民間人の救出ができた。」

 

「ギリギリでしたね…………」

 

 

 

指揮車で百田と犬神はため息をつく。

 

 

 

「それにしても犬神、お前の指揮は中々だったぞ。」

 

「恐縮であります。ですがあの赤鬼と青鬼のタフさには驚きました。迫撃砲の連続砲撃にも耐えて、機関銃による一斉射撃でも中々仕留められませんでした。」

 

「まぁ相手が魔物なんて未知な存在だからな…我々の常識が通じないのが判っただけでも儲け物じゃないか?」

 

「はい………今作戦のおかげで、魔物にも我々の武器が通じる事が判ったと考えますと、確かに作戦成功の意義は大きいです。」

 

 

 

二人は安堵した。取り合えず任務が無事に終わり、死者や負傷者が出なかった事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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