後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第61話

カルトアルパスに設けられた会議場にやって来た、日本国代表の近藤大使は、日本に強い関心を抱く他国の代表達と会話をしていた。

 

 

「我がアガルタ法国は貴国との国交締結について前向きなのですよ。何せあの魔王を打ち倒し、攻略不可能と言われたグラメウス大陸を解放したのですからな……我が国を含めた中央世界では貴国の名前を知らない者はおりませんぞ。」

 

「それは光栄です。」

 

「出来れば貴国に我が国の使節団を派遣したいと考えているのですが………」

 

「その件につきましては、会議が終了次第に直ちに交渉を行いましょう。」

 

「ありがとうございます。では私はこれで失礼いたします。」

 

 

アガルタ法国の大使が去り、近藤は緊張を解く。

 

 

「これで3ヶ国目ですね。」

 

「あぁ……国交開きたいのは分かるんだが、緊張するな。」

 

「いいじゃないです?それ程我が国が注目されていると言う事ですよ。」

 

 

その時、議場内にアナウンスが響く。

 

 

『これより先進11ヶ国会議を開催いたします。各国の代表の皆様は議場へとお集まりください。』

 

 

近藤を含めた各国の代表達は議場へと入り、用意された席に着席し、ミリシアル側の議長の挨拶が終わり、会議に入った。

 

 

 

「エモール王国のモーリアウルです。実は今回、我が国から各国の皆様方にお伝えしなければならない事があります。」

 

 

エモール王国代表が真っ先に立ち上り、その旨を伝えると、日本とグラ・バルカス以外の代表達がざわめく。

 

 

「先日我が国で空間の占いを行ったのですが………」

 

 

モーリアウルの暗い表情に、皆押し黙った。

 

 

「近いうちにラヴァーナル帝国が復活するとの結果が出ました。」

 

 

エモール王国の空間の占い、その的中率は90%に及び、高い信憑性を持つその言葉にその場の空気が凍りつく。

 

 

「なんてことだ……」

 

「もしそうなら我々には対抗する術は無いぞ!」

 

「正確な復活時期は不明だが、早ければ今から4年、遅くとも15年以内に復活するのは確かだ。この事態に各国とも無用な争いは行わず、一致団結してラヴァーナル帝国復活に備えなければならない。我が国はそう考える。」

 

 

各国の代表が頷く中、グラ・バルカス帝国代表の女性大使が立ち上がる。

 

 

 

「失礼、私はグラ・バルカス帝国代表のシエリアと申します。各国の皆様、ラヴァーナル帝国だが何だが私共にはよく分かりませんが、占いという非現実的な事を国際会議の場で持ち出す貴殿方の神経がよく理解できない。」

 

 

シエリアと名乗ったグラ・バルカス大使の言葉にトルキア王国やアガルタ法国の代表が声を荒げる。

 

 

「新参者が知ったような口を聞くな!」

 

「そうだ!!貴国はラヴァーナル帝国の恐ろしさを知らないから、そんな事が言えるんだ!」

 

 

会議は紛糾した。

シエリアのエモール王国やラヴァーナル帝国を舐めきった発言に対する批判から、グラ・バルカス帝国の世界秩序を乱す行為に対する批判へとエスカレートしていく。

 

 

やがて批判や罵声が収まる。

 

 

「終わったか?では我が国はこの場を借りてある宣言を行いたい。」

 

 

シエリアは一呼吸置いて、議場全体に響き渡るような声である宣言を行った。

 

 

 

「我らに従えっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11ヶ国会議が行われている頃、カルトアルパスより西にあるマグドラ群島では、ミリシアル海軍の零式魔導艦隊が、突如として来襲したグラ・バルカス艦隊と交戦していた。

 

 

「また来るぞ!面舵一杯!」

 

 

艦隊司令のアルテマは艦隊旗艦のミスリル級魔導戦艦『エクス』の艦橋で指示を下す。

この時点で既にミリシアル側はグラ・バルカス艦隊の戦艦1と巡洋艦1、駆逐艦1を撃沈しているが、グラ・バルカス艦隊の航空機による攻撃で劣性に立たされていた。

 

 

「クソ!」

 

 

アルテマがそう叫んだ直後、エクスの右舷に多数の水柱が上がった。

 

 

「何なんだこの攻撃は!」

 

 

アルテマは知らなかった。

グラ・バルカス艦隊の駆逐艦と航空機が放った魚雷という兵器は、彼らにとっては未知の兵器であり、その対処法を知らなかった魔導艦隊はその戦力を次々と失っていく。

 

 

「敵艦隊、砲撃を開始しました!」

 

 

 

報告が上がった直後、零式魔導艦隊は激しい砲撃の雨に晒され、僅か一時間の内に壊滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、8月16日

 

 

会議二日目にしてミリシアルの外務統括官から、各国の代表に向けての公式発表が行われた。

 

 

「それではこれより緊急会議についてご説明いたします。つい昨日、我が国の地方艦隊が西のマグドラ群島付近で正体不明の艦隊と航空機による攻撃を受け、音信不通となりました。」

 

 

その言葉に衝撃が走った。

 

 

「正体不明の艦隊について調査した結果、その艦隊はグラ・バルカス帝国のものと判明いたしました。」

 

 

統括官は敢えて、零式魔導艦隊ではなく地方艦隊がグラ・バルカス艦隊の攻撃で壊滅したという偽りの事実を伝えた。これは、世界最強を自認するミリシアルの新鋭艦隊が壊滅したと言ってしまえば、各国のミリシアルによる信頼に大きく影響すると考えたためである。

 

とは言え、ミリシアルに被害を負わせたと言う事実に各国の代表達は沈黙する。

 

 

「つきましては安全のため、各国の皆様方にはカルトアルパスから護衛艦隊を引き揚げて頂き、東のカン・ブラウンに移って頂きたいと思います。」

 

 

数秒の沈黙の後、エモール王国のモーリアウルが立腹した様子で立ち上がる。

 

 

「あの無礼な新参者共の前で、国際会議となるこの場から背中を見せて逃げるのか? 冗談ではない!! 我が国は陸路だが、ここに居る者達はかなりの規模の艦隊を連れてきているのだろう?だったら戦えば良い!!」

 

「しかし……」

 

「もし戦うなら、我が国もささやかながら協力する。控えの風竜騎士団22騎を投入しよう!」

 

 

エモール王国の風竜騎士団はミリシアル空軍にも勝る精鋭として知られており、その言葉に勇気づけられたのかトルキア王国、アガルタ法国を初めとして、各国がカルトアルパスに来るグラ・バルカス艦隊を迎え撃つと表明していく。

 

 

「日本国はどうされる? パーパルディアを下し、魔王を滅する力を持つ貴国が参戦してくれれば、我々にとってこれ程有り難い事はない。」

 

「あの日本武尊と言う巨大戦艦があればグラ・バルカスなど一捻りでしょう!」

 

 

パンドーラ大魔法公国はまるで煽るように日本に参戦を求める。

 

 

(どうする? 外務省からはグラ・バルカスの動向を見て独自に判断しても構わないと通達されているし、魔王の件が大々的に世界に報じられて我が国の知名度が上がっている今なら外交的に非常に有利だが…………わざわざ参加しなくてもいい戦いに参加して犠牲者が出てしまえば………)

 

 

近藤は判断に迷った。

返事を今か今かと待っていた廻りの視線を受けながら両手を組んで考える。

 

 

「解りました。私も本国から、独自に判断して行動しても良いという指示を受けております。我が国も他国の皆様と共に戦いに参加いたします。」

 

 

その返答に代表達が称賛の声をあげる。

 

 

「それでこそ魔王を滅した日本国だ!」

 

「日本国が加わってくれれば怖いもの無しだな!」

 

 

この言葉を聞いて近藤は各国がどれ程日本に期待を寄せているかを感じた。

 

 

 

 

満場一致で、グラ・バルカス艦隊迎撃を選択した各国の代表は会議を早々に切り上げて、港に停泊している各々の艦隊にその旨を通達を行う。

 

 

 

「……以上が概要です。」

 

 

日本武尊に戻ってきた近藤が大石にグラ・バルカス艦隊迎撃についての説明を行う。

 

 

「やはりこうなりましたか…………」

 

「致し方ありません。あの国がかつての我が国のような拡大政策を掲げている以上、こうなる事は予想できたのですが………まさかあの場であんなに堂々と宣戦布告をするとは思いませんでした。」

 

「解りました、軍令部からも、近藤大使が会議で必要だと判断した事を遵守するように指示を受けています。我々に異存はありません。」

 

 

大石は元からこうなる事を予想していたため、彼を含めた旭日艦隊全将兵の覚悟は決まっていた。

 

 

「では我々も準備に入りましょう。」

 

 

日本武尊と、沖に待機していた旭日艦隊全艦に戦闘態勢の命令が下された。

カルトアルパス港に停泊していた日本武尊は、次々と出撃する他国の艦隊と共に港を離れていく。

 

 

「日本国、旭日艦隊出港!」

 

 

ブロンズは、港湾管理局の庁舎から、出港していく日本武尊を興奮で一杯の表情で見送っていた。

 

 

 

「さて…日本国のお手並み拝見と洒落込むか。」

 

 

ブロンズは双眼鏡で旭日艦隊の見物に入った。

 

 

 

 

「さて……他国の艦隊と足並を揃えると言っても、果たして即席の連合艦隊で本当に足並が揃うか?」

 

 

大石は他国の艦船を見て、不安を感じる。

即席で編成された連合艦隊はトルキア王国が7、アガルタ法国6、マギカライヒ共同体7、ニグラード連合8、パンドーラ大魔法公国8、ムー国16隻、旭日艦隊40を合わせた合計93隻にも及ぶ大艦隊であり、そこへミリシアルの巡洋艦8隻が加わって101隻となる。

 

戦力としては申し分無いが、やはり国による技術格差が開き過ぎているため、速度や戦闘能力の面では不安が大いに残る。

 

 

 

「この艦隊でグラ・バルカス艦隊の相手ができるのは、我が艦隊とムー、ミリシアルぐらいだな…………艦長、機関最大戦速、連合艦隊の前衛に出るぞ。」

 

「了解。機関最大戦速!」

 

 

旭日艦隊は鈍足の他国の艦隊を引き離し、連合艦隊の前衛に出る。

 

 

「原参謀長、カルトアルパスに接近する敵艦隊の状況は?」

 

「はい。グラ・バルカス艦隊はグレードアトラスターを先頭にカルトアルパスに接近しつつあります。後方からは空母を中心とした機動艦隊も続いています。警戒機からの報告では、既に敵空母から艦載機が発艦しつつありとの事です。」

 

「典型的な航空戦と艦隊戦を仕掛けてきたな。空母から飛び立った攻撃隊による航空攻撃で我が方に損害を与えてから、戦艦による艦砲射撃でトドメを刺す。しかも既に敵が先手を取っている…………」

 

「長官、既に各空母より航空隊の発艦準備が完了しています。直ちに迎撃に出しますか?」

 

「あぁ。向かってくるなら迎え撃つしかない。各空母に攻撃隊と直掩隊の発艦を下命せよ……」

 

「はっ!」

 

 

 

直ちに旭日艦隊の各空母より、敵攻撃隊を迎撃すべく、嶺花と光武が飛び立っていく。

 

 

『全機、高度8000まで上昇!』

 

 

迎撃隊は高度を上げて、高度8000付近で編隊を組み、グラ・バルカスの攻撃隊が居ると思われる方向へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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