旭日艦隊の空母より飛び立った迎撃隊は、警戒機による誘導と索敵レーダーを駆使して、こちらに向かってくるグラ・バルカスの攻撃隊へ向け距離を縮めつつあった。
『索敵電探探知っ!』
遂に迎撃隊の射程距離に敵攻撃隊が入ってきた。
『リヒート点火!』
光武改はアフターバーナーを点火して一気に速度を上げると、索敵電探の出力を最大に上げ、翼下の対空誘導噴進弾の安全装置を解除する。
『対空誘導噴進弾、電探と連動開始っ!』
索敵レーダーに誘導噴進弾が接続される。
『用意……撃てっ!』
パイロットが操縦桿のスイッチを押し、光武から誘導噴進弾が放たれ、撃ち終えた光武改は直ぐに旋回して回避する。
その頃、グラ・バルカス帝国軍第1次攻撃隊183機は、カルトアルパスへ向けて高高度を飛行していた。
『全機、間もなくカルトアルパス湾へと到達する。3000まで高度を下げろ。』
攻撃隊の指揮官は全機に命令を下す。
命令通りに、攻撃隊所属のアンタレス型艦上戦闘機、シリウス型艦上攻撃機、リゲル型雷撃機が高度を下げる。
『いいか?攻撃目標は飽くまで日本艦隊だ!他はどうでもいい!』
『了解!』
攻撃隊の本命は旭日艦隊である。日本の実力を図るのが目的の今作戦をもう一度確認した攻撃隊は、カルトアルパスへ向けて突き進んでいく。
「ん?」
その時、一番先頭に居たアンタレスのパイロットが、前方から黒い点のような物が真っ直ぐ飛んでくるのが見えた。
「鳥か?」
一瞬そう思ったが、その予想は一瞬で砕かれた。
飛んできたのは、後ろから煙を吐きながら高速で飛翔する飛行物体だったのである。彼は急いで無線のストークボタンを押して、全機に指示を出す。
「いかん!全機回避っ!」
編隊は急いで機体を旋回させ回避しようとするが、回避が遅れたアンタレス数機に飛翔物体が直撃し、爆散した。
「何だと!?」
回避機動を行ったが、飛翔物体はまるで意思を持っているかのように軌道を変えて追い掛けてくる。
『うわぁ!追い掛けてくる!』
『来るな!来るな!』
『逃げられない!』
飛翔物体はアンタレス隊とシリウス隊、リゲル隊に次々と命中していく。機体は黒い煙と炎を吐きながら墜落するか、爆散していく。
「何がどうなってるんだ!?」
指揮官は訳が分からなかった。
いきなり現れた飛翔物体に、指揮下の飛行隊が次々とやられていくのを見て、帝国軍パイロットとしてのプライドが傷つけられる。
『隊長!前方に敵機っ!』
「何っ!」
生き残った部下からの報告に視線を向けると、嶺花の飛行隊が彼らの視線に飛び込んでくる。
「本当にプロペラが無いのか……」
彼は出撃前に、上官から日本の航空機の説明を受けていたが、何れも眉唾もので半信半疑であった。しかし実際に見てみると信ぜざるを得ない。
「全機、慌てず落ちついて行動しろ!速度は向こうが上だが、旋回半径と運動性は我々が上だ!低空に誘い出して格闘戦に持ち込め!」
指揮官は嶺花の速度を考えて旋回半径と運動性が優れるアンタレスの特性を理解し、低空での格闘戦に持ち込もうとする。
「何っ!?」
だが、接近してきた嶺花は主翼下の熱探知誘導弾を一斉に発射し、戦闘態勢に入ろうとしていたアンタレスを次々と撃ち落としていく。誘導弾を撃ち終えた嶺花は、その場から上昇する。
「逃がすか!全機、奴等を追え!」
指揮官は高度を上げて逃げようとする嶺花を追うように指示を出し、自らも追いかける。
「クソ!早すぎる!」
だが上昇力で勝る嶺花には追い付けず、一気に離されていく。だがそれでも彼らは必死で嶺花を追いかける。
その時、嶺花は大きく宙返りし、機首を下に向けると一気に降下してくる。
「うわぁ!」
突然の事に彼は咄嗟に機銃の引き金を引こうとするが、数秒早く嶺花からの機銃掃射を受けて、機体の主翼や尾翼が吹き飛ばされる。
「ちぃ!」
彼は急いでアンタレスから脱出した。
パラシュートが開き、ゆっくりと降下して行く中、嶺花の攻撃で次々と落とされていく友軍機を見る事しか出来なかった。
攻撃隊全滅は直ちに、グラ・バルカス帝国軍第1航空機動艦隊に伝えられる。
「通信途絶?」
「はい………」
第1航空機動艦隊司令官のカオニア少将は、自信をもって送り出した攻撃隊からの通信が繋がらなくなったと言う報告に頭を抱える。
「原因は?」
「不明です。敵の攻撃なのか、あるいはこの星独特の磁気嵐なのか……」
「提督!直ちに第2次攻撃隊の発艦準備を……」
そこへ、通信員が駆け込んでくる。
「何事だ!」
「敵の無線通信を傍受しました!」
「内容は?」
「はい。余程切迫してるのか平文です。『我、敵航空機の攻撃を受け甚大な被害を受けるも、自沈に至らず。戦闘を継続す』以上です。」
この無線通信は無論、偽物である。
大石は、一計を案じ警戒機から伝えられた敵の無線周波数に合わせて、広域通信で偽の救援要請文を発していたのである。
「よし!作戦通りグレードアトラスターに、カルトアルパス突入の暗号を送れ!」
そんな事を露知らないカオニアは遥か前方のグレードアトラスターにカルトアルパス湾突入の暗号を送った。
暗号を受け取ったグレードアトラスターのラクスタルは、何の迷いもなくカルトアルパスへの突入を決意した。
「機関最大戦速っ!これより本艦はカルトアルパスへと突入する!」
グレードアトラスターは機関の出力を上げ、速度を上げると、真っ直ぐカルトアルパスへ向けて突入を開始した。
(さて……あの超戦艦相手にやっつけ仕事で改造したこの艦で相手になるか?)
ラクスタルも改装で強化したグレードアトラスターを信じていたが、今のグレードアトラスターは主砲の威力と対空戦闘能力が強化された以外には改装前と変わらない。港で見た日本武尊の火力と比べれば、今のグレードアトラスターは一歩及ばないのは否めなかった。
(だが賽は投げられたんだ…)
ラクスタルは覚悟を決め、帽子を被り直すと艦長席から立ちあがり双眼鏡を片手に握り締めながら緊張した面持ちで戦闘に備える。
その頃、旭日艦隊は………
「長官、警戒機からの報告です。例の敵戦艦が単艦で速度を上げてこちらに向かってきているとの事です。やはり長官の作戦通り、敵は我々の欺瞞に引っ掛かったようです。」
空母以下の艦艇を後方に下げた日本武尊は、同行を願ったムーのラ・カサミの2艦のみで、グレードアトラスターを迎え撃つため、単独行動を取っていた。
「よし。では艦長、いつもの如く一役演じてみるか?」
「はっ、分かりました。半潜航行用意!右舷バラストタンク注水!!」
富森艦長の号令に日本武尊の船体に備えられたバラストタンクに海水が注入され、潜水艦のように船体がゆっくりと沈み込んでいき右に傾斜する。
これは潜水戦艦として設計されていた日本武尊の名残りとして両舷のバラストタンクの特性を生かした半潜航行と言う、日本武尊のみ可能とする航行法である。
「偽装煙始め!!」
今度は、甲板のガスバーナーと煙突からどす黒い煙が吐き出され、あっという間に日本武尊は煙と炎に包まれる。
「見ろ!日本武尊から火が!!」
旭日艦隊の後方に居たラ・カサミのミニラル艦長と艦隊司令官はその様子を見て驚いた。
「何だ?事故か何かか?」
「直ぐに日本武尊に確認をとれ!」
ムー艦隊は日本武尊に確認と救助が必要かの発光信号を送った。そして直ぐに返答が返ってきた。
「日本武尊より返信!『本艦は無事なり。航行と戦闘には全く支障はなし』以上です。」
「どう言う事なんだ?あれ程傾いていて、火災も起きているのに戦闘と航行に支障がないとは……」
「分かりません……ですが彼らには何か作戦があるのでしょう。ここは彼等を信じましょう。」
ムー艦隊は取り合えず傍観を決め込んだ。
そして十数分後、遂にグレードアトラスターの姿を日本武尊の電探が捉えた。
「敵艦補足しました!」
「総員戦闘配備っ!」
ブザーが鳴り響き、乗員達は持ち場へと移動する。
「被害対策班準備よし!」
「医療班準備よし!」
「全艦戦闘配備完了!」
戦闘配備が完了し、日本武尊はいつでも戦闘に入るための準備を整えた。
「半潜航行はこのままで宜しいでしょうか?」
「あぁ。」
大石は内線電話をとり、射撃指揮所へと繋ぐ。
「砲術長、各国の代表が見守っている。1つ派手に頼むぞ。」
『はっ!各砲には零式弾と水中弾を装填しています。』
「いいだろう。」
『間もなく、主砲射程に入りますが?』
「そのまま待機だ。慌てんでも敵は逃げやせん。」
電話を切り、今度は艦内通信回線を開く。
「大石だ、総員に告げる!緊張して待機っ!いよいよ始まるぞ………敵は強大なグラ・バルカス帝国の超戦艦だ。総員の奮闘を期待する。」
訓示を追えて大石は、水平線の向こうから見えてくるグレードアトラスターを見ながら戦闘開始のタイミングを図る。
続く
次回はいよいよグレードアトラスターと日本武尊との戦いです。
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