後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第7話

中央歴1639年3月下旬 ロウリア王国首都ジン・ハーク

 

 

時系列はクワ・トイネから日本への援軍が要請された日の翌日に遡る。

 

 

ロウリア王国の首都ジン・ハークの中央に聳え立つ王城ハーク城では、国王『ハーク・ロウリア34世』を筆頭に、国の首脳陣達が集まっていた。

 

 

「国王陛下、クワ・トイネ並びにクイラへの侵攻作戦の準備はあと数日を以て完了いたします。」

 

 

ハークへ報告を行うのは、ロウリア王国きっての将軍『パタジン』。

筋肉質な体が着ている鎧の上からでも分かる程の重厚振りから、1目みただけで軍人である事が分かる。

 

 

「うむ。スパイの方は大丈夫か?」

 

 

ハークの質問にパタジンは自信満々な表情で応える。

 

 

「はい。防諜関係はしっかりと注意していますのでご心配ありません。」

 

「よろしい。パタジンよ、クワ・トイネとクイラの両国を相手にして勝てるか?」

 

「勿論でございます。所詮奴等は農奴の集まりですし、亜人の比率が高い彼の国に負ける事はありません。」

 

「そうか。で、1つ気がかりなのは、先日やってきた日本国についてだが……」

 

 

ハークの懸念については宰相が応える。

 

 

「その点についてはご心配には及びません。日本国はロデニウス大陸より北東に1000キロ近く離れているので、万が一クワ・トイネが日本国に援軍を要請していたとしても、到着までは船を使ってやって来たとしても、戦力はたかが知れています。軍事的に影響は無いと思われます。」

 

 

それを聞いてハークは笑みを浮かべて、再びパタジンへと質問する。

 

 

「パタジンよ、今回の侵攻作戦について説明せよ。」

 

「はっ!今回の侵攻作戦の概要は先ず、我が国とクワ・トイネの国境にあるギムを強襲しこれを制圧します。我が軍はギムを足掛かりに、侵攻軍50万人の物量を生かして一気に穀倉地帯を押さえ、首都マイ・ハークへ侵攻・制圧します。それと平行して海からも、シャークン提督率いる4400隻の艦隊を北方に迂回させ、北岸にある経済都市を制圧します。」

 

「だがクイラはどうする?あの国は山岳地帯が多いから侵攻にはかなり手間が掛かると思うが。」

 

「それはご心配ありません。クイラはクワ・トイネから食料を輸入しているので、クワ・トイネさえ占領できたら、食料供給を遮断し自滅に追い込みます。」

 

「国王陛下、6年掛けて列強国からの支援で得た努力がようやく報われる時がやって来たのです!」

 

 

全てが上手く行くと確信したハークは笑みを浮かべ、その場で立ちあがり高らかに宣言する。

 

 

 

「諸君!遂に我が国の悲願を叶える時が来た!ロデニウス大陸に蔓延り惰眠を貪る亜人共がこれ以上、己の力を過信し力を付けないよう、この戦いで亜人殲滅と言う理想を実現させ、このロデニウス大陸を我が国を中心とした人族の国『ロウリア帝国』建国の夢への第一歩を踏み出すための布石にしよう!そのために……諸君達の力をどうにか…どうにか私に貸してほしい!そして私は…父ハーク・ロウリア33世の元に召されるであろう!」

 

 

この演説で、その場に居た者は一斉に立ちあがりハークを称える言葉を連呼する。

 

 

「「「「「ジーク・ハーク!ジーク・ハーク!」」」」」

 

 

王城は喧噪に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

(こりゃ大変だ…急いで戻らなければ……)

 

 

王城内で仕事をしていた使用人の1人が喧噪を聞いて、手早く仕事を終わらせ、自室で荷物を纏めて、誰もいない城の裏庭からハーク城を出て、そのままクワ・トイネがある方向へ馬を飛ばし消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時系列はそれから3日後の、前原が横須賀から雷洋改に乗り込み、ある場所へと向かった場面へと戻る。

 

 

「閣下、見えました!新紺碧島です!」

 

「どれ………凄いな。俺が居ない間に新紺碧島の基地建設はだいぶ進んだようだな?」

 

 

 

前原が言う新紺碧島とは?

 

 

それは彼が率いる紺碧艦隊の本拠地が置かれた島の名前であり、この新世界ではロデニウス大陸より南へ1000㎞離れた場所にある無人島を指し、前原達はこの島を紺碧艦隊の新たな拠点とするため、島内の基地化を急いでいた。

 

 

 

島を数回程、旋回した後に雷洋改は島の北側にある湾内に着水し、更に奥にある、木や葉で覆い隠された水上機格納庫へと入った。

 

 

「司令官、お帰りなさい!」

 

 

格納庫では前原を出迎える複数の人の姿があった。

 

 

「艦長に先任か。出迎えご苦労!」

 

 

前原を出迎えたのは、紺碧艦隊副司令であり、艦隊旗艦『伊601 富嶽』の艦長である『入江九市』と先任士官の『品川弥治郎』であった。

 

 

「留守中は何も無かったか?」

 

「はい。特にこれと言った混乱も無く、皆基地建設に取り組んでおります。」

 

「うむ結構だ。しかし俺が居ない間にこんな立派な水上機格納庫が出来ているとは、少し驚いたぞ。」

 

「皆、新しい故郷作りに不眠不休で努力しており、明日にはこの水上機格納庫の横に、潜水艦用ドックが完成します。ここが完成すれば、紺碧艦隊の各艦は地上からも水上からも発見されない地下ドックに入る事になるでしょう。」

 

「あの岩場の中にあった広い洞窟をもうそこまでか………流石だ。」

 

 

 

この新紺碧島は、偶然にも前世界の紺碧島と地形や面積、周辺の海域の深さまでがほぼ同じであり、かつての紺碧島建設で役に立った技術で、前紺碧島と全く同じ能力を持つ基地として完成間近であった。

 

 

「話は変わるが、今回軍令部から新たな命令を受けてきた。」

 

「それは本当でありますか?」

 

「あぁ。1500までに各艦の艦長と、幹部を集めてくれ。作戦の説明を行う。」

 

「了解しました!」

 

 

数時間後の後に各艦の艦長と幹部が集められ、作戦の説明と打ち合わせが行われた後に、艦隊将兵達は基地建設と平行しながら出航準備を開始した。

 

 

2日後の4月4日、翌日の早朝。

 

 

 

『出港っ!舫い綱外せ!』

 

 

完成したばかりの地下ドックで、紺碧艦隊の全艦は出港準備を整え、舫い綱が解かれる。

 

 

「司令官、全艦出港準備完了しました。」

 

「よし。紺碧艦隊、全艦出港。」

 

 

旗艦の伊601の船体がゆっくりと前進し、ドックの巨大なゲートが開かれる。後から伊501、502、503が続く。

 

 

 

 

「潜航用意!注水弁開け!」

 

「了解!注水弁開きます!両舷タンク内、注水開始!」

 

 

ゲートを越えると、各艦はメインタンクに海水を注入し、その巨大な船体をゆっくりと沈めていく。

 

 

「トリム正常。各部異常なし。」

 

「微速前進0・5。深度30。」

 

 

紺碧艦隊は微速を保ちつつ、沖へと出ると艦隊を組む。

 

 

「探信音波発信!」

 

「これより我が艦隊はロウリア王国の海軍戦力の調査と監視のため、ロデニウス大陸より東の海域周辺に展開する。」

 

 

伊601以下の各艦からアクティブソナーとパッシブソナーが発せられ、周辺の海底の地形に注意しつつロデニウス大陸がある方向へ向かった。

 

 

 

 

 

 

続く


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