後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第67話

中央歴1640年9月25日

 

 

神聖ミリシアル帝国、帝都ルーンポリスの王城内にある会議室では、ミリシアル帝国皇帝『ミリシアル8世』以下の帝国首脳部が、ある重大な決定を行うため集められていた。

 

 

「余としては、グラ・バルカス帝国の世界に対する宣戦布告という蛮行を見過ごす事は出来ない。よって私は、グラ・バルカス帝国に対して、レイフォル王国に駐留するグラ・バルカス軍を排除するための、一大軍事作戦の決行を提案する。」

 

 

この言葉から始まった議論に帝国国防省や外務省の人々は、世界最強にして世界の中心が自国であると示すため失敗は許されないと、作戦立案について熱が入っていた。

 

 

 

「クリング、此度の作戦には我が海軍の第1から第3までの艦隊を派遣するとあるが、グラ・バルカス帝国相手にその戦力で足りるのか?」

 

 

ミリシアル帝国国防相『アグラ』は、海軍西部方面艦隊司令官の『クリング』に尋ねる。

 

 

「問題はありません。レイフォルに駐留するグラ・バルカス帝国艦隊の戦力を考えますと、第1と第2艦隊だけでも事足りるとの試算が出ています。そこへ第3艦隊の戦力を加えれば必ず殲滅可能であります。」

 

「もし相手がこちらの予想を上回っていたとしたら?」

 

「その点に関しても問題はありません。我が艦隊に加えて、此度の作戦には第2文明圏とムー国、そして日本からも1個航空機動艦隊が加わりますので、相当な戦力になります。」

 

 

 

今回計画されているこの作戦はミリシアルを中心として、有志連合にはムーや日本を含めた各国の艦隊が参加する予定になっており、世界が手を合わせてグラ・バルカスを排除するとなっているが、裏ではミリシアルはカルトアルパスで最新鋭の零式魔導艦隊を壊滅させられた腹いせをやるための建て前という面も持っており、作戦指揮は飽くまでミリシアルが行う事とし、集まった各国の艦隊はそれに従う事となっている。

無論ムーを含めた列強各国艦隊は作戦の際にはミリシアルの指揮下に入る事になる。無論各国政府は難色を示すが発言権の大きいミリシアルの意向には文句は言えないため、渋々だが従うしか無い。

 

 

 

「作戦内容を纏めますと、地方隊を含む連合艦隊を前衛に出し、レイフォルに向かわせます。恐らく敵はバルチスタ海域で飛行機械を使って迎撃態勢を整えて来るでしょうから、前衛は相当な被害が予想されますが、敵が使用する飛行機機械による第1次攻撃隊が帰還する方向から敵艦隊の位置を割り出し、第1と第2艦隊で奴等を叩きのめします。その後はレイフォル沖より艦砲射撃で敵に攻撃を行い殲滅する………以上が作戦の概要です。」

 

 

 

作戦内容から察するに、前衛は敵艦隊を引きずり出すための囮として使い、後方に控えているミリシアル艦隊が敵を殲滅すると言う筋書きになる。

 

 

 

「よし!それで行こう。直ぐに作戦内容をカルトアルパスに集まっている各国の艦隊司令に通達せよ。」

 

 

 

作戦計画書は直ちにカルトアルパスにある、世界連合艦隊司令部へと届けられ、担当官が各司令官へと通達する。

 

 

「以上が今回の作戦の概要です。何か質問はありますか?」

 

 

集まっていた各国の艦隊司令官は沈黙する。既にこの時点で意見を言っても聞いてもらえない事が分かっているため、誰もが小さく首肯く。

 

 

だがそこへ1人の男が挙手をする。

 

 

「1つよろしいですか?」

 

「アドミラル・高杉、どうぞ。」

 

 

そこに居たのは、高杉だった。

彼は大国が掲げる大陸国家の横暴から世界を解放する解放国家としての基本戦略に基づいて、グラ・バルカス帝国の侵攻を阻止するためのミリシアル側からの世界連合艦隊参加要請に答えるため、新たに再編成された第1航空機動艦隊を率いてここに居たのである。

 

 

 

「万が一にも敵艦隊が予想外の行動や、予想不能な突発事態が発生した場合に連合艦隊が作戦行動が不能となった場合は、我々は独自に行動してもよろしいでしょうか?」

 

「アドミラル・高杉、言っている意味が理解できないのだが…」

 

「戦場では突発事態や予想不能な事態が起こる可能性があると申し上げているのです。もしそうなれば作戦続行不可能と言ってもよい事態になるやもしれません………"万が一"に備える必要がありますが?」

 

 

担当官は腕を組んで少し考えると、直ぐに返答する。

 

 

「分かりました。確かに戦場では何が起こるか予想は出来ません。もしそのような事態になった場合は独自で判断してもやむを得ません。それに関しては上層部も納得していただける筈です。」

 

「そうですか……ありがとうございます。」

 

 

 

そして、この作戦会議から1ヶ月後の10月25日、作戦開始のためカルトアルパス沖からは作戦に参加するため、第2文明圏と合流するため連合艦隊が出港していく。

 

 

「トルキア、アガルタ艦隊、出港していきます!」

 

 

港湾管理局庁舎でブロンズは、物々しい雰囲気で出撃していく連合艦隊を見送っていた。

 

 

「凄いものですね……」

 

「あぁ……今回の作戦では皇帝陛下はグラ・バルカス相手には容赦はしないらしい。今回の作戦にはムーに加えて、あの日本から機動艦隊が参加しているからな。相当な戦力にもなるさ。」

 

 

『日本国艦隊、出港っ!』

 

 

 

そうしているうちに、ブロンズはお目当ての日本艦隊が出港していく報を聞いて、その方向に双眼鏡を向ける。

 

 

「しかし何て大きいんだ……あの空母は。」

 

 

彼の視線の向こうには、他を圧倒する程の雰囲気を持つ新生高杉艦隊の新たな旗艦となった超巨大空母があった。

 

 

「確かあの空母の名は確か……た?……たけ……たけみか………」

 

「武御雷だろ?」

 

「そうでした!情報によれば、あの空母は戦略空母と言う、日本海軍の新型超空母との事です。全長320メートル、幅72メートル、排水量は未確認ではありますが5万トンを越えるとの事です。あの独特の飛行甲板は航空機の発着艦の効率を上げるために考案されたとあります。」

 

「あの空母の前じゃ我が国のロデオス級がまるで小舟に見えるな……全く、日本国には驚かされるよ。」

 

 

 

武御雷以下の高杉艦隊は他の連合艦隊と共に港に居た住民からの見送りを受けつつ、バルチスタ沖へと進路を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




ちょっと足早でしたが、もう少しでバルチスタ沖海戦が始まります。

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