後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第69話

中央歴1640年10月29日

 

 

神聖ミリシアル帝国の第1から第3艦隊までを主力とした世界連合艦隊はムー艦隊と合流した後、高杉艦隊・ムー艦隊を主力とした2ヶ国の空母機動艦隊による日・ムー艦隊を前衛にしてレイフォルへ向けて進撃していた。

 

 

無論、グラ・バルカス帝国艦隊も世界連合艦隊の接近を察知し、レイフォルに集結していた、第1航空機動艦隊と第2航空機動艦隊の2個機動艦隊が出撃し、世界連合艦隊を捉えるため偵察のアンタレスを盛んに飛ばしていた。

グラ・バルカス艦隊の前衛を努める第2航空機動艦隊所属のペガスス級空母『ホマン』航空隊に所属する、アンタレス21号機パイロット『アレス』少尉は、世界連合艦隊の偵察のため飛行していた。

 

 

「そろそろだな…………」

 

 

アレスは地図を見て、敵艦隊の予想地点となるバルチスタ海域に来てみたが、未だに発見と補足には至っていない。

 

 

「もう少し高度を下げてみるか………」

 

 

レーダーに補足されるのを警戒して、雲の上を飛行していたのだが、今日は雲が厚いため切れ目からは真下が見えていなかったため、アレスは補足されるのを覚悟で高度を下げて、雲の下へと出る。

 

 

 

「いないな…………」

 

 

既にアンタレスの燃料は空母との往復する分、ギリギリしか残っていないため、そろそろ引き返さなければならない。

やや雲が薄くなり少しだけ高度を上げて、雲の中へ入り、再び雲の真上から切れ目を見つけては、目をこらして下を見る。

 

 

「ん?」

 

 

一瞬だけ切れ目をから、海上を航行する艦船のような影が見えた。

 

 

「まさか!」

 

 

アレスは機体を切れ目に向かって高度を下げ、切れ目を抜けてみる。

すると目の前に、探していた物を見つけた。

 

 

 

「やったぞ!敵艦隊補足だ!」

 

 

慌てて無線機の電源を入れて、艦隊に報告を入れる。

 

 

「こちら21号機!敵艦隊を発見した!チャートナンバー12018、敵艦数は………」

 

 

艦隊の位置を読み上げて、艦船の数を報告しようとした時、彼の乗るアンタレスに衝撃が走った。

 

 

「っ!?」

 

 

ふと左に視線を向けると、左主翼に多数の大穴が開き、そこから翼内燃料タンクに充填されていた燃料が白いスプレーのようき吹き出していた。

 

 

「後ろっ!?」

 

 

振り替えると、自身が乗り込むアンタレスと同じような見た目の航空機が機首を自分の方向に向けているのが見えた。

 

 

「クソ!!」

 

 

アレスは操縦桿を左に倒して左にロールさせて回避しようとするが、その直前に被弾していた主翼が折れ、機体は錐揉み状態のままで墜落していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長官!!ムー艦隊の直掩機が敵の偵察機を発見し、これを撃墜したとの事です!」

 

 

アレスが発見した艦隊は世界連合艦隊の前衛を努める日・ムー艦隊であり、アレスを撃墜したのはムー機動部隊から飛び立った艦隊直掩機の戦闘機だった。

 

 

「長官、お聞きの通りです。」

 

「うむ。敵さんは我々が仕掛けた罠に掛かったようだ。今頃敵空母からは、慌てて攻撃隊が飛び立ってる頃だろう。」

 

 

高杉の予感は冴えていた。

第2航空機動艦隊のペガスス級空母4隻からは、満を持した攻撃隊約150機が飛び立っていた。

 

 

その様子を、艦隊の遥か前方の上空を飛行していた警戒機星鳳が確認していた。

 

 

『来たぞ!旗艦に位置を知らせっ!』

 

 

直ちに星鳳から建御雷に報告が入れられた。

 

 

「長官!敵艦隊から攻撃隊が我が方へ向けて発進したとの事です!」

 

「うむ。航空参謀、直ちに迎撃隊の発進準備を下命せよ。」

 

「はっ!」

 

「主席参謀!レイフォル奇襲の別働隊はどの辺りか?」

 

 

 

主席参謀は海図台に周辺の地図を取り出して、現在地点より南の地点を指差す。

 

 

「この辺りを航行中しながら待機しています。」

 

 

今から遡る事数時間前、高杉艦隊から別れた別働隊の存在があった。

この別働隊は、世界連合艦隊に引き付けられたグラ・バルカス帝国艦隊の補足圏外である南に向かって大きく迂回し、レイフォルの首都レイフォリアへ向けての奇襲を行う部隊であった。

これは本来の作戦には無かった物だが、高野はミリシアルから示されたこの作戦に疑問を示したため、かつての『天元作戦』をベースに軍令部の信玄型高速電算機と、同じくミリシアルの作戦に疑問を持ち、日本と共同歩調の方針を取っていたムー国と日本の海軍首脳陣が頭脳を駆使して練り上げた独自の『天元2号作戦』による行動であった。

 

 

 

「そろそろかな?航空参謀、直ちに直掩機隊を発進させい!それと、ムー艦隊にも天元2号作戦発動を知らせ!」

 

 

高杉の合図で建御雷以下の高杉艦隊に所属する空母と、ムー艦隊の空母から、次々と高杉艦隊の航空隊とムー海軍飛行隊が発艦していく。

飛び立った迎撃隊は嶺花と光武を中心とした前衛と、後詰を努めるムー海軍航空の2手に分かれる。

 

 

前衛の嶺花隊と光武隊は一度、高度を取り、星鳳の誘導により、接近してくるグラ・バルカスの第1次攻撃隊が飛行しているエリアへと進路を取った。

 

 

『全機、索敵電探始動。見逃すなよ!』

 

 

迎撃隊はレーダーを始動させ、敵航空攻撃隊の捜索を始める。

 

 

『索敵電探探知っ!10時方向、下方!凄い数だ…』

 

『よし!各機、電探誘導憤進弾発射用意……撃て!』

 

 

 

全機から一斉に誘導弾が発射され、敵攻撃隊に向けて飛び去っていく。

数分後、迎撃隊のレーダーに映る敵攻撃隊に誘導弾が命中し、150機中80機を撃墜した。

 

 

『敵機、目視確認!全機、掛かれ!』

 

 

迎撃隊は第1次攻撃隊に襲いかかった。

嶺花と光武はレシプロ機とは別次元の速度と火力を生かし、攻撃隊のアンタレスとリゲルを次々と撃墜していく。

だが70機もの攻撃隊を完全に防ぐ事は困難であり、嶺花と光武の攻撃を何とか潜り抜けた攻撃隊は日・ムー艦隊へと迫るが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全機に告ぐ!前衛から逃げ切った敵攻撃隊が向かってくるぞ!今こそ日本国と我が国との"友好の証し"の性能を試す時だ!』

 

 

 

後詰を勤めていたムー海軍航空隊の指揮官が部下を鼓舞する。

ムー海軍航空隊の航空機には、主力機である複葉機のマリンは無かった。彼等が駆るのは日本とムーとの間で交わされた技術援助協定でムーに有償貸与された電征Ⅰ型だった。

この電征Ⅰ型は、本来ならムー本土防空隊に配備される予定で習熟訓練を行っていたが、配備前にグラ・バルカス戦が決定されたため、急遽、世界連合艦隊に参加する機動艦隊に優先配備されていたのであった。

 

 

 

『行くぞ!奴等に今までの我々ではない事を教えてやれ!全機上昇!!』

 

 

ムー海軍航空隊は向かってくる敵攻撃隊へ向けて奇襲を仕掛けるため、一気に上昇する。

 

 

『凄い上昇性能だ…』

 

 

パイロット達は今まで使っていたマリンとは隔絶した電征の性能に驚く。

そうしているうちに高度8000まで上昇した航空隊は、索敵電探を使って敵攻撃隊を探す。

 

 

『見つけたぞ!9時方向下方だ!60機だ!』

 

『隊長!』

 

 

そこへ、航空隊第1小隊長から無線が入る。

 

 

『どうした!』

 

『我が第1小隊に先陣を切らせてください!』

 

『分かった!敵攻撃隊の真上から切り込め!奴等が隊列を乱した所を我々がやる!!』

 

『了解!よし、行けぇぇぇぇ!!!!!』

 

 

第1小隊に所属する5機の電征が攻撃隊のほぼ真上から奇襲を仕掛けるため、急降下で迫る。

 

 

『貰った!!』

 

 

ト式射撃管制器の照準点に目の前のアンタレスに合わて引き金を引くと、主翼内に内蔵された2門の30㎜機関砲が火を吹いた。

 

 

『やった!』

 

 

30㎜機関砲弾が直撃したアンタレスは一瞬で炎上し、真っ逆さまに落ちていった。

完全に隙を突かれた攻撃隊は、第1小隊の奇襲により混乱し隊例が乱れる。

 

 

『我々も行くぞ!』

 

 

第1小隊に続くように、後ろに控えていた航空隊本隊も参戦した事で、攻撃隊は次々と撃墜されていく。

 

 

『コイツで最後だ!!』

 

 

最後に残ったリゲルが撃墜され、第1次攻撃隊は日・ムーの迎撃により1機も帰還する事なく全滅した。

 

 

 

 

 

 

攻撃隊全滅は直ちにグラ・バルカス第2航空機動艦隊へと伝えられた。

 

 

「さ……150機もの第1次攻撃隊が全滅しただと!」

 

 

第2航空機動艦隊旗艦、ヘラクレス級戦艦『コルネフォロス』の艦橋で、艦隊司令官は唖然となる。

 

 

「はい……攻撃隊からの最後の報告によれば、日本の航空機は例のジェット機で、ムーの航空機はマリンでは無かったとの事です。」

 

「まさか……さ……150機なんだぞ!いくら奴等の航空機の性能が良くても、数はこっちが勝っている筈だ。」

 

「しかし、攻撃隊が全滅したのは事実であります……」

 

 

航空参謀の言葉に艦隊司令官は頭を抱えて、どうするか考える。

 

 

「どうする?………第2次攻撃隊はどうか?」

 

「間もなく到達します。主力はアンタレスの新型であるアンタレス改です。それで奴等の実力が分かるでしょう。」

 

「こちらが勝っていればな………」

 

 

戦闘の興奮が彼等から冷静な判断力を奪っていき、それは第2次攻撃隊のパイロット達も同様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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