後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第70話

グラ・バルカス帝国艦隊の第1次攻撃隊からの攻撃を凌いだ日・ムー艦隊の戦闘機隊は、警戒機からの報告で、グラ・バルカス帝国第2航空機動艦隊から第2次攻撃隊が向かってきているとの報告を受け、各々の空母に戻り燃料と弾薬を補充した後、再び迎撃のため出撃していく。

 

 

『こちら電探室!敵第2次攻撃隊の接近を確認!距離35000!』

 

「来たな………航空参謀、直掩機隊に知らせ!」

 

 

この時、高杉がとった判断は正しかった。

敵の第2次攻撃隊は、日・ムー艦隊から飛び立った直掩機隊の目を眩まそうと、厚い曇層を利用していたからであった。

しかし、この考えは既に警戒機星鳳からの情報と高杉艦隊を繋ぐ高性能艦隊間通信ネットワークシステムにより全て見破られており、それを迎え撃つため第2次攻撃隊へ直掩機隊が迫っていた。

 

 

 

『ネットワークシステムに感謝だな。これが無かったら危うく見過ごす所だったな。』

 

 

 

光武と嶺花が敵攻撃隊を補足し、迎撃態勢に入った。

 

 

『誘導弾、撃て!』

 

 

再び放たれた誘導弾は第2次攻撃隊に襲い掛かり、次々と撃墜していく。

 

 

『行くぞ!!』

 

 

迎撃隊は第2次攻撃隊に突入し戦闘に入った。

 

 

「あのアンタレス、少し見た目が違うな。」

 

 

嶺花隊のパイロットの一人が、アンタレスの見た目に少し違和感を感じていた。

今までのアンタレスには無かったエンジンカウリングからは伸びる推力式単排気管、左右の主翼中央部から突き出した合計4本の長銃身があり、速度が若干早い。

 

 

「あのアンタレスは改良型か……」

 

 

改良型アンタレスの情報は直ちに通信にて後方のムー航空隊にもたらされた。

 

 

「改良型アンタレスか………少し厄介だな。」

 

 

通信を受けたムー航空隊指揮官の表情が曇る。

 

 

『しかし隊長、速度はさっきのアンタレスより若干早い程度です。電征の敵ではありませんよ。』

 

「電征の性能を最大限に活かせればだが、油断は出来ん。各機、油断せず本気でいけ!」

 

 

やがて敵攻撃隊が目視圏内に入ると、ムー航空隊は戦闘態勢を整える。

 

 

「全機、雷撃機と艦爆は後回しだ!戦闘機を先に片付けるぞ!」

 

 

ムー航空隊は再び戦闘に入り、アンタレスを優先に攻撃を開始したが、アンタレス改は冷静だった。水メタノール噴射装置を備えた新型エンジンにより、速度が増したアンタレス改は電征には及ばないまでも、その性能を生かし、速度と火力を武器に電征と攻防を繰り広げる。

 

 

 

「敵さんもやるみたいだな。」

 

 

その時、指揮官の後方より1機のアンタレス改が食い付く。

 

 

「よし……なら着いてこい!」

 

 

指揮官は冷静に、電征のエンジン出力をMAXに上げて急上昇する。

 

 

「さぁ、着いてこれるかな?」

 

 

アンタレス改は必死に追い付こうとするが、エンジン出力と性能で勝る電征が上昇力で大きく上回り、アンタレス改は引き離されてしまった。

 

 

「だろうな……今度はこっちの番だ!!」

 

 

電征はそこへフラップを展開し、日本海軍得意の木の葉落としで機体を急降下させ、アンタレス改の背後についた。

 

 

「貰った!!」

 

 

電征の30㎜弾がアンタレス改を引き裂き、撃墜した。

 

 

 

 

ムー航空隊の迎撃を潜り抜けた、雷撃機と艦爆隊は高杉艦隊へと迫る。

 

 

 

「正面より敵雷撃機、艦爆接近っ!!」

 

「対空戦闘!全艦、攻撃はじめ!」

 

 

既に対空戦闘態勢を整えた高杉艦隊は直ぐ様、対空攻撃を開始した。

 

 

『うわぁ!何なんだこの弾幕はっ!!』

 

『近付けない!』

 

 

高杉艦隊所属の秋月型対空駆逐艦や巡洋艦、戦艦から放たれる電探連動砲の統制射撃による正確な砲撃の前に、リゲル隊とシリウス隊は次々と撃墜されていく。

 

 

 

そして数分間による対空射撃により、第2次攻撃隊は全滅した直後に、新たな報告が入った。

 

 

「敵攻撃隊接近っ!」

 

「第3波か………」

 

 

第2次攻撃隊のすぐ後ろを飛んでいた第3次攻撃隊は、第2次攻撃隊に引き付けられていた護衛戦闘機隊の迎撃をすり抜けて、高杉艦隊に迫ってきていた。

 

 

「数は?」

 

「150機です!」

 

 

迫ってくる150機の攻撃隊は、いくら高性能な電探連動砲であっても全てを防ぎきるのは不可能である。

数に任せて迫ってくる敵攻撃隊に向けて、高杉はある決断を下した。

 

 

「仕方無い。比叡に連絡せよ!新38弾発射用意!!」

 

 

武御雷の前を航行していた戦艦比叡が速度を上げると、4基の連装主砲を旋回させ、砲身を敵攻撃隊に向ける。

 

 

「新38弾、発射用意よし!」

 

「全門、撃ち方始めぇぇ!!」

 

 

比叡が一斉射を行ない、8発の砲弾が飛んでいく。

 

 

「総員衝撃に備えっ!!」

 

 

高杉の合図で、艦隊将兵全員が目を塞ぎ、衝撃に備える。

 

 

 

 

その瞬間………………………強烈な爆音と衝撃と共に空が眩い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光に飲み込まれた第3次攻撃隊全機は、爆風と衝撃波により木の葉のようにもまれ、強烈な熱波が燃料に引火して燃え上がり、一瞬で粉々にされ、光が収まる頃には第3次攻撃隊の姿は完全に無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

「相変わらずですが………この新38弾の威力は凄いものですな。」

 

「全くだ。敵で無くて良かったと思うよ。」

 

 

 

この燃料気化弾は前世界に於て、幾度もの危機から高杉艦隊を救っており、皆、新38弾の威力に、見慣れているとはいえ誰もが呆然となる。無論それは高杉艦隊だけに限った話では無かった。

 

 

 

 

「何なんだ……あれは………」

 

「信じられません………あの数の航空機が一瞬で消滅した………」

 

 

ムー艦隊将兵は開いた口が塞がらなかった。

 

 

「つくづく私は日本が味方で良かったと思うよ。」

 

 

ムー艦隊司令官『レイダー』提督は、改めて日本が頼りになる味方であり、敵になれば恐ろしい存在であると感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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