第2、第3次攻撃隊全滅はグラ・バルカス帝国第2航空機動艦隊を通じて、後方の第1航空機動艦隊にも伝えられた。
「なっ!?………それは本当なのか?」
報告にラス・アルゲティの艦橋で、カオニアは信じられないと言った表情で驚く。
「はい……残念ながら。」
「馬鹿な……合計で400機近い航空機を、損害もなしに敵はどんな方法で……」
「報告では攻撃隊は全機未帰還なので……詳細は不明です。」
カオニア達は日本とムー艦隊の予想外の戦闘能力に、頭を抱える。
今までの諜報活動でこの世界の軍事力と科学力から、帝国にとっては足元にも及ばない国々しかないと認識していた矢先に、日本国というイレギュラーが現れて以降、帝国の思惑は根本的に狂ってしまった。
科学力では及ばないまでも国力や軍事力でなら、苦戦を強いられるだろうが勝てるかもしれない。そう信じて戦ってみたが、その結果返って来たのは、帝国の軍事力が日本国の足元にも及ばないという答えだった。
その思いはカオニア自身にも、大きくのし掛かる
(どうする?ここは司令官権限で作戦を中止して引き返すか?………いや、そんな事をすれば上層部どころか国民が黙っていないだろう………帰れば私共々艦隊将兵は国民から石を投げつけられる………私だけなら兎も角、優秀な部下やカイザル閣下に迷惑が掛かる。それを避けるにはどうすれば……)
思考に浸り、何ら決断が出ないまま1時間が経過した。
「提督!」
そこへ、慌てた様子の通信員が入ってきた。
「どうした?」
「だ、第2航空機動艦隊からの通信が途絶えました!」
「何だとっっ!?」
突然舞い込んできた凶報にカオニア以下の幹部達は動揺する。
「どう言う事なんだ!」
「はい………第2航空機動艦隊からの最後の通信によりますと、敵のミリシアルの航空機による航空攻撃と未知の攻撃による物だと……」
「未知の攻撃…………まさか!?」
彼には未知の攻撃について心当たりがあった。
「誘導弾だ……」
「誘導弾?まさか、カルトアルパスで我が航空隊を大損害に追い込んだ……あの?」
「間違いない。…………何でもっと早く気が付かなかったんだ!!対空型があれば対艦攻撃が可能な奴もあった筈だ!!」
カオニアは自身の不甲斐なさに歯を喰い縛り、壁を叩く。
「提督…どうされますか?」
「撤退するという判断もできるが、私がその判断を行えば我が機動艦隊の名に傷が付くし、君達、艦隊将兵に対しても申し訳が……」
だがそのカオニアの言葉に、副官や艦長が反論する。
「提督!私達は帝国軍人として死は恐れません!撤退して帝国の恥になるより、戦って死ぬ事が帝国軍人として本望であります!!」
「提督!私達も覚悟の上です!戦いましょう!」
皆の言葉にカオニアは何処か勇気づけられたように、吹っ切れた様子で決断を下した。
「そうか………なら作戦は続行しよう。直ちに全空母に攻撃隊発艦準備を下命せよ!敵艦隊が攻撃圏内に入ると同時に攻撃隊は出撃!!」
第1航空機動艦隊は速度を上げて、壊滅した第2航空機動艦隊の仇討と言わんばかりに、迫ってくる世界連合艦隊に向けて突き進む。
しかし第2航空機動艦隊は如何にして全滅したのであろうか?
時系列はやや遡る。
第2航空機動艦隊からの攻撃隊を退けた日・ムー艦隊は、迎撃に出ていた航空隊を帰投させ、第2航空機動艦隊追撃のため準備を行っていた。
「長官!後方よりミリシアル艦隊が接近っ!」
「………」
高杉は始めから分かっていたと言わんばかりの表情で、後方から姿を表したミリシアル艦隊に目を向ける。
「長官!ミリシアル艦隊のレッタル提督から無電です!」
「内容は?」
「『我が艦隊はこれより敵艦隊追撃を行う。貴艦隊は我が艦隊の後方に移動し、支援を行うように。』との事です。」
「やはりな……」
今作戦に於て、ミリシアル艦隊は高いプライドと、自国の権威を見せつけるために世界連合艦隊にて優位に立つため、日・ムー艦隊が敵航空機を殲滅したタイミングで必ず本艦隊を前進させ敵艦隊を殲滅するだろうと高野や高杉は予測しており、それは見事に当たった。
「これも想定内ですかな?」
「あぁ……ミリシアルは余程自国の権威を示したいらしい。」
「では当初の予定通りに?」
「うむ。航空参謀、第1次攻撃隊と第2次攻撃隊には対艦装備をさせたまえ。命令通りにミリシアル艦隊の航空機が苦戦した場合に備えて"支援"を行うように。」
「はっ!」
続く
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