後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第73話

敵潜水艦隊を撃退し、敵艦隊へ向かって飛行していた攻撃隊は既に敵艦隊のレーダー索敵範囲内に入っていた。

 

 

『各機、対艦誘導噴進弾発射用意!』

 

 

光武隊は何時もの如く、低空飛行に移るとレーダーを作動させ、翼下のパイロンに装着されていた猟火に電源を入れ、レーダーを起動させる。

 

 

『目標探知、発射用意……撃て!!』

 

 

1機につき6発の誘導弾を装備できる光武、約50機から放たれた猟火の数は300発近くに達し、この数は第2航空機動艦隊に所属する全ての艦船の数の1・5倍に匹敵し、炸薬弾頭と気化弾頭が混じった300発は何も知らない第2航空機動艦隊へ向けて飛翔を開始した。

 

 

 

 

 

 

「何?引き返しただと?」

 

 

コルネフォロスの艦橋で報告を受けた司令官は疑問の声を挙げる。

 

 

「はい。前方より接近してきていた敵攻撃隊は、我が艦隊の射程距離外で突如反転し、去っていきました。」

 

 

コルネフォロスのレーダー員は攻撃隊がとった謎の行動に誰もが首を傾ける。

この時、第2航空機動艦隊の全艦のレーダーは攻撃隊を捉えていたが、低空の目標を探知するルックダウン能力が無いため、攻撃隊が放った300発の猟火は捉えられておらず、レーダー画面には攻撃隊が突然反転して離れていく様子しか写っていない。

 

 

「敵の意図が読めんな…………しかし、嫌な予感がするな…………」

 

 

司令は両腕を組んで相手の意図を考える。

 

 

「念のため対空警戒を…」

 

『前方より多数の飛翔物体接近っ!!』

 

 

彼の言葉を遮るように、見張り員からの報告が入った。

 

 

「何っ!?どうして気付かなかった!」

 

『敵飛翔物体は、海面スレスレの低空で接近してきていた模様です!既に手前まできています!とんでもない速度です!』

 

 

通常は対空戦闘を行うためには、艦の両舷に装備された対空砲群を相手に向けるため、艦そのものを左右のどちらかに旋回させる必要があるが低空ギリギリでの海面飛行により海面からのノイズでレーダーが捉えられなかったため、準備が遅れ、艦を旋回させるのはもう間に合わない。

 

 

『飛翔物体6、本艦正面より接近!』

 

「もう回避は間に合わない!総員衝撃に備え!」

 

 

艦橋に居た全員がその場で何かに捕まる。

 

 

 

その瞬間、コルネフォロスに強い衝撃が走り、艦橋の窓ガラスが全て割れ、熱風と衝撃波が飛び込んでくる。

 

 

「グァっ!」

 

 

司令官は吹き飛ばされ、艦橋後ろの壁に叩き付けられる。

 

 

「空母ホマン、マタル、ビハム被弾っ!速力低下!!」

 

「駆逐艦サルガス、ギルタブ、シャウラ……巡洋艦ミルザム、アダラ、アボリジニもやられました!尚も被害続出!!」

 

 

ふと外を見れば、各空母、巡洋艦、駆逐艦は猟火の餌食となっていき、轟沈するか航行不能となっていく。

 

 

「そんな馬鹿な……帝国最新の航空機動艦隊がこうも呆気なく全滅だと……」

 

 

航空機も潜水艦も失い、更には所属する空母以下の艦艇は謎の兵器による飽和攻撃により次々と沈められていき、帝国最新の艦隊の姿は何処にも無かった。

 

 

「こうなれば……直ぐにカオニア提督に打電しろ!」

 

 

司令官は無線で出来る限りの情報を後方に居る第1航空機動艦隊に伝える。

 

 

「こちら第2航空機動艦隊!我、敵の攻撃により壊滅!敵はミリシアル艦隊の航空機と謎の兵器を…」

 

 

言い終えようとした瞬間、再びコルネフォロスに誘導弾が殺到し、運悪く1発が艦橋に直撃し、司令官の命と共にレーダーアンテナと通信機を粉々に吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

僅か15分足らずで第2航空機動艦隊は壊滅し、生き残った艦艇はミリシアル艦隊より先行してきた日・ムー艦隊に軒並み拿捕、鹵獲され、生存者も全て捕虜となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

だがその頃、ミリシアル本国の秘密基地からバルチスタ沖に向けて空を飛翔する2隻の超大型の飛行物体が飛翔していた。

 

 

その飛翔物体は、一言で言うなら『円盤』と言っても過言ではなく、丸いリングの真ん中には3つの支柱に支えられた発令室のような物体があり、そのうちの1隻の発令室に仮面をつけた一人の男が居た。

 

 

「いよいよこのパル・キマイラの力を世界に見せつける時が来た。」

 

 

この艦『空中戦艦パル・キマイラ』2号機の指揮を努める、『メテオス』は興奮していた。

彼はこの非常識ともいえる空中戦艦の艦長を勤めているが、軍人ではない。

 

彼を含めたパル・キマイラの乗員は全て『魔帝対策省』に所属する、一般人である。彼等はミリシアル本国や世界各国に眠るラヴァーナル帝国の遺跡に関する研究を行う国営の研究機関の研究員であり、それらの研究成果を自国の発展のために尽くす事を目的としている。

 

 

メテオスはラヴァーナル帝国の遺跡であるパル・キマイラの指揮を任されており、今回は1号機の『ワールマン』艦長と共にミリシアル8世からの命令を受けてバルチスタ沖へと向かっていた。

 

 

 

「しかしこんな戦いでパル・キマイラを投入するなんて勿体ない事だ。この艦を動かすのにどれだけの予算が消えていく事か……」

 

『メテオス、皇帝陛下直々の命令に不服があるのか?』

 

 

発令室の前面に備えられた巨大なモニター越しにワールマンがメテオスに問いかける。

 

 

「そうではない。私はただ、解析が済んでいないこの艦を実戦に投入するのは大丈夫なのかと心配しているだけだよワールマン君。なにせパル・キマイラは今稼働状態にあるのは7隻のうち5隻だけだからね。」

 

『しかしこのパル・キマイラは水上艦とは比較にならない程の戦闘力を持っているのは知っているだろう?水上艦の速度はせいぜい30ノット、こっちは110ノット。たとえ対空砲を打ち上げようと、そうそう当たらんよ。』

 

 

ワールマンは自信満々にそう告げる。

 

 

「そうだな。パル・キマイラならこの戦いは有利に進める事は出きる。さっさとこんな不毛な戦いは終わらせよう。」

 

 

 

パル・キマイラ2隻は速度を上げてバルチスタ沖へと急行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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