後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第74話

時系列は再び戻り、日・ムー連合艦隊は損害を負ったミリシアル艦隊と合流し、捕虜となった第2航空機動艦隊の武装解除を行っていた。

 

 

「収穫はあったか?」

 

「いえ………この様じゃ、そう言った物は望めそうにありません。」

 

 

 

レッタル提督は、上半分だけ破壊されたコロネフォロス檣楼を見て、ため息を吐く。

 

 

 

「捕虜を軽く尋問した所、艦隊司令官はこの艦の第1艦橋に居たようです。この様子だと恐らく生きてはいないでしょう………」

 

「となると、この先に居るもう一つの敵艦隊の貴重な情報はあまり多くは望めそうにないな。取り合えず捕虜の連行と武装解除、機密文書のような物の捜索は続けてくれ。」

 

「了解。」

 

 

 

レッタルは偶々側にあった残骸に腰を掛けると、銜えていたパイプ煙草に火をつける。

 

 

 

「しかしまぁ……我々が欲していた物が手に入っただけでもよしとするべきかな?」

 

 

 

この時点に於て、日・ムー・ミの3国間では、敵艦を鹵獲した場合についての処遇については決まっていた。

内容は簡単に言うと、ミリシアルは巡洋艦か駆逐艦が数隻、ムーは戦艦と空母、日本はグラ・バルカスの電子工学技術解析のためレーダーや無線機などの電子機器類のみと決められている。

 

これには理由があり、本来ならミリシアルが戦艦と空母の取得を主張する所だが、ミリシアルはマグドラ海戦で魔導艦隊のミスリル級戦艦に致命傷を負わせた魚雷と駆逐艦に興味を示したため戦艦と空母を諦める変わりに魚雷の取得を。

 

ムーはグラ・バルカスに占領されたレイフォルが隣にあると言う観点から戦艦と空母を解析した上で造船技術向上を図り、可能なら自国の戦力に組み入れるため戦艦と空母の確保を。

 

日本は電子工学技術が向上しているためグラ・バルカス帝国の電子技術の解析のためレーダー類や無線機の取得を主張して、3ヶ国による協議の末にこの処遇についてはほぼスムーズに決定された。

 

 

 

 

「しかし残りの敵艦隊をどうやって迎え撃つかな?」

 

 

 

レッタルは、情報にある第1艦橋機動艦隊の戦力について、頭を抱えていた。

 

 

(既に我が艦隊は戦艦、巡洋艦、空母の大半が戦闘不能にされているし、航空機は1機も残っていない。この状態では敵艦隊とまともに戦うだけ無駄だと言う事にしかならない。だがこのまま日本とムーに任せきりにしたら、皇帝陛下ならまだしも、プライドの高い高官供が何と言い出すか…………)

 

 

今後の事についても彼は必死に悩む。

 

 

(どうする?……考えろ……考えるんだ!)

 

 

その時、慌てた様子の副官がやって来る。

 

 

「提督!」

 

「どうした?」

 

「第1級通信が入っております!」

 

「何っ!?」

 

 

第1級通信とは、ミリシアルの帝国法では、国家の最高意思決定が伝達される特殊通信であり、この通信の前では如何なる作戦中や行動中であろうと、受信と応答が義務づけられている。

 

 

「分かった!」

 

 

レッタルは慌てて艦へと戻り、通信室へと入り、目の前にあるモニターに目を向ける。

 

 

「っ!?」

 

 

回線が開かれると、モニターには奇妙な仮面を付け、正規軍の軍人が着用している軍服とは違ったデザインの服を着用していた。

 

 

 

「貴方はっ!?………メテオスさん!」

 

『久しぶりだねレッタル君。急に呼び掛けてすまないが、残りの敵艦隊については私とパル・キマイラに任せてくれないか?』

 

「パ………パル・キマイラ?」

 

『これは済まない。パル・キマイラは君達の間では噂程度しか知らなかったからね。パル・キマイラとは我が魔帝対策省が発掘した古の兵器の事だよ。まぁ難しい説明は省くが、早い話、パル・キマイラは空飛ぶ空中要塞……空中戦艦だよ。』

 

 

とんでもない言葉にレッタル達は驚く。

 

 

「く……空中戦艦ですとっ!?」

 

『驚くのも無理はない。なにせこの兵器はラヴァーナル帝国が作った非常識極まりない物だから。』

 

「メテオスさん、そのパル・キマイラがどうしたのですか?」

 

『此度の戦いで皇帝陛下は苦戦するやもしれんと予想されて、我々直々にパル・キマイラの出撃を命じられたのだよ。しかも2隻もだ。』

 

「2隻っ!?」

 

『まぁグラ・バルカス帝国如きならパル・キマイラ2隻を使うのは勿体ない気はするが、これも皇帝陛下の御意志であるから仕方の無い事だがね。そろそろ君達のレーダー圏内にも入っている頃だろう。』

 

 

メテオスの言葉にレッタルはレーダー手に確認する。

 

 

「レーダー手!どうだ?」

 

「はい………既に探知範囲内にあります。あと数分で肉眼で確認できます!」

 

 

レッタルは慌てて通信室から飛び出し、甲板へと上がった。

 

 

 

 

数分後………

 

 

 

「見えた!!」

 

 

後方の雲の中からそれはゆっくりと現れた。

 

 

 

「…………………」

 

 

 

それを見た、レッタルやミリシアル・日・ムー艦隊の将兵、捕虜となっていたグラ・バルカス帝国の将兵達は唖然となった。

 

 

「嘘だろ………」

 

「どうなってるんだ?」

 

 

 

全長でミスリル級を上回り、日本の戦艦や空母にも匹敵する巨大な物体が、時速200㎞近い速度で飛翔し、直下の海水を撒き上げながら艦隊の上空を通過していく。

 

 

「おぉ……」

 

 

武御雷の艦橋でその様子を見ていた高杉も、流石にパル・キマイラの偉容に茫然となる。

 

 

「魔法と言うのは、我々の常識が通用しないと言う事を改めて認識されたな……」

 

「ち、長官……」

 

「うむ。これは想定外の事態だな。直ちに軍令部に報告せよ!」

 

「はっ!」

 

 

S&L通信ネットワークを使って武御雷から放たれた通信は直ちに日本の軍令部に報告された。

 

 

 

 

 

 

「見たまえ諸君。あの驚きよう。」

 

 

パル・キマイラ2号機でメテオスは、映像カメラの望遠モードで、自分達を見て驚く艦隊将兵を指差す。

 

 

「まぁ当然だね。何せ空中戦艦だからね。」

 

「はい。メテオス艦長、我々はこのまま前進を?」

 

「あぁ……ところで1号機のほうはどうかね?」

 

「我が2号機と共に敵艦隊挟撃のため、既に準備を完了しています。」

 

「よし、全て作戦通りだ。では始めるとしようか。1号機に攻撃開始の通信を送りたまえ。」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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