後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第76話

対空戦闘を開始した第1航空機動艦隊から打ち上げられた対空砲弾は、パル・キマイラへと迫る。

 

 

「敵艦隊、砲撃開始っ!」

 

「回避行動、魔素を展開し、装甲を強化っ!」

 

 

ワールマンの指示で、艦の装甲が一瞬で強化されたと同時に速度が上がり、パル・キマイラに迫ったが砲弾はその半分近くが回避され、VT信管によって着弾寸前に爆発した砲弾の爆風と破片、衝撃波はパル・キマイラを覆うように張り巡らされた青い膜によって防がれる。

 

 

「弾幕を絶やすな!撃ち続けろ!」

 

 

カオニアは各艦に対空砲を撃ち続けるように指示を下し、ラス・アルゲティの主砲が次弾を装填している間にも駆逐艦や巡洋艦の対空砲は必死に砲撃を続ける。

 

 

 

「うるさい奴等だな………こちらも反撃するぞ!15㎝魔導砲発射用意!」

 

 

艦隊に近付いた1号機の円外縁部の下部に設置された、6基の円型3連装砲塔が旋回し、火器官制装置による照準で3本の砲身が別々に動き直下の艦艇を狙う。

 

 

「撃て!」

 

 

号令と共に6基18門の魔導砲が一斉砲撃を開始し、全自動精密射撃により第1航空機動艦隊所属の駆逐艦、巡洋艦に命中していく。

 

 

「巡洋艦タウルス、エルナト、アイン、アルキオネ被弾っ!炎上っ!」

 

「駆逐艦アルネブ、ニハル轟沈!!あぁ…巡洋艦ヒアダムとアルデバランも被弾!」

 

 

次々と上がってくる被害にカオニアとバーツは戦慄する。

 

 

「なんという命中精度だ!正確すぎる!」

 

 

砲撃開始から僅か10分もしないうちに、護衛の巡洋艦、駆逐艦部隊は壊滅的被害を被り、大半が轟沈又は航行と戦闘不能にされていく。

 

 

「敵中型、小型艦撃沈!目標を空母に変更します!」

 

 

続いて空母に目標を変更し、再び砲撃が開始される。

 

 

「空母マタル、ビハム、サダルバリ被弾!炎上中っ!」

 

 

ペガスス級空母3隻には甲板へ砲弾が命中し、装甲が薄い飛行甲板を貫いた砲弾は魚雷と爆弾を装備した航空機と、航空機用高純度燃料に引火し、一瞬で爆発炎上した。

 

 

 

 

 

 

「敵空母に命中っ!全て無力化しました!」

 

 

乗員から上がってくる報告にワールマンの表情は更に余裕といった感じに変化させ次の指示を下す。

 

 

「いいぞ!これで奴等は航空戦力を失った!……では作戦第2段階へと移ろう。2号機は?」

 

「既に探知範囲内に………今見えました!」

 

 

スクリーンに写る水平線の向こうより、メテオスの2号機が姿を表した。

 

 

「よし……これで勝ったも同然だ。2号機に繋いでくれ。」

 

 

2号機に通信が繋がれ、スクリーンにメテオスが写し出される。

 

 

「メテオス、案外遅かったな。既に敵艦隊の主力は殲滅しておいてやったぞ。」

 

『これは凄いな………君も容赦が無いね。』

 

「君程ではないさ………では作戦第2段階を始めていいかな?」

 

『あぁ、存分にやってくれ。』

 

 

 

メテオスの言葉にワールマンは不適な笑みを浮かべる。

 

 

 

「敵旗艦直上へつけろ。例の発掘兵器を試すぞ。」

 

「はっ!ハイパーキャッチ魔光線砲、原子振動砲用意!」

 

 

 

すると、パル・キマイラの外縁部下値からパラボラアンテナのような形をした機械と、U字の磁石をを逆さまにしたような巨大な磁石が出てくると、1号機はその場から移動し、ラス・アルゲティに向かって直進する。

 

 

「敵飛翔物体、本艦に急速接近っ!」

 

「回避航行!奴を近づけさせるな!」

 

 

ラス・アルゲティは回避行動をとるが、艦が加速するより1号機が直上に到達し、武装の死角となる真上の位置をとった。

 

 

 

「ここなら敵も攻撃できまい。準備は出来ておるか?」

 

「はい。」

 

 

 

1号機から出ていたパラボラアンテナと巨大磁石がラス・アルゲティに向けられる。

 

 

 

「では始めたまえ。」

 

「ハイパーキャッチ魔光線砲へ動力接続!」

 

 

U字の機械にパル・キマイラの魔導エンジンに接続され、エネルギー伝達が開始させる。

 

 

「ハイパーキャッチ魔光線砲、磁場安定、目標を補足よし!照射用意よし!」

 

「照射せよっ!」

 

 

 

すると機械の磁石先端部にスパークが走り、ラス・アルゲティに向けて強力な磁力が照射される。

 

 

 

すると、ラス・アルゲティの船体が突如揺れ始めた。

 

 

「な、何だ?何が起きているんだ!」

 

 

揺れは徐々に激しくなっていき、乗員達が何事かと動揺していく。

 

 

「提督!艦に強力な磁場が掛けられています!!」

 

「何だとっ!?機関出力最大!!回避しろ!」

 

 

ラス・アルゲティの艦長が指示を下し、スクリューの回転速度が上がるが、ラス・アルゲティの船体はまったくその場から動かなかった。

 

 

「艦長駄目です!艦が動きません!」

 

「逆進一杯っ!全速後退っ!」

 

 

今度はスクリューが逆回転を始め、後進が掛けられるがそれでもその場からは動けなかった。

 

 

 

「艦長!艦が……艦が浮き上がっています!」

 

「何っ!?」

 

 

ふと下を見ると、普段は海水で見えない筈の船底の赤い塗装が見え掛かっていた。

 

 

「クソ!あの巨大な磁石のせいか!」

 

 

カオニアはハイパーキャッチ魔光線砲を見て敵の意図に気付いたが、もう遅かった。

ラス・アルゲティは、ほぼそのまま、吸い寄せされていき、艦が海面から浮き上がるとパル・キマイラの直下へと引き寄せられる。

 

 

「いいぞ!そのままこちらへと引摺りだせ!」

 

 

ワールマンはハイになり、興奮したように顔を真っ赤にさせる。

 

 

「敵戦艦、予定位置に達しました。照射固定します!」

 

 

浮き上がっていたラス・アルゲティは、パル・キマイラのほぼ真下100メートルの地点で停止した。

 

 

「浮いてる………」

 

 

他の艦艇からは、ラス・アルゲティがそのまま海上から空中に浮いているように見え、将兵達は唖然とした表情で見ているしかなかった。

 

 

「では、早速敵に通信を繋いでくれ。」

 

「はっ!」

 

 

パル・キマイラの通信士がラス・アルゲティの無線機に割り込み通信を繋ぐ。

 

 

「どうぞ。」

 

 

ワールマンは通信用のマイクを手に取り、ラス・アルゲティに呼び掛ける。

 

 

「始めまして、グラ・バルカス帝国の諸君。私は神聖ミリシアル帝国、魔帝対策省所属、空中戦艦パル・キマイラ1号機の艦長を勤めるワールマンと言う者だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




パル・キマイラのハイパーキャッチ魔光線砲と原子振動砲のネタ元、分かる人は居ますかね?


皆様からのご意見とご感想お待ちしております。


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