後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第77話

『始めまして、グラ・バルカス帝国の諸君。私は神聖ミリシアル帝国、魔帝対策省所属、空中戦艦パル・キマイラ1号機の艦長を勤めるワールマンと言う者だ。』

 

 

ラス・アルゲティの第1艦橋にある無線機に入ってきたワールマンの声に皆が反応する。カオニアは無線機のマイクを手に、ワールマンに話し掛ける。

 

 

「こちらグラ・バルカス帝国海軍、第1航空機動艦隊司令のカオニアだ。本艦をこのようにして、何が目的だ?」

 

『いやなに、君達に我が帝国の皇帝陛下の意思を伝えるために、強硬手段を使わせてもらったんだ。まともに話し掛けても君達は聞いてはくれないだろうから。』

 

「で、貴国の皇帝の意思とは何なんだ?」

 

『あぁ……だがそれを話す前に君達の目の前に見えるこの空中戦艦について簡単にだが教えておこう。』

 

「空中戦艦だと…!?」

 

 

カオニアの驚きの声にワールマンは勝ち誇ったかのように続ける。

 

 

『そうだ。君達も噂程度には聞いた事はあるだろうが、この空中戦艦パル・キマイラはかつて1万年も昔に存在したラヴァーナル帝国と言う世界を支配下に置いていた大帝国が作り上げた戦略兵器なのだ。その戦闘能力は君達も身を以て分かったと思う。私としてもこれ以上は無用な犠牲を出すのは望んでいない。そこで、君達に降伏を進言する。』

 

「降伏っ!?」

 

『そうだ。今や君達に本艦に抗う術は残されてはいない。これ以上犠牲を出したくなければ降伏したまえ。』

 

 

 

ワールマンの高圧的な態度にカオニアは周囲の面々を見渡し、直ぐに返答する。

 

 

「断るっ!」

 

『……………はて?よく聞こえなかったんだが?』

 

「断ると言った!我が帝国海軍将兵は一歩も引く気はない!我々は最後まで戦う!」

 

 

カオニアの言葉にワールマンはまるで狙っていたかのように、不気味な笑みを浮かべる。

 

 

『そうか……ならば君達には用はない。残念だが君達にはパル・キマイラの発掘兵器の実験台になってもらおう。』

 

 

そう言ってワールマンは通信を切り、部下に命じる。

 

 

「言質はとった。これより作戦第3段階に移行する。」

 

「了解!原子振動砲用意!」

 

 

ハイパーキャッチ魔光線砲の隣にある、原子振動砲のパラボラアンテナがラス・アルゲティを照準に入れ、エネルギーが伝達される。

 

 

「照準、敵戦艦の金属。固有振動数セット完了。」

 

「エネルギー充填完了。全システム問題なし。」

 

「原子振動砲、照射用意よし!」

 

 

発射準備は整った。後はワールマンが指示を下すだけである。

 

 

「かつて魔帝がフィルアデス大陸を支配下に入れるために使ったというこの兵器を試す時がやって来ましたな。」

 

「うむ。実験台にはうってつけだな。では始めよう。」

 

「原子振動砲、照射開始っ!」

 

 

 

原子振動砲が照射を開始し、パラボラアンテナ状の照射器から強力な特殊電波が放たれる。

 

 

「何だ?この音は?」

 

「分かりません……敵は音など聞かせて一体何を?」

 

 

すると、ラス・アルゲティの船体に突然亀裂ができ始める。

 

 

「右舷舷側に亀裂発生っ!」

 

「左舷舷側にも多数の亀裂が!」

 

「何だとっ!?」

 

「艦長!艦尾と艦首にも多数の亀裂が出来ています!どんどん広がっていきます!」

 

 

亀裂は船体のみならず、主砲搭、副砲、煙突、マストなどの上部構造物にも起こり、ラス・アルゲティからは金属か割れる音が大きくなっていく。

やがて、艦首木製甲板の下にある装甲板と、機銃、サーチライト等の装備品が次々と剥がれていく。

 

 

「艦首甲板剥離!!」

 

「機銃、サーチライトも剥離!高角砲も破損っ!」

 

「艦長!応戦せよ!」

 

「了解!」

 

 

ラス・アルゲティの生き残っていた対空砲が応戦を開始するが、放たれた砲弾はパル・キマイラに着弾する直前に魔素による装甲強化により、全て弾き返される。

 

 

 

「この艦の対空兵装では手も足も出せません…」

 

 

 

直後、第1砲塔と第3砲塔が船体から剥離し、第3砲塔に装填されていた主砲弾が衝撃で爆発し、艦尾に爆風と衝撃波が襲い掛かる。

 

 

「第3砲塔爆発っ!艦尾被害甚大っ!」

 

「艦尾区画に火災発生っ!居住区も大破っ!」

 

「主電源装置破損っ!電源止まります!」

 

 

主電源を失ったラス・アルゲティは、艦内灯が消え、艦内電話も完全に使用不能となり、ラス・アルゲティは完全に沈黙した。

 

 

 

「敵戦艦は完全に沈黙しました。」

 

「よし。では最終段階に移ろう。殲滅爆弾発射用意!」

 

 

ハイパーキャッチ魔光線砲を囲むように、6連装リボルーシリンダー式発射装置が下がってくる。

 

 

「ジビルより威力は多少落ちるが、満身創痍の奴等には丁度良いだろう。殲滅爆弾投下!」

 

 

シリンダーが一回転すると、1つの発射口から細長い爆弾が投下され、ラス・アルゲティの艦首に直撃し、大爆発を起こした。

 

 

「うわぁっ!!」

 

 

爆風と衝撃波によりラス・アルゲティの艦首は区画にいた乗員ごと吹き飛び、艦橋に居たカオニアは衝撃により艦橋後ろにある壁に叩き付けられる。

 

 

「くっ………」

 

「提督っ!」

 

 

頭部から出血しているカオニアに艦長が駆け寄る。

 

 

「私なら大丈夫だ…被害報告っ!」

 

「艦首大破っ!」

 

「第1、第2砲塔に火災発生っ!」

 

 

 

再び殲滅爆弾が投下されると、今度は破損していた艦尾に直撃し、既に剥離していた第3砲塔から後ろが、まるごと消滅した。

 

 

 

「艦尾大破……いや、消滅っ!」

 

「何っ!」

 

 

後ろを見ると、黒い煙に包まれた艦尾が見える。

 

 

「提督!再び敵空中戦艦から通信です!」

 

「繋げ!」

 

 

再び艦橋の無線機にワールマンの声が響く。

 

 

『どうかね?古の超兵器の威力は?』

 

「あぁ……最高だな……」

 

『そうだろう?この兵器の恐ろしさが分かった所で、もう一度問おう。降伏せよ。もし降伏するなら君達がその船から脱出する時間と猶予を与えよう。』

 

「断るっ!」

 

『何故だ?君達だって人間なんだから、死は恐れる筈だ。』

 

「我が帝国海軍は死は恐れない……死を恐れれば国は守りきれない。これは我が帝国の意思そのものなんだ!」

 

『君達の軍人精神には敬意を表するが、この状況から逆転するなど不可能だ。』

 

「果たしてそうかな?……我々の後方には貴様達が乗り込む空中戦艦に匹敵する切り札があるんだ。」

 

『今更強がりかな?そんなものには意味はない。』

 

「意味はあるさ………」

 

 

カオニアは懐から信号拳銃を取りだし、艦橋の外へと出ると上空に向かって信号拳銃を発射した。

 

 

『何のつもりかね?』

 

「切り札を使うためのものだ………恐らく貴様達の運命は後1分……いや、30秒だ!」

 

『どう言う事………』

 

 

 

ワールマンがそう言い掛けようとした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全主砲、弾種徹甲、撃てぇぇぇ!』

 

 

 

パル・キマイラの艦内で、部下の一人が突然大声を張り上げる。

 

 

 

「ワールマン艦長!」

 

 

「どうし……!?」

 

 

 

何事かと振り返ったワールマンが目にしたのは、水平線の向こうに居た1隻の艦影と、自分に向かって迫ってくる9発の砲弾だった。

 

 

「回避!!」

 

 

超音速で迫ってきた9発の砲弾は殲滅爆弾投下のために魔素による装甲強化とシールドを解除していた1号機の外縁部に命中、魔導機関の魔力燃料と備蓄弾薬、残りの殲滅爆弾、そしてパル・キマイラ最大最強の火力である『ジビル』超大型爆弾に引火、ものの一瞬でパル・キマイラは大爆発を起こした。

円柱部を支えている3本の支柱が根本から折れ、外縁部は激しく変形し、崩壊しなが海上に墜落した。水柱を上げながらラス・アルゲティを道連れに海底に向かって、沈んでいった。

 

 

「メテオス艦長!1号機がっ!!」

 

「何っ!!」

 

 

現場に到着寸前だったメテオスは、目の前で1号機が大爆発を起こし海へと沈んでいく様子を目の当たりにし、酷く狼狽する。

 

 

 

「艦長! 敵艦隊の中に巨大戦艦を捉えました!」

 

「拡大しろ!」

 

 

スクリーンのカメラ映像が、一隻の巨大戦艦に向かってズームされる。

 

 

「あれは……グレード・アトラスターかっ!!」

 

 

メテオスが目にした戦艦は、カルトアルパス戦で日本武尊が大破にまで追い込んだ筈のグレード・アトラスターが、まるで何事も無かったかのように主砲を向けている姿だった。

 

 

「まさか艦隊を囮にして、本命(グレード・アトラスター)を使ってパル・キマイラを落としたのかっ!? 撤退だ! 本国へ撤退せよ!」

 

 

メテオスは慌てて撤退指示を下し、2号機は全速力で現場海域より離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

「敵空中戦艦、撤退していきます!」

 

 

後方に居た戦艦の艦橋に歓喜の声が上がる。

 

 

「何とか仕留めたか。」

 

「全くです……このバルサー初の戦果が空中戦艦撃墜とは……」

 

 

第1艦橋に居たのは、かつてグレード・アトラスターの艦長であったラクスタルだ。

彼が乗り込むのは、自身の乗艦であったグレード・アトラスター級戦艦2番艦『バルサー』だった。

この艦は1番艦のグレード・アトラスターとは違い9門の46センチ砲を搭載している本来のグレード・アトラスター級の姿をしており、偶々近海で公試テスト中だった際に、司令部からの緊急命令で第1航空機動艦隊の援軍として護衛艦隊と共に、急遽駆けつけてきたのであった。

 

 

「だが、敵空中戦艦撃沈の代償が、第1航空機動艦隊壊滅、カオニア提督の戦死…………大きすぎる代償だった。」

 

「艦長、今後は如何いたしますか?」

 

「先ずは第1航空機動艦隊の生存者の救助だ。ラス・アルゲティの沈没地点でも生存者が居ないか確認だ!無論、周囲に敵が居る可能性が高い。警戒しながら作業を開始せよ」

 

 

「了解!」

 

 

到着したバルサー以下の艦艇は、第1航空機動艦隊の艦艇から脱出した将兵の救助と、生存者の確認作業を開始した。

 

 

 

 

 

だがこの時点では戦いはまだ終わっていなかった。

 

 

 

 

高杉艦隊からレイフォルに向けて別行動を取っていた、別働隊より先行してレイフォル首都のレイフォリアから数百㎞先の海中に、レイフォル攻撃の一番槍が潜んでいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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